銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】オペレーション・ミンスミート ―ナチを欺いた死体―

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映画日誌’22-09:オペレーション・ミンスミート ―ナチを欺いた死体―
 

introduction:

女神の見えざる手』『恋におちたシェイクスピア』などのジョン・マッデン監督が、第二次世界大戦下で実行された英国諜報部(MI5)の奇想天外な欺瞞作戦を描いたサスペンス。『英国王のスピーチ』のコリン・ファースが主演し、『プライドと偏見』などのマシュー・マクファディン、『ハリー・ポッター』シリーズのジェイソン・アイザックス、『トレインスポッティング』などのケリー・マクドナルドらが共演する。(2021年 アメリカ)
 

story:

第二次世界大戦下の1943年。劣勢のイギリス軍は、ナチス掃滅に不可欠なイタリア・シチリア攻略を進めるが、シチリア沿岸はドイツ軍による固い防御が敷かれていた。そこで英国諜報部(MI5)のモンタギュー少佐たちは驚くべき奇策をチャーチル首相に提案する。“オペレーション・ミンスミート”と名付けられたその欺瞞作戦は、高級将校に見せかけた死体に「イギリス軍がギリシャ上陸を計画している」という偽造文書を持たせて地中海に流し、ヒトラーを騙すというものだった。それはヨーロッパ各国の二重三重スパイを巻き込み、熾烈な情報戦へと発展していくが...
 

review:

ミンスミート作戦」は、第二次世界大戦中の1943年にイギリス軍が実行し成功を収めた諜報作戦である。連合国軍側の戦争計画に関する「極秘書類」を持った「マーティン少佐の死体」をスペイン沿岸に漂着させ、ドイツ側にその極秘情報を「偶然」入手させる。実際の計画地がシチリアであることを秘匿しつつ、連合国軍がギリシャサルデーニャ侵攻を計画しているとナチス・ドイツの上層部に信じ込ませようとしたのだ。
 
この奇想天外な欺瞞作戦は、表向きは弁護士の諜報員ユーエン・モンタギュー少佐、チャールズ・チャムリー空軍大尉、イアン・フレミング少佐によってチャーチル首相に提案された。1953年に出版されたユーエン・モンタギュー少佐による書籍『 The Man Who Never Was(存在しなかった男)』によって、その作戦の大部分が明らかにされているが、本作はベン・マッキンタイアー『ナチを欺いた死体 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実』を原作としている。
 
「マーティン少佐」の「死体」を手に入れ、その「身上」を綿密に作り込む過程がテンポよく描かれ、作戦実行後に二重、三重のスパイが騙し合い駆け引きし、スリリングな展開を見せる。007シリーズを観ているかのような気分になるのも当然と言えば当然、「偽造文書を持たせた死体を海に流す」という奇策を考え出したイアン・フレミング少佐は、後の007シリーズの原作者なのである。本作に登場するイギリス海軍提督ジョン・ゴドフリーは、007シリーズに登場する「M」のモデルとして知られているそうだ。
 
まさに「事実は小説よりも奇なり」であるが、なぜか中途半端な恋模様が織り込まれており、そのせいで筋がボヤけてしまっている。モンタギューと妻アイリス、弟アイヴァー、チャムリー、ジーン・レスリーの人間関係が何故だかイマイチわかりづらい。何なら弟もメガネでチャムリーもメガネだから最初どっちがどっちか分からないし、それ以外の皆さんも役割がよく分からない。余計な恋模様より登場人物をきちんと描いてくれだし、もっと言えば世界史の基礎知識が必要すぎる。その点が少々残念ではあったが、史実として興味深い映画体験ではあったと思う。
 

trailer: