銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】マーメイド・イン・パリ

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映画日誌’21-05:マーメイド・イン・パリ
 

introduction:

パリの街を舞台に、恋を忘れた男と人魚が織りなす恋物語を描いたファンタジー。監督は、アニメーション映画『ジャック&クロックハート 鳩時計の心臓をもつ少年』などで知られるフランスのアーティスト、マチアス・マルジウ。リーバイスヒューゴ・ボスのモデルとしても活躍し、『ダリダ〜あまい囁き〜』などに出演したニコラ・デュヴォシェルが主演を務め、『青い欲動』などの若手女優マリリン・リマ、ペドロ・アルモドバル監督作品の常連ロッシ・デ・パルマなどが出演している。(2020年 フランス)
 

story:

記録的な雨による大増水で、浸水してしまったパリ。セーヌ川に浮かぶ老舗のバーでパフォーマーを務めるガスパールは、ある夜、傷を負い倒れている人魚ルラを見つけて保護する。美しい歌声で男たちを魅了し、恋に落ちた男性の心臓を破裂させ命を奪っていたルラは、ガスパールにも歌を歌い聞かせるが、過去の失恋で心が壊れてしまっていた彼にはその歌声が全く効かなかった。二人は次第に惹かれ合うが、ルラは2日目の朝日が昇る前に海に帰らねば、命を落としてしまうという。
 

review:

その昔、『スプラッシュ』という映画があった。1984年にドラマの名匠ロン・ハワードダリル・ハンナトム・ハンクスで撮った、ニューヨークの青年と人魚の恋を描くファンタジー・ラブストーリーだ。それはそれは良い映画で、10代でこの作品に出会った私は何度もビデオで観て感動したものだ。いま同じ感想を抱くかは分からないけど、もしかしたら、私が映画好きになったベースのひとつにはなっているかもしれない。なので人魚が題材だと、つい観てしまうのである。ちなみに私が「映画っておもしれー」と初めて理屈抜きで感じたのはおそらく、小学生のときに映画館で観たスピルバーグの『太陽の帝国』である(どうでもいい)。
 
さて、パリの人魚。観ていてつまらないことはないんだけど、どうにも心のどこにも刺さらない。まずストーリーが荒削り。主役のガスパールをはじめ登場人物の背景や人物像の描き方がとっ散らかってて、二人が恋に落ちる必然性も見当たらない。そもそも、みんなが人魚の存在をあっさりと受け入れているのがどうにも不思議な、ファンタジーが過ぎる世界。いや街の中を人魚積んだトゥクトゥクが疾走してたらあっという間に世界中に拡散されてトレンド入りだよ・・・。先日新宿駅東口にピッコロ大魔王と海王様がいたので速攻写真撮って速攻SNSに上げた私が言うのだから間違いない。
 
映像の雰囲気としては奥行きのない『アメリ』、あるいはティム・バートンミシェル・ゴンドリーかウェス・アンダーソンの廉価版。アラフォーのおっさんがオモチャだらけの部屋に住んでいるのはまるで現実味が無いが、ファンタジーと思えばファンタジーだし、そんなおっさんだから子どもみたいに無垢な人魚と恋に落ちることが出来るのかもしれないし、かわいいと言えばかわいいので、そういう雰囲気を楽しみたい人にはいいのかも。でも日本の公式サイトで監督のプロフィール写真観たら、キテレツを装ったおっさんでちょっとイラっとした。良いところを挙げるならば、隣人を演じていたロッシ・デ・パルマは最高。この映画の素晴らしさを数値化したら、半分くらい彼女が持っていくんじゃないかな。
 

trailer: