銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】DUNE/デューン 砂の惑星

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映画日誌’21-43:DUNE/デューン 砂の惑星
 

introduction:

かつてデビッド・リンチ監督によって映画化されたフランク・ハーバートSF小説を、『ブレードランナー2049』『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が新たに映像化したSFスペクタクルアドベンチャーデューンと呼ばれる惑星を舞台に繰り広げられる覇権争いを描く。主演は『君の名前で僕を呼んで』などのティモシー・シャラメ。『ライフ』のレベッカ・ファーガソン、『スパイダーマン』シリーズのゼンデイヤ、『アクアマン』のジェイソン・モモアのほか、ハビエル・バルデムオスカー・アイザックジョシュ・ブローリンステラン・スカルスガルドらが共演する。(2020年 アメリカ)
 

story:

人類が地球以外の惑星に移り住み、宇宙帝国を築いた西暦1万190年。皇帝からの命令で、その惑星を制する者が全宇宙を制すると言われる過酷な砂の惑星デューン」を統治することになったレト・アトレイデス公爵は、妻ジェシカと息子ポールとともに降り立つ。惑星では抗老化作用のある香料「メランジ」が生産され、それはアトレイデス家に莫大な利益をもたらすはずだったが、メランジの採掘権を持つハルコンネン家と皇帝による陰謀によりアトレイデス公爵は殺害されてしまう。母ジェシカとともに逃げ延びたポールは、原住民フレメンの中に身を隠すが...
 

review:

長いこと、「デューン/砂の惑星」は映画界における鬼門であった。原作の「デューン」は、アメリカのSF作家フランク・ハーバートによる古典的名作。時を遡ること半世紀超、プロデューサーのアーサー・P・ジェイコブスが映画権を獲得し、鬼才アレハンドロ・ホドロフスキーを招いて映像化に乗り出した。
 
ホドロフスキーは世界中から最高峰の才能を集めなきゃ!と張り切ってサルバドール・ダリやらミック・ジャガーやらをキャスティングし、12時間の大作にすると豪語。そのためスタジオから資金が集まらず、壮大なプロジェクトは頓挫することに。その顛末はのちに映画『ホロドフスキーのDUNE』で語られている。
 
その後、映画化権を獲得したディノ・デ・ラウレンティスによってリドリー・スコットに白羽の矢が立つものの、原作者とモメたりしつつ降板。そして『エレファント・マン』を観て衝撃を受けたラウレンティスがデヴィッド・リンチにオファーを送り、1984年、ついに「珍品」と名高い伝説のリンチ版『デューン/砂の惑星』が爆誕したのである。
 
デヴィッド・リンチが監督すると聞かされた。ショックだった。彼なら成功させるとね。あの映画を作れる才能を持つ唯一の監督だ。私の夢だった映画を他の監督が作るなんて。(中略)私は病人のようによろよろと映画館に行った。映画が始まった時には今にも泣き出しそうだった。観てる間にだんだん元気が出てきた。あまりのひどさに嬉しくなった」
(『ホドロフスキーのDUNE』より)
 

 

ファンも多いが賛否両論あり、リンチ本人も失敗作と考えているらしく今日に至るまで頑なに作品について語ろうとしないらしい。思い出したくないんだね・・・。という訳で、「デューン/砂の惑星」は半世紀にわたって映像化の試みが繰り返されてきたが、いずれも何となく残念な結果を残し、関わる人の多くを失意のどん底に落としてきた“呪われた企画”だった。
 
それを!『メッセージ』でその手腕を見せつけた、今を代表する比類なき天才ドゥニ・ヴィルヌーヴが!撮る!!と言うニュースが世界を駆け巡り、映画ファンの間に激震が走ったのである。『ブレードランナー2049』は置いといて、『灼熱の魂』で尻子玉を抜かれて以来ドゥニ・ヴィルヌーヴのフォロワーであり、ホドロフスキーの信者である私の心もざわついた。
 
公開後すぐ、グランドシネマサンシャイン池袋のチケット争奪戦に勝てる気がしなかったので二子玉川IMAXレーザーで鑑賞。一言で言うと、2時間35分の「壮大な序章」だった。そらそうだ、原作は6部作(息子たちによる完結編を入れると8部)で、「砂の惑星」はその第1作なのである。起承転結の「起」だけ観た感すごい。
 
そしてただただ、映像と音楽とティモシー・シャラメの美しさを愛でる映画であった。そもそも原作が『スター・ウォーズ』や『風の谷のナウシカ』などの作品に多大な影響を与えてきたこともあり、既視感だらけで新鮮味がないのは仕方のないことだろう。それを荘厳な映像と音楽で魅せたドゥニ・ヴィルヌーヴの仕事は素晴らしいと思う。
 
相変わらず柿の種は浮遊してたし、砂蟲(サンドワーム)はリアルだし、羽ばたき飛行機や母船のフォルムも美しい。193 cmの巨体を奮わせるジェイソン・モモアがよき。はて、ステラン・スカルスガルドがどこかに出てたはずだが、と思ったらあの浮遊してた肥満体かぁ。原型とどめてないやんけ。とりあえず、初見の方は公式サイト等で用語集と人物相関図を眺めてから観ることをおすすめする。ぜひIMAXのスクリーンで。
 

trailer: