銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ビルド・ア・ガール

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映画日誌’21-45:ビルド・ア・ガール
 

introduction:

作家やコラムニストとして活動するキャトリン・モランの自伝的小説を原作にした青春ドラマ。1990年代前半のUKロックシーンを舞台に、冴えない女子高生が辛口音楽ライターに変貌を遂げる姿を描く。主演は『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』や『レディ・バード』などのビーニー・フェルドスタイン。『ジョジョ・ラビット』などのアルフィー・アレン、『マイ・ベスト・フレンド』などのパディ・コンシダイン、『いつか晴れた日に』などのエマ・トンプソンらが共演する。(2019年 イギリス)
 

story:

1993年、イギリス郊外に家族7人で暮らす16歳のジョアンナは、底なしの想像力と文才を持て余し悶々とした日々を送っていた。そんな日常を変えたがっていた彼女は、音楽マニアの兄クリッシーの勧めで大手音楽情報誌「D&ME」のライターに応募。単身ロンドンへ乗り込んで仕事を手に入れることに成功する。しかし取材で出会ったロックスターのジョン・カイトに夢中になり、冷静な記事を書けずに大失敗してしまう。生き残るため、過激な毒舌記事を書きまくる“ドリー・ワイルド”として再び音楽業界に返り咲き、人気が爆発した彼女だったが...
 

review:

オアシス、ブラー、プライマル・スクリームハッピー・マンデーズマニック・ストリート・プリーチャーズ・・・90年代前半のUKロックシーンを背景に描かれる、音楽ライターとしてロック・ジャーナリズム業界をたくましく渡り歩く16歳の少女の物語だ。原作はイギリスの作家キャトリン・モランの半自伝的小説「How To Build A Girl(女の子をつくる方法)」で、脚本もモランが手がけている。
 
青春ドラマだが、ジョアンナには優しい家族はいても、親友はいない。モランは自分がそうだったように、一人ぼっちの女の子に向けた映画をつくりたかったんだそうだ。そして労働者階級の貧困家庭で育った女の子がどうやってお金を稼げるようになるか、が重要なポイントだったと言う。何かが起こるのを待っていても人生は変わらない、という若い女性たちへのメッセージでもある。
 
モラン自身、8人きょうだいの長女で4人の妹と3人の弟がいる。父はアイルランド人で、元ドラマー。「ウルヴァーハンプトン唯一のヒッピー」だった家庭で、モランと兄弟たちは学校に通っておらず、両親からもまともな教育を受けていない。図書館に通い詰め、ほとんどの知識を本から得たモランは、10代の頃から作家になると決めていたそうだ。
 
モランは15歳でイギリスの新聞『オブザーバー』紙の若者レポーター賞を受賞し、1991年に16歳で初の小説『ナルモ年代記』を出版。同年、週刊音楽雑誌『メロディ・メイカー』で歴代最年少のロック評論家として活躍し始めた。17歳で『タイム』紙の週刊コラムニストとなり、音楽番組『ネイキッド・シティ』の司会者に抜擢されている。と言う訳で、多少のフィクションはあるものの、映画のようなストーリーはほぼ実話。
 
ちょっと過剰と思える演出もあったが、安易な恋愛ドラマに落とし込まないプロットには好感が持てたし、冴えないけど内なる何かを持て余してこじらせた女子高生を演じさせたら当代きってのビーニー・フェルドスタインが、ジョアンナこと“ドリー・ワイルド”としてがむしゃらに突き進む(そして挫折する)姿に勇気をもらえたりする。エマ・トンプソンに出会えるのもイギリス映画ならでは。楽しかった。
 

trailer: