銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ダム・マネー ウォール街を狙え!

映画日誌’24-04:ダム・マネー ウォール街を狙え!

introduction:

2021年にアメリカの金融マーケットを激震させた前代未聞の大事件“ゲームストップ株騒動”を描く実録エンターテイメント。『ソーシャル・ネットワーク』(2010)の原作者でもあるベン・メズリックのノンフィクションに基づき、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』のクレイグ・ギレスピーが監督を務めた。主演は『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・ダノ。ピート・デビッドソン、ビンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、セス・ローゲンらが共演する。(2023年 アメリカ)

story:

コロナ禍の2020年、マサチューセッツ州の平凡な会社員キース・ギルは、全財産の5万ドルをゲームストップ株に投じていた。アメリカ各地の実店舗でゲームソフトを販売するゲームストップ社は業績が低迷し、倒産間近とみなされていたが、キースは“ローリング・キティ”という名で動画配信をおこない、同社の株が著しく過小評価されているとネット掲示板で訴える。すると彼の主張に共感した大勢の個人投資家が株を買い始め、2021年初頭に株価はまさかの大暴騰。同社を空売りして一儲けすることを目論んでいたウォール街のエリートたちは大きな損失を被り、全米を揺るがす社会現象に発展していく。事件は連日メディアを賑わせ、キースは一躍時の人となるが・・・

review:

2021年初頭、アメリカの金融マーケットが激震する前代未聞の大事件が発生したのをみなさん覚えているだろうか。私はすっかり忘れていたよ。時代遅れで倒産間近と囁かれていたゲームストップ社(実店舗によるゲームソフトの小売り企業)の株を、ネット掲示板に集まった個人投資家たちが書いまくり、同社を空売りしていたヘッジファンドに大損害を与えた“ゲームストップ株騒動”だ。全米を揺るがす社会現象となり、日本でも大きな反響を呼んだ。らしい。

実際のところ騒動を煽ったキース・ギルは「ただの」会社員ではなかったという話もあるが、ネット掲示板の動画配信でゲームストップ社の価値を真摯に訴え続けた“ローリング・キティ”と、彼に共感した名もなき一般市民たちが団結し、強欲な大富豪に一泡吹かせた狂騒の一部始終が痛快に描かれる。ジェットコースターのような展開にぐいぐいと引き込まれる。投資の知識がなくても大丈夫だし、投資に役立つ知識は何にも得られないが、空売りが何かくらいは知ってるといいかも。

空売りとは、手持ちの株式を売ることを「現物の売り」というのに対し、手元に持っていない株式を信用取引などを利用して「借りて売る」ことなんだそうだ。これから下がることが予想されるタイミングに空売りして、予想通り株価が下落したところで買い戻して利益を得るというもので、空売りする投資家が増えると相場が下落する。そうしてウォール街のエリートたちに食い物にされ、踏み潰されてきた企業も少なくないのだろう。

ポール・ダノ出演作にハズレなし。株価に一喜一憂するヒリヒリした臨場感、狂騒の宴に乗っかった人々のドラマ、キースを取り巻く人間模様、彼の信念に寄り添った奥さんとの絆も見どころ。『バービー』のアメリカ・フェレイラ姉さんやアリアナの元彼ピート・デヴィッドソンがいい味出してる。監督は『ラースと、その彼女』『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』のクレイグ・ギレスピー。彼は人間の描き方が抜群に巧い。次回作も楽しみである。

trailer: