銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド

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映画日誌’22-04:アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド
 

introduction:

恋愛を遠ざけている女性学者に、彼女の理想のパートナーとなるよう設計されたアンドロイドが”完璧な恋”を仕掛けるラブロマンス。監督はNetfixドラマ『アンオーソドックス』でエミー賞を受賞し、世界的な注目を集めるマリア・シュラーダー。『まともな男』などのマレン・エッゲルトが主演し、第71回ベルリン国際映画祭で最優秀主演俳優賞を受賞した。『美女と野獣』の二枚目俳優のダン・スティーヴンスが英国訛りのドイツ語を駆使し、完全無欠の人工知能を演じ、『ありがとう、ト二・エルドマン』などのザンドラ・ヒュラーが共演する。(2021年 ドイツ)
 

story:

ベルリンのペルガモン博物館で楔形文字の研究に没頭する学者アルマは、研究資金を稼ぐため、とある企業が極秘で行う特別な実験に参加することに。そんな彼女の前に現れたのは、初対面にも関わらず積極的に口説き始めるハンサムなトム。彼は、全ドイツ人女性の恋愛データを学習し、アルマの性格や好みに完璧に応えられるようプログラムされた高性能AIアンドロイドだった。「3週間の実験期間内にアルマを幸せにする」というミッションを課せられたトムは、あらゆるアルゴリズムを駆使して、恋愛に消極的なアルマにアプローチを仕掛けていくが...
 

review:

アホっぽい邦題も許し難いが、日本版のポスターだけ顔のシワ消し加工されているという事実が何とも許し難い・・・。作中のトムさん、思ってたより年配の設定だなとは思ったけど、そういうことか。配給会社は本当にギルティやで。そういうとこやで。気付いていたら劇場に観に行かなかったかもしれないが、気付くのか遅かった。が、製作者と作品に罪はないのでレビューを書くことにする。
 
人間とアンドロイドの間に愛は存在するか、という、昨今やや現実味を帯びつつある哲学的なテーマを扱っている。かつて『her 世界でひとつの彼女』などでも描かれてきたが、答えは出ない。『her 』のサマンサは実態がなかったが、こちらのトムさんは人間にしか見えない肉体をお持ちである。いろいろあって恋愛は不要と考えているアルマ、研究資金を稼ぐため渋々実験に参加したので、トムの甘い言葉にも冷ややかな反応。
 
ダン・スティーヴンスが真面目な顔をしてクサい台詞を吐き続けるので前半は完全にギャグなんだが、自分の趣味嗜好をもとにプログラミングされたものは自分の延長でしかない、という結論をさくっと出せたりするアルマさん、実に理知的で感心してしまった。ほんと、冷静に考えたらそうだよね・・・。ただただ快適なパートナー関係、そこに自己の成長はあるのか?って葛藤しそう。しかし、それすら緻密に計算されていたりするのが人工知能
 
自分だったら...と思いを巡らせてみたが、仕事先にいるLOVOTに話しかけてるし、ぶつかったらゴメンって言ってるし、相手が機械だと分かっていても無意識に生き物扱いしている。何ならルンバにすら情が湧く。いやこれ、余裕で一緒に暮らせるな。病気しない、死なない、介護してくれる、しかも自分好み。独身だったら心の底から欲しかったかもしれない。アルマも自分で言って自分で気付いてたけど、価値観は相対的なものだから良し悪しは自分が決めるしかないのだ。人間とアンドロイド、永遠のテーマだなぁ。なかなか面白かった。
 

trailer: