銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ディック・ロングはなぜ死んだのか?

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映画日誌’20-33:ディック・ロングはなぜ死んだのか?
 

introduction:

スイス・アーミー・マン』で衝撃の長編デビューを飾ったダニエル・シャイナート監督が、気鋭の映画スタジオ「A24」と再びタッグを組み、実際に起きた出来事に着想を得て、アメリカの片田舎で起こった奇妙な殺人事件の顛末を描くミステリー仕立てのダーク・コメディ。あるバンドの仲間たちがひた隠しにする、メンバー怪死の真相が次第に明らかになっていく。マイケル・アボット・Jrやヴァージニア・ニューコムなどが出演するほか、ダニエル・シャイナート監督がタイトルロールのディック・ロングを演じる。(2019年 アメリカ)
 

story:

売れないバンド仲間のジーク、アール、ディックの3人は、練習と称してガレージに集まり、いつものようにバカ騒ぎをしていたが、あることが原因でディックが突然死んでしまう。殺人事件として警察が捜査を進める中、唯一ディック死亡の真相を知っているジークとアールは、なぜか彼の死因をひた隠しにし、自分たちの痕跡を揉み消そうと躍起になる。誰もが知り合いの小さな田舎町では、事件の噂がまたたく間に広がり、人々の話題はディックの死でもちきりになるが...
 

review:

ハリー・ポッターことダニエル・ラドクリフの扱い方があまりにもアレで話題になった『スイス・アーミー・マン』のダニエル・シャイナート監督の新作だ。『スイス・アーミー・マン』は無人島に漂着したポール・ダノダニエル・ラドクリフの死体をサーフボードにして、オナラの推進力で海を渡るというイカれた映画である。繰り返すが本当にイカれた映画だった。しかも今回は「A24」が配給だけじゃなく制作も手掛けた、コーエン兄弟の『ファーゴ』を彷彿とさせる、という煽り文句につられて劇場に足を運んでしまった。
 
そもそも、「ディック・ロング」って名前な・・・?たしかにリチャードの愛称はディックだけども。ちなみにキャスティングするときチャニング・テイタムジャスティン・ティンバーレイクにオファーしてみたけど、ことごとく断られたそうだ。そりゃそうだ。仕方なく監督自身が「ディック・ロング」を演じ、死体として無体な扱いを受けている。自業自得、因果応報感がすごい。ハリー・ポッターの呪い。
 
ハングオーバー!』をはじめ、いつまでも大人になりきれない男3〜4人が集まってドタバタと馬鹿をやる映画はたいてい面白い。しかし、本作で『ハングオーバー!』的な面白さを期待していると肩透かしを食らう。この映画もお馬鹿3人組がひたすら馬鹿騒ぎしているところから始まり、馬鹿馬鹿しい理由で死んだ仲間を庇うために馬鹿馬鹿しい嘘をついて追い詰められていく馬鹿馬鹿しいストーリーなんだが、面白い要素が随所にあるにも関わらず、なぜか笑えない。きっと文化の違いとかそういうことではないし、不謹慎なブラック・ユーモアだから笑うに笑えない、ということでもない。
 
ディック・ロングの死の真相はかなり早い段階で分かってしまうのだけど、張り巡らせた伏線を回収するとか、どんでん返しするとか気の利いたギミックがあるわけでもなく、二人が塗り重ねていく嘘も凡庸で、取り立てて面白くない。アホな映画で笑いたかった私には期待外れだったが、冷静に考えると「A24」の映画だもんな。独特のシュールな切り口が個性と言えばそうなのかもしれないし、全く面白くないとも言わないが、身も蓋もないことを言うと予告編が一番面白かった。
 
ちなみに、アメリカ合衆国ワシントン州のイーナムクローで実際に起きた事件を元にしているそうだ。気になる、且つネタバレしても構わない人はググってみたらいいよ・・・。
 

trailer: