銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】THE GUILTY ギルティ

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’19-13
『THE GUILTY ギルティ』(2018年 デンマーク)
 

うんちく

「電話からの声と音だけで、誘拐事件を解決する」というシンプルな設定ながら、予測不可能な展開が話題を呼び、第34回サンダンス映画祭で観客賞を受賞した異色サスペンス。第91回アカデミー賞外国語映画賞 デンマーク代表にも選出され、各地の映画祭で高評価を得ている。監督は本作が長編映画監督デビュー作となるグスタフ・モーラーデンマークを代表する俳優ヤコブ・セーダーグレンが出演。
 

あらすじ

ある事件をきっかけに警察官としての一線を退き、緊急通報指令室のオペレーターとして勤務するアスガー・ホルム。交通事故による緊急搬送を遠隔手配するなど、些細な事件に応対する日々が続いていたある日、今まさに誘拐されているという女性からの通報を受ける。女性の怯える声、車の発車音、ワイパーの音・・・電話越しに聞こえるさまざまな音を頼りに、事件を解決しようと躍起になるアスガーだったが...
 

かんそう

主人公のアスガーのふとした表情が、テスラおよびスペースX社のCEO イーロン・マスクに似ており、そういや今年に入ってから新聞を賑わすことが若干少なくなったけど(っていうか2018年がいろいろありすぎ感)とかどうでもいいことに気を取られがちになるので要注意だ。そんなのはお前だけだとどこか遠くから聞こえてくるが、なんと言っても、このデンマークイーロン・マスクが映像のほとんどを占めているワンシチュエーション・サスペンスである。電話から聞こえてくる音だけで観客にそのシチュエーションをイメージさせ、ドラマに奥行きを出していかなければいけないが、充分それを成し遂げていたと思う。張り詰めた緊張の糸は最後まで途切れることなく、衝撃のラストシーンを迎えるまで息をつかせぬほどだ。あとで冷静に振り返ると、物語に物足りなさを感じたりもするが、88分楽しませてくれた。電話の向こうで起きている事件が展開するにつれ、同時に少しずつ明らかになるアスガーの過去。苛立つアスガーを気にも留めない同僚の態度にフォーカスしない独特のカメラワークが、独善に陥りやすい彼の閉鎖性とその世界を象徴的に映し出す。そして真実に辿り着いたとき、「ギルティ」の重層的な意味に気がついて愕然とするのである。新しい映画体験として、劇場で観ることをお勧めする。ジェイク・ギレンホール主演によるハリウッド・リメイクもすでに決定しているという。ジェイク・ギレンホール、そういう役回り多い。