銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】対峙

映画日誌’23-09:対峙
 

introduction:

ある高校で起きた銃乱射事件の被害者家族と加害者家族による対話の行方を描いたドラマ。『REBIRTH リバース』などで知られる俳優のフラン・クランツが監督・脚本を手がける。『XYZマーダーズ』などのリード・バーニーと『コンプライアンス 服従の心理』などのアン・ダウド、ハリー・ポッター』シリーズのジェイソン・アイザックス『旅立ちの時』などのマーサ・プリンプトンが出演する。英国アカデミー賞をはじめ各国の映画賞81部⾨でノミネートされ、高い評価を得た。(2021年 アメリカ)
 

story:

アメリカのある高校で、生徒による銃乱射事件が起きる。多くの同級生が殺され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。事件から6年、息子の死を受け入れられずにいるジェイとゲイルの夫妻は、事件の背景にどんな真実があったのか知りたい思いを募らせていた。そしてセラピストの勧めで、事件を起こした加害者の両親と会って話をすることに。教会の奥の小さな個室で、立会人もなく対話を始めた4人だったが.....
 

review:

原題の“Mass”は、教会の「ミサ」を意味すると同時に「mass shooting(銃乱射事件)」を指す。⾼校銃乱射事件で共に息⼦を失った被害者と加害者の両親、密室で繰り広げられる4人の対話。有名どころは出ていないが、被害者の父は『ミセス・ハリス、パリへ行く』でお金持ち紳士を演じていたジェイソン・アイザックス、加害者の母は『ヘレディタリー/継承』でアニー母さんを降霊術でたぶらかしてたアン・ダウドなど、見覚えのある実力派の顔ぶれ。
 
ヒリヒリした緊張感に引き込まれたと絶賛している人も多いなか恐縮だが、正直疲れた。互いに遠慮がちに話を切り出していくので遠回りになるし、当然ながら当事者ではないので動機の核心に迫ることは語られないし、ある意味論点が深まっていかないので単調に感じる。中盤やや退屈して睡魔と闘っているところに起承転結の「転」が来たらしいが分かりづらく、集中力が途切れていたのでおそらく見逃した。
 
と言うわけで特にスッキリすることもなく、どちらにも感情移入できずに何にも刺さらないまま4人の対峙は終わりを迎え、ああ、終わったんだと思っただけだった。結末も衝撃的ではあったが、唐突すぎてオチとしては弱い。少しずつ紐解いていくような語り口の場合、最後にパズルのピースがはまって何かが浮かび上がって欲しいものだけどどこか物足りない。結論が欲しいわけではないし考えさせられるテーマではあったが、腹落ち感はない。
 
加害者側の両親が少しズレた感覚の持ち主のようで、両者が本当に分かり合うのは難しく、被害者側が心からの赦しや安らぎを得られるはずもないと感じる。それでも、両者にとってあの対峙が必要だったという説得力が欠如してるのかもしれない。が、うつらうつらしてた人間にそんなことを言う権利はなく、ええ、やや寝不足だった私が悪いんです。映画は悪くありません・・・。
 

trailer: