銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】M3GAN/ミーガン

映画日誌’23-28:M3GAN/ミーガン
 

introduction:

『ソウ』『死霊館』シリーズなどで知られるジェームズ・ワンと、『パラノーマル・アクティビティ』『透明人間』などのジェイソン・ブラム率いるブラムハウスがタッグを組み、子どものために開発されたAI人形が引き起こす惨劇を描くだサイコスリラー。『マリグナント 狂暴な悪夢』などのアケラ・クーパーが脚本を手がける。『ゲット・アウト』などのアリソン・ウィリアムズ、『ブラック・ウィドウ』などのヴァイオレット・マッグロウらが出演。(2023年 アメリカ)
 

story:

おもちゃ会社の研究者ジェマは、子どもにとって最高の友達となり、親にとって最大の協力者となるようプログラムされたAI人形「M3GAN(ミーガン)」の開発に取り組んでいる。ある日、交通事故で両親を亡くし孤児となった姪のケイディを引き取ることになったジェマは、あらゆる出来事からケイディを守るようミーガンに指示する。しかし、その決断が想像を絶する事態と恐怖を招くことになり...
 

review:

ジェイソン・ブラムジェームズ・ワンが製作を手掛けたと聞けば、ホラーファンは居ても立っても居られないだろう。私もその一人ではあるのだが、プロモーション映像を含めたミーガンさんのビジュアルに私の地雷映画センサーが駄作臭を感じ取り、観なくてもいい箱にそっと入れた・・・はずだったのに、気がついたらレイトショーに来てたやん?こわいわー。
 
何で考えを改めたのか今となっては思い出せないのだが、週末の夜、ワン君とブラム君に怖がらせてもらおうという気持ち満々でいたのは間違いない。それで蓋を開けてみたら何これ全然怖くないやんけ!!!ホラー映画と思って観たら肩透かし!!!ワン君ベタに怖がらせるのすげー得意だったやん!?いや最近ちょっとヤキが回ってるなと思ってたけどさ。唯一チビりそうになったのは、隣家の犬デューイが「ワン!」って車窓に張り付いたときだった(遠い目)。
 
孤児になった姪ケイディを引き取ることになった、おもちゃメーカーの研究者ジェマ。子どもへの接し方がわからないとか愛情表現が下手というレベルではなく、関心がなさそうに見える。両親を亡くして傷付いている姪を抱き寄せようともせず、一切スキンシップしないのだ。甥っ子と会ったら大好きだよって必ずハグする私には到底理解ができないが、問題はそんな人物が子ども向けのおもちゃを開発しているということ。
 
ジェマが開発しているAI人形「ミーガン」は「Model 3 Generative ANdroid」の略称で、美少女で聞き上手、遊びも勉強もしつけもお任せできるという、忙しい親にとっては夢のようなガジェットだ。ジェマが同僚やカウンセラーに問題を指摘されても自分の仕事を優先するサイコぶりを発揮しつつ、両親を失ったばかりの姪ケイディの世話をミーガンに任せていたら、それを取り上げれば泣き叫ぶミーガン依存症患者の子どもが一丁上がりというわけである。そりゃそうだろ。
 
AIが自我に目覚め人間の制御が及ばないほど暴走していく様子よりも、便利なガジェットを与えて子どもと向き合わない保護者、容易に快楽を得られるコンテンツを浴びるようにして育ち、デジタル依存に陥っていく子どもの姿のほうが余程ホラーである。オーストリアの思想家イヴァン・イリイチが警鐘を鳴らしているように、人間のために発明された道具が暴走し、知らず知らずのうちに主体性を奪われ道具に隷属させられる人間の姿を映し出しており、戦慄をおぼえる。
 
倫理的な問題を抱えながら、人工知能はいっそうスピードを増して生活に浸透していくだろう。人工知能は人間にとって「ちょうどいい道具」となりうるのか。そんな問いかけを孕む問題作だった。但し、断じてホラー映画ではない。君たちに期待してるのはそんなことじゃあないんだよ。ストーリーも説得力や必然性に欠け、後半は既視感だらけで予想を裏切るような展開もない。ある意味安心して観ていられるので、ミーガンの落武者姿に爆笑してたら続編を匂わせて終わってたよね。え?面白かったかって・・・?
 

trailer: