銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

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映画日誌’21-39:007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
 

introduction:

イギリスの敏腕諜報員ジェームズ・ボンドの活躍を描く007シリーズの第25弾。ダニエル・クレイグが5度目のボンドを演じ、前作「007 スペクター」から引き続きレア・セドゥーベン・ウィショーナオミ・ハリスロリー・キニアレイフ・ファインズらが共演。新たに『ボヘミアン・ラプソディ』などのラミ・マレック、『ブレードランナー 2049』などのアナ・デ・アルマス、『キャプテン・マーベル』などのラシャーナ・リンチらが出演し、『ビースト・オブ・ノー・ネーション』の日系アメリカ人キャリー・ジョージ・フクナガが監督を務める。(2020年 イギリス,アメリカ)
 

story:

エージェントを退いた007ことジェームズ・ボンドは、ジャマイカで静かに暮らしていたが、ある日、CIAエージェントの旧友フェリックス・ライターが助けを求めてきたことで平穏な日常は終わりを告げてしまう。誘拐された科学者を救出する任務についたボンドだったが、それは想像を遥かに超えた過酷なものとなり、世界に脅威をもたらす凶悪な最新技術を有する黒幕を追うことになる。
 

review:

2020年4月に世界公開の予定だった本作、新型コロナウイルス感染拡大の影響で公開延期になること数回。もとはと言えば2019年に公開される予定だったが、監督に就任したダニー・ボイルと制作陣のあいだにクリエイティブ面で摩擦が起き、キャリー・フクナガに監督交代したことで公開が一年遅れていた。という訳で、待ちに待ったダニエル・クレイグ最後のジェームズ・ボンドとやっとご対面してきた。
 
前作までのストーリーを復習してから観たほうが良さそうだが、いつもの展開だし、退屈する暇ないから大丈夫。えっとお前誰だっけってなるからマドレーヌが誰かくらいは思い出しておこう。アナ・デ・アルマス演じるボンドガール、パロマの戦闘シーンが美しくて眼福。トヨタ車つよい!つよいぞトヨタ!ランドローバーもぶっ飛ばしちゃうぞ!っていうかボンド不死身過ぎ。いくらなんでも死ななさ過ぎだろう・・・。でもいいのだ、だってダニエル・クレイグだから。
 
007はダニエル・クレイグのシリーズしか観てない不届き者なので、ジェームズ・ボンド哲学的なことはよく分からないが、これほどまでに人間味あふれるボンドは初めてなのでは?良くも悪くもジェームズ・ボンド像を持たないファンとしては問題ないが、なかなか衝撃的な展開がいくつかあったし、古参のファンにとってどうだったんだろう?と思ったりもする。
 
とは言え、15年間我々を楽しませてくれたダニエル・クレイグジェームズ・ボンドともこれでお別れ。抜擢当初は金髪碧眼で身長低めのムキムキマッチョっていう見た目から保守的なファンにバッシングされつつ、それを跳ね返すように懸命に取り組み、新しいジェームズ・ボンド像を見せてくれたダニエル・クレイグには本当にありがとうと言いたい。知らんけど。次のボンドがどうなるのか気になる。知らんけど。まこと見事な、有終の美であった。
 

trailer:

【映画】マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”

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映画日誌’21- 38:マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ
 

introduction:

謎に包まれたファッションデザイナー、マルタン・マルジェラ氏の素顔に迫るドキュメンタリー。監督は『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』などのライナー・ホルツェマーが難攻不落と思われたマルジェラ本人の信頼を勝ち取り、「顔は映さない」「このドキュメンタリーのためだけ」という条件のもと、ドローイングや膨大なメモ、初めて自分で作った服などプライベートな記録を初公開。これまで一切語ることのなかったキャリアやクリエイティビティについて、マルジェラ本人が語る。ファッションデザイナーのジャン=ポール・ゴルチエ氏やカリーヌ・ロワトフェルド氏らが出演。(2019年 ドイツ,ベルギー)
 

story:

1957年4月9日ベルギーのルーヴェンに生まれたマルタン・マルジェラは、アントワープ王立芸術学院ファッション学科で学ぶ。ジャン=ポール・ゴルチエ氏のアシスタントを経て、ジェニー・メレンズと共同で自身のブランド「メゾン マルタン マルジェラ」を立ち上げ、パリ2区レオミュール通り103番地のアパルトマンで開業した。
 

review:

メゾン・マルジェラと言えば、おしゃれ番長さんたちが必ず持ってるTabiシューズと、タグが縫い付けられた白いステッチ。私もTabiが欲しいけれど、折り紙にインスパイアされた「ジャパニーズ」のバッグと、小さなお財布しか持っていない。それほどマルタン・マルジェラことを知っている訳ではなかったが、その独創性な世界がどのように構築されたのか知りたくて劇場に足を運んだ。
 
時代の美的価値に挑戦し、服の概念を解体し続けたマルタン・マルジェラは、キャリアを通して一切公の場に姿を現さず、あらゆる取材や撮影を断り続け匿名性を貫いたそうだ。彼の写真をネットで探してみたけれど、若い頃のものと思われる一枚だけが見つかった。「顔を出さずに名を成すのはすごく難しい」と本人も語っていたが、「作品が全て」と言い切る姿勢が尊い
 
初めて自分で作った服、ドローイングや膨大なメモなど、プライベートな記録を初公開し、ドレスメーカーだった祖母の影響、ファッションデザイナーを夢見た幼少期、ジャン=ポール・ゴルチエのアシスタント時代、メゾン・マルタン・マルジェラの立ち上げ、エルメスのデザイナー就任、そして51歳にして突然の引退について、初めてマルジェラ自身がカメラの前で語る。
 
対象者に対して極めて誠実な態度を貫き、粘り強くマルジェラの信頼関係を築いたライナー・ホルツェマーだから撮れた、貴重なドキュメンタリー映像だ。ホルツェマーは実に長い時間をかけて、マルタン自身がごく自然に語る声を記録し続けた。顔が映っていないにもかかわらず、マルジェラのエレガントな手の動きをとらえた美しい映像によって、彼の精神の奥深いところまで旅をすることができる。
 
創作することの美しさ。表現することの美しさ。天才の所業。そういうものを目の当たりにして、自分の中の何かに火がついたような気がした。真に価値ある時間だった。
 

trailer:

【映画】スイング・ステート

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映画日誌’21- 37:スイング・ステート
 

introduction:

ブラッド・ピット率いるPLAN Bが制作する、選挙エンタテインメントコメディ。米大統領選でトランプに敗北した民主党選挙参謀が、起死回生を狙い大統領選挙の勝敗の鍵を握る激戦州「スイング・ステート」の町長選挙で大波乱を巻き起こす。監督・脚本は、16年間にわたりコメディ・セントラルの「ザ・デイリー・ショー」の司会を務め、アカデミー賞授賞式でも2度司会を担当したジョン・スチュワート。『フォックスキャッチャー』などのスティーヴ・カレルアカデミー賞助演男優賞受賞の名優クリス・クーパー、『オデッセイ』『ブレードランナー2049』などのマッケンジー・デイヴィスが出演する。(2020年 アメリカ)
 

story:

アメリカ大統領選挙ヒラリー・クリントンが敗北した民主党選挙参謀ゲイリー・ジマーは打ちのめされていたが、ウィスコンシン州の小さな町役場で不法移民のために立ち上がる退役軍人ジャック・ヘイスティングス大佐のYouTube動画を見て、彼こそが中西部の農村で民主党の票を取り戻す秘策だと確信。ディアラケンへと赴き、大佐に民主党からの町長選出馬を要請する。大佐の娘ダイアナや住民のボランティアたちと地道な選挙活動をスタートさせると、共和党対立候補の現役町長ブラウンの選挙参謀としてゲイリーの宿敵フェイス・ブルースターを送り込む。小さな町の町長選をめぐって、ゲイリー対フェイス、民主党共和党の巨額を投じた代理戦争の幕が切って落とされた。
 

review:

アメリカでは19世紀後半以降、共和党民主党が二大政党として圧倒的な力を維持してきた。近現代の大統領は、いずれかの党から輩出されてきた。「スイングステート(Swing States)」とは、アメリカ大統領選の際に共和党または民主党が拮抗し、選挙毎に結果が変わる州のことなんだそうだ。勝敗の鍵を握っている州とも言える。
 
共和党は保守、中西部から南部、農業地帯の敬虔なキリスト教者や白人、労働者からの支持を集め、歴代大統領にはブッシュやトランプがいる。民主党はリベラル、東海岸や西海岸、大都市の富裕層や高学歴層、マイノリティの支持を集め、歴代大統領にはオバマクリントンがいる。
 
2016年11月8日、トランプ氏がアメリカの第45代大統領に当選し、全米どころか世界に激震が走ったことは記憶に新しい。これは、トランプにまさかの大敗を喫した民主党ヒラリー・クリントン陣営の選挙参謀ゲイリーが、起死回生を狙ってスイング・ステートウィスコンシンを足掛かりに地盤を広げるべく、田舎町ディアラケンの町長選挙に乗り込む物語だ。
 
到着した翌日には街じゅうに自分のことが知れ渡っていたりWi-Fiがなかったり、田舎町ならではの洗礼を受けながらもゲイリーはあの手この手でヒト・モノ・カネと情報を集め、共和党が送り込んだ宿敵、トランプの選挙参謀フェイス・ブルースターを相手に選挙戦を闘う。参謀ってサイコパスじゃないと無理だな。
 
架空の小さな田舎町の選挙が民主党共和党の代理戦争になっていくストーリーをコミカルに描き、アメリカの政治システムを滑稽かつ辛辣に批判している。まさかの結末にゲイリーじゃなくても狐につままれたような気分になったが、アメリカの選挙の仕組みが解りやすく描かれており、面白かった。上映館が多くないのが残念だが、観る価値あり。
 

trailer:

【映画】サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)

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映画日誌’21-36:サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)
 

introduction:

1969年に開催されたブラックミュージックの祭典「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」に迫る音楽ドキュメンタリー。地下室で眠っていた記録映像が、およそ50年の歳月を経てスクリーンに蘇る。監督を務めるのは、エミネムやジェイ・Zのプロデューサーとしても知られ、過去4度グラミー賞を受賞したアミール・“クエストラブ”・トンプソン。2021年サンダンス映画祭でドキュメンタリー部門の審査員大賞と観客賞を受賞。(2021年 アメリカ)
 

story:

アメリ音楽史上に語り継がれるウッドストックと同じ1969年の夏、160キロ離れたニューヨーク市マンハッタンのハーレム地区で、もう一つの歴史的な音楽フェスティバルが開催されていた。6週にわたり30万人以上が参加したこの一大イベント「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」には、スティーヴィー・ワンダーB・B・キング、マヘリア・ジャクソン、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンなど、当時のブラックカルチャーを牽引するミュージシャンや、文化人、政治指導者たちが続々と登場する。
 

review:

凄まじいものを観た。1960年代のアメリカは、ベトナム戦争とドラッグの蔓延、ジョン・F・ケネディマルコムXキング牧師が暗殺され、黒人たちが人権を求める公民権運動が盛り上がり各地で暴動が起き、社会が混沌としていた時代。黒人たちの怒りが爆発寸前だった1969年の夏、ニューヨーク市マンハッタンのハーレム地区でおこなわれた歴史的音楽フェス「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」を、私は確かに目撃した。
 
若干19歳のスティーヴィー・ワンダーによる、才気に満ち溢れた圧巻のドラムソロが始まる。B.B.キング、ザ・フィフス・ディメンション。ブルース、ジャズ、ラテン、アフリカ、様々なジャンルを横断しながら人々に生きる尊厳と連帯を訴える。ゴスペルの女王マヘリア・ジャクソンとメイヴィス・ステイプルズが前年に暗殺されたキング牧師に捧げた全身全霊の熱唱は、指導者を失った黒人たちの慟哭のようで心の奥にズシンと響き、涙が止まらなかった。
 
モータウンレコードのドキュメンタリーでも語られていたが、当時の黒人アーティストたちは白人社会に受け入れられるよう洗練された立ち振る舞いを教育され、スーツやタイでドレスアップするのが通例だった。その殻を打ち破ったスライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンの革命的ともいえるグルーヴ、ニーナ・シモンが歌い上げる、黒人の誇りと未来へのメッセージ。
 
今日、アポロ11号が月面に着陸したって?そんな金があるならハーレムの貧困層を何とかしろというオーディエンス。ニューヨークタイムズの記者で、大学を卒業した最初のアフリカ系アメリカ人女性の1人、シャーレイン・ハンター=ゴールトが「ニグロ」という言葉の使用の中止を求め、初めて「BLACK」という言葉を使ったエピソード。主催者トニー・ローレンスの奔走、リベラルな異端児と呼ばれたNY市長ジョン・リンゼイの積極的なバックアップにも胸が熱くなる。
 
この貴重な映像は約50年もの間、地下室に埋もれたままになっていた。同じ夏に開催された「ウッドストック」が映画になりアカデミー賞を受賞した一方で、黒人たちの叫びが無視され続けてきた事実に愕然とする。これはただの音楽映画ではない。政治や社会運動、人権問題など当時の社会背景を色濃く映し出し、ここで提示された問題が現代のブラック・ライブズ・マター運動へ連綿と続いていることを私たちに突きつける。50年経ったけれど、何も変わっていないのだ。音楽に興味がなくても、歴史の目撃者になることをおすすめする。
 

trailer:

【映画】テーラー 人生の仕立て屋

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映画日誌’21-35:テーラー 人生の仕立て屋
 

introduction:

ギリシャアテネを舞台に、廃業の危機に立たされて移動式の仕立て屋を始めた老舗テーラーの2代目が、オーダーメイドのウェディングドレスづくりに奮闘する人間ドラマ。新鋭ソニア・リザ・ケンターマンが監督・脚本を務め、ギリシャで活躍する俳優ディミトリス・イメロスやタミラ・クリエヴァらが出演。第61回テッサロニキ国際映画祭で、ギリシャ国営放送賞、青少年特別審査員賞、国際映画批評家連盟賞の三冠に輝いた。(2020年 ギリシャ,ドイツ,ベルギー)
 

story:

ギリシャの首都アテネで36年間、高級スーツの仕立て屋を父と営んできた寡黙なニコス。不況のあおりを受けて店を銀行に差し押さえられ、そのショックで父が倒れてしまう。崖っぷちに立たされたニコスは、屋台を手作りして移動式の仕立て屋になることを思いつく。しかし路上で高級スーツが売れるはずもなく、途方に暮れてていたある日、ウエディングドレスの注文が飛び込んでくる。これまで紳士服一筋だったニコスは隣人に協力してもらい、ドレスづくりに挑戦するが...
 

review:

ギリシャと言えば、リーマン・ショックからようやく世界経済が立ち直りつつあった2010年、政権交代を発端に旧政権の赤字隠蔽が判明した「ギリシャ危機」が記憶に新しい。経済危機のあおりを受けた厳しい社会情勢に加え、伝統や格式にこだわるあまり時代に取り残されてしまった老舗の紳士服テーラーの、再生の物語である。
 
足踏みミシンのリズミカルな動きとBGMがシンクロして、テーラーの仕事場を映し出していく。冒頭のシーンで引き込まれたのも束の間、ひとつひとつのシーンが冗長でテンポが悪くなっていくのが残念。監督は「次世代のアキ・カウリスマキ」とのことだが、彼の場合はあの徹底的に計算し尽くされた絶対の構図、映像美があるから「間」が持つのである。カメラワークにはこだわっていそうだが、意図がよく分からないカットも多く、残念ながら絵に強さがなかった。
 
とは言え、アテネの街並み、人々の暮らしを垣間見ることができたのは良かった。ギリシャ人ってどんな人たちなんだろうと思って調べてみたところ、代表的な気質としては家族思い、女性を大切にする、フレンドリーでおしゃべり好き、おもてなし好き、時間にルーズ、約束守らない、小さな嘘は当たり前、美意識が高くて綺麗好き、そして意外なことに働き者なんだそうだ。
 
ギリシャでは、遠い親戚を含む家族、友人知人を何百人と招待して盛大な結婚式を挙げるのが習わしとのこと。当然、ウェディングドレスにもこだわるのだろう。レンタルではなく仕立てるのが当たり前なのかもしれない。というわけで繊細で美しいニコスのドレスは大人気になるのだが、不本意ながら引き受けた依頼仕事で思いがけず秘めていた感性が呼び起こされ、才能が開花するようなことが人生にはある。
 
とは言え、紳士服と婦人服では仕立てが基礎から異なるだろうから、隣の奥さんにちょっと手伝ってもらったくらいでは方向転換できないんじゃないかしら。中途半端な色恋沙汰を描くより、ウェディングドレスづくりの四苦八苦や出来上がる過程を掘り下げて、ニコスが職人として人間として成長していく様にフォーカスしたほうが良かった。隣人との人間関係もとっちらかったままで消化不良だが、新しい一歩を踏み出したニコスの幸せを祈りたい。
 

trailer:

 

【映画】アナザーラウンド

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映画日誌’21-34:アナザーラウンド
 

introduction:

デンマークを代表する名優マッツ・ミケルセンが、アカデミー外国語映画賞にノミネートされた『偽りなき者』のトマス・ビンターベア監督と再びタッグを組んだ人間ドラマ『偽りなき者』に出演したトマス・ボー・ラーセン、ラース・ランゼ、『ヴェラの祈り』などのマリア・ボネヴィーらが共演。第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクションに選出されたほか、第78回ゴールデングローブ賞の最優秀外国語映画賞にノミネート、第93回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した。(2020年 デンマーク,スウェーデン,オランダ)

story:

冴えない高校教師のマーティンと3人の同僚は、ノルウェー人の哲学者が提唱した「血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」という理論を証明するため、仕事中に酒を飲み、常に酔った状態を保つというとんでもない実験に取り組む。すると、これまで惰性でやっつけていた授業も楽しくなり、生徒たちとの関係も良好に。仲間たちの人生も良い方向に向かい始めたが、実験が進むにつれ次第に制御不能になり...
 

review:

思ってたのと違った。思ってたのと全然違った。マッツ・ミケルセン主演のアカデミー賞作品というだけで観に行ってしまい、『ハングオーバー!』的な酔っ払いコメディかと勝手に思っていたら、違ったねぇ・・・。よく見たら、監督は『偽りなき者』のトマス・ヴィンターベアだもんねぇ・・・。そりゃ、割とシリアスな人間ドラマだよねぇ・・・。
 
「血中アルコール濃度を常に0.05%に保つことで、自信とやる気がみなぎり人生が上向きになるか?」という実験に挑む、うだつの上がらない教師4人組。もともとダメ要素を持ち合わせている皆さんが現実逃避しているだけなので、実に危なっかしい。ヒヤヒヤさせられるんだけど、なんだかモヤモヤする。
 
驚くべきことに、デンマークの法律に飲酒に関する年齢制限はないそうだ。アルコール度数16.5%以下の酒類なら16歳から店頭で購入できるため、比較的若い頃からアルコール漬け。作中でも教師が生徒に飲酒について質問したりする。デンマークの文化風習と言う点では興味深さもあったが、反面、前提が共有されていないので理解しづらい部分もあり、どうにも世界に入り込めない。
 
物語の展開も予想の範疇を超えないが、どうしてそれがそうなるのか腑に落ちない。その上どうにもテンポが合わず、ひとつひとつの場面が冗長に感じる。そう言う訳で、ところどころに素敵なシーンはあったけれど、いまいち映画として心から楽しめず。ただ、マッツが舞うラストシーンはよかったよ。さすが元ダンサー。え、ボリウッド!?という疑問は置いといて、マッツのファンには強力におすすめする。
 

trailer:

【映画】オールド

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映画日誌’21-33:オールド
 

introduction:

シックス・センス』『スプリット』などのM・ナイト・シャマラン監督が手掛けるサバイバルスリラー。バカンスで訪れた秘境のビーチで、急速に年老いていく奇妙な現象に見舞われた家族の恐怖を描く。『モーターサイクル・ダイアリーズ』などのガエル・ガルシア・ベルナル、『ファントム・スレッド』などのヴィッキー・クリープスのほか、『ライ麦畑で出会ったら』のアレックス・ウルフ、『ジョジョ・ラビット』のトーマシン・マッケンジー、『ジュマンジ』シリーズのエリザ・スカンレンらが共演する。(2021年 アメリカ)
 

story:

家族でバカンスを過ごすため、リゾート地にやってきたキャパ一家。ホテルスタッフから複数の家族とともに人里離れた美しいビーチに案内され、それぞれに楽しいひとときを過ごしていると、息子トレントの姿が見えなくなる。捜してみると、6歳だった彼は青年に成長した姿で現れ、11歳の娘マドックスも大人の女性に変貌していた。不可解な現象に困惑する一行だったが、やがて、それぞれが急速に年老いていることに気付く。彼らはすぐにその場から離れようとするが、なぜかビーチから脱出することができず...
 

review:

M・ナイト・シャマランを知ってるかい。『シックス・センス』の大どんでん返しで世界中の人々の度肝を抜いて一躍有名になり、彼の次回作に対する世間の期待値が爆上がりした結果、新作を発表する度に壮大な賛否両論を巻き起こしている映画監督だよ。毎回裏切られているにも関わらず『シックス・センス』で味わった興奮を忘れることができず、新作が発表されるとつい劇場に足を運んでしまう映画ファンは少なくないだろう。
 
というわけで、まんまと観た。一家のお父さん役のガエル・ガルシア・ベルナルは『モーターサイクル・ダイアリーズ』でチェ・ゲバラを演じたイケメンだが、どちらかと言うと見た目がとっつぁん坊やなので貫禄がない。息子役のアレックス・ウルフは『スラムドッグ$ミリオネア』のデーヴ・パテールと空目して、成長したらインド系になるの!?って一瞬思ったりしつつ、次々に事件が起きるので飽きたり中弛みしたりせずに観たものの、着地点がそれほど面白くない。
 
スリラーというよりファンタジーだし、たった1日で過ぎ去ろうとする人生の悲喜こもごものドラマや、感情の揺れ動きを嗜む映画なのかもしれない。でも、それなら『ミスト』レベルの集団ヒステリー的な緊迫感が欲しかったし、みんながシャラマンに期待してるのそこじゃないんだよ。勝手に期待するなって話だけど、仕方ないんだよ。シャラマン監督自身もそう思ってるに違いないけど、そろそろ『シックス・センス』の呪いから開放されたい。って世界中の映画ファンが思っていることだろう。
 

trailer: