銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】落下の解剖学

映画日誌’24-14:落下の解剖学

introduction:

人里離れた雪山の山荘で起きた転落死を巡る物語を描くヒューマンサスペンス。『愛欲のセラピー』のジュスティーヌ・トリエが監督を務め、『ONODA 一万夜を越えて』のアルチュール・アラリと共に脚本を手掛けた。主演は『ありがとう、トニ・エルドマン』のザンドラ・ヒュラー、『女の一生』のスワン・アルローほか、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツらが脇を固める。第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞のパルムドールを受賞し、第96回アカデミー賞でも作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、編集賞の5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した。(2023年 フランス)

story:

人里離れた雪山の山荘で、視覚障がいをもつ11歳の少年が血を流して倒れていた父親を発見する。悲鳴を聞いた母親が救助を要請するが、父親はすでに息絶えていた。当初は転落死と思われたが、その死には不審な点も多く、次第にベストセラー作家である妻サンドラに殺人容疑が向けられる。自らの無罪を主張するサンドラだったが、事件の真相が明らかになっていくなかで、夫婦のあいだに隠された秘密や嘘が露わになっていく。

review:

両親と息子の三人家族と犬が暮らす、人里離れた雪山の山荘で父親が転落死する。自殺か事故か、それとも他殺か。夫殺しの疑惑をかけられたベストセラー作家の妻と、死亡した夫の間に何があったのか。法廷で夫婦の秘密や嘘が暴露されていくサスペンスだ。が、みんな、思ってたのと違ったじゃろ!?わしゃ違った。名探偵が山荘にいた人々の嫌疑を明らかにするサスペンスだとは思ってなかったけど、想像していたものと全然違った。そして全体的にやや冗長で疲れた。

脚本は優れていると思うし、テーマが違うところにあるということは理解するが、それを掴みづらい。それをすぐ理解してこの映画を楽しめた人、何なの、天才なの・・・?なんというか、江戸前鮨が食べたいなぁと思っているところに、とある地方の珍妙な発酵食品を出された気分である。この映画を面白かったと言っている人は「たしかにスシやけど・・・」って心の中で思いながら「これはこれで美味しいですね!」って言ってるだけじゃないの・・・?

法廷で夫婦が抱えていた根深い問題が明らかになっていくが、ボタンを掛け違えたような夫婦の仲違いにヒリヒリするものの、真実は明らかにならないのでモヤモヤする。推測するしかないが、とにかくモヤモヤする。真相が分からないなりに腹落ちさせてほしかった。法廷で真相が明らかにならないという点では『ザリガニの鳴くところ』と同じだが、『ザリガニ』は主人公のカイアが犯人かどうかは問題じゃない面白さがあったように思う。あ!パルムドッグ賞を受賞したボーダーコリーのメッシがかわいいよ・・・。

trailer: