映画日誌’21-44:Our Friend/アワー・フレンド
introduction:
「Esquire」誌に掲載され、栄えある全米雑誌賞を受賞したマシュー・ティーグの実体験に基づくエッセイを映画化。余命宣告を受けた妻とその夫、彼らを献身的に支え続けた親友との間に結ばれた友情と絆を映し出す。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でオスカーを獲得したケイシー・アフレックと『サスペリア』などのダコタ・ジョンソン、『ザ・マペッツ』などのジェイソン・シーゲルが出演。監督はドキュメンタリー作品「Blackfish」で英国アカデミー賞にノミネートされたガブリエラ・カウパースウェイト。巨匠リドリー・スコットがエグゼクティブ・プロデューサーとして参加している。(2019年 アメリカ)
story:
2人の幼い娘を育てながら、仕事に打ち込むジャーナリストのマットと、妻で舞台女優のニコル。ある日ニコルが末期がんの宣告を受けたことから、家族の生活は一変してしまう。妻の介護と子育ての負担が重くのしかかり、追い詰められたマットに救いの手を差し伸べたのは、夫婦の長年の親友デインだった。かつて人生に絶望し、生きる希望を失いかけた時に夫婦から心を救われた過去を持つ彼は、住み込みで一家をサポートすため遠方から駆け付けるが...
review:
数年間、自分の生活や恋人を犠牲にして、友人の最期と向き合う。並大抵のことではないが、実話だ。2015年に雑誌「エスクァイア」に掲載されたマシュー・ティーグのエッセイ「The Friend: Love Is Not a Big Enough Word」をもとに、末期がんで余命宣告を受けた妻ニコル、彼女の夫で原作者のマシュー、彼らに寄り添った親友デイン、3人の愛と友情の物語が紡がれる。
題材やストーリーも悪くないし、ジェイソン・シーゲル、ケイシー・アフレック、ダコタ・ジョンソンら俳優陣の演技が素晴らしくて3人の友情に心打たれるし、子どもたちはかわいいし、人生は美しいな...とか思ったし涙が滲んだし、滲んだっていうか嗚咽したけどさ。いい映画の要素は揃っているはずなのに、何だかとても惜しいのである。
まず構成がいまいち。演出のためか、過去と現在を行き来しながら描かれる。告知の何年前、何年後というテロップが入るのは親切だし、確かにそれが効果的な部分もあったのかもしれないが、時系列ではないので散漫な印象になる。メッセージが曖昧になり、で、一番言いたかったことは何ですか?という気持ちになるのだ。
原作のタイトルは「The Friend」なので、作者が一番伝えたかったことはマシューからデインへのメッセージだったのではないかと思う。彼らの友情にきちんとフォーカスせず、デインの存在を中途半端に描いてしまったことで、使い古された感のある、ありきたりな作品になってしまったのではないだろうか。それが少し残念だった。嗚咽したけどね...。