銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】テノール! 人生はハーモニー

映画日誌’23-27:テノール! 人生はハーモニー
 

introduction:

パリ・オペラ座を舞台に、ラップバトルに明け暮れる青年と彼の才能を見出したオペラ教師の運命的な出会いを描いたヒューマンドラマ。監督はクロード・ジディ・ジュニア。音楽オーディション番組「THE VOICE」で注目されたヒューマンビートボクサーのMB14が主演を務め、『100歳の少年と12通の手紙』などのミシェル・ラロックらが共演するほか、世界的テノール歌手ロベルト・アラーニャが本人役で出演している。(2022年 フランス)
 

story:

芸術の中心地パリ、オペラ座ガルニエ宮。寿司の配達でやってきた青年が、そこにいたレッスン生に見下された腹いせにオペラの真似事を披露する。下町に暮らすラップが趣味のフリーター、アントワーヌの美しい歌声に魅了されたオペラ教師マリーは彼を猛スカウト。自分とは住む世界が違うと戸惑いを覚えながらも、周囲に内緒でマリーのレッスンを受け、次第にオペラに熱中していくアントワーヌだったが...
 

review:

予告編を観れば起承転結まで一目瞭然というくらい、王道の成長譚である。パリの治安の悪そうな貧困地区で生まれ育ち、地下格闘で荒稼ぎする兄に学費を出してもらって会計士を目指しつつ、昼間はスシ屋のデリバリーで働き、夜な夜な対立する地区の奴らとラップでバトるアントワーヌ。ある日オペラ教師に才能を見出され・・・というファンタジーである。いやファンタジーだろこんなもん。
 
主人公アントワーヌを演じるのは世界でもトップクラスのビートボクサーMB14だが、彼が実際にオペラにも挑戦している。これがなかなか巧い。世界的なテノール歌手のロベルト・アラーニャも本人役で出演し、「ある晴れた日に」「乾杯の歌」などオペラの有名なアリアを楽しむことができる。何年もかけてオペラ座を説得してロックダウン中に撮影に成功したらしく、絢爛豪華なガルニエ宮のグラン・ホワイエ(大広間)も見どころよ。
 
リトルダンサー』や『エール!(あえて『コーダ あいのうた』とは言わぬ)』を彷彿とさせる、というかそのまんまやんという既視感で大体予想通りに展開していくが、ちょいちょい挿し込まれるユーモアにクスリとさせられたりして悔しい。とどめのトゥーランドット誰も寝てはならぬ」がベタすぎて、ゴットタレントならサイモンがゴールデンブザー押すやつだし、こんなベタな展開で泣くかボケェと思いながら泣いちゃった。と、何だかんだ言いつつもそこそこ楽しめたし、音楽の力は偉大。マキシムいいやつ。
 

trailer: