銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】バビロン

映画日誌’23-08:バビロン
 

introduction:

『セッション』『ラ・ラ・ランド』などのデイミアン・チャゼル監督が、1920年代のハリウッド黄金時代を描いたドラマ。サイレントからトーキーへと移り変わる激動の時代で夢を叶えようとする男女の運命を描く。主演はブラッド・ピットマーゴット・ロビー。『スパイダーマン』シリーズのトビー・マグワイア、メキシコ出身のディエゴ・カルバのほか、オリビア・ワイルド、「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」のフリーら多彩な顔ぶれが共演する。『ラ・ラ・ランド』のジャスティン・ハーウィッツが音楽を手がけた。(2022年 アメリカ)
 

story:

1920年代のアメリカ・ハリウッド。夢を抱いてハリウッドへやって来た青年マニーと、スターを夢見る新人女優のネリーは、大スターのジャックが開いた豪華なパーティーで運命的に出会う。恐れ知らずで奔放なネリーは人々を魅了しながらスターの階段を駆け上がり、マニーもまた、ジャックの助手として映画界での一歩を踏み出す。しかしその頃、映画業界はサイレント映画からトーキー映画へと移り変わる激動の時代を迎えようとしていた。
 

review:

いいか悪口を書くぞ。やっぱりデイミアン・チャゼルと相性が悪い。『セッション』は勢いがあって観ているあいだは面白かったけど、よく目を凝らして見ると勢いしかない。唯一『ファーストマン』は物語に奥行きを感じたけど、相変わらず人物描写に奥行きがなく、物語が薄っぺらい。『ラ・ラ・ランド』にいたってはライアン・ゴズリングのファンなのに何がいいのか一ミリも理解できなかった。
 
で、デイミアン・チャゼルはもういいやという気持ちだったが、ブラッド・ピットマーゴット・ロビーというキャスティングに惹かれたのと、1920年代のハリウッドアンダーカルチャーを描いているという点が気になってしまい劇場へ足を運んでしまった。ああこれは、ウディ・アレンが苦手なのにもしかしたら次は理解できるかもと新作を見続けた日々と同じではないか。
 
さて、1920年代のアメリカは「狂騒(狂乱)の20年代」と称される。工業化によって生産効率が上がり資本主義が拡大した1910年代から続く好景気は、ほとんどの米国民にかつてない豊かな暮らしをもたらした。人々は連日連夜パーティを楽しみ、堕落した退廃的な生活を送るようになる。「ジャズ」「映画」「ファッション」「文学」などの文化が開花し、それまで押し付けられていた保守的なモラルを打ち破り、自由な生き方をする女性たち「フラッパー」が闊歩した。
 
映画はサイレントからトーキーに切り替わり、大衆がトーキーに熱狂する一方で、多くの俳優がセリフの下手さや声の悪さで人気を失う。ブラッド・ピットが演じるジャック・コンラッドは当時の大スター、ジョン・ギルバートがモデルだ。彼の哀しい運命はこれまでも、名作『雨に唄えば』やフランス映画『アーティスト』などで描かれてきた。マーゴット・ロビー演じるネリーのモデルとなったクララ・ボウもまた、倫理観の急激な変化によって時代に置き去りにされてしまう。
 
彼らが一瞬の輝きを放ったハリウッド黄金期を「最も繁栄している不道徳な都市」古代バビロンに例え、1920年アメリカの絢爛豪華で退廃的でスキャンダラスなムードをこれでもかと映し出す。が、とにかくカメラワークが雑。いつも思うが、構図が雑で映像が美しくない。これが90分なら我慢できたが、3時間である。3時間費やして観るほどの映画だったかと問われると否と答える。何なのよ何が言いたいのよ、という虚無がすでに既視感。ああ、わしこの監督苦手やと再認識しただけだった。
 

trailer: