銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】パリに見出されたピアニスト

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’19-52
『パリに見出されたピアニスト』(2018年 フランス,ベルギー)
 

うんちく

恵まれない境遇で生まれ育った青年と、彼のピアニストとしての才能を見出した教師たちの交流を描いたヒューマンドラマ。リュック・ベッソンギョーム・カネ作品で助監督として研鑽を積み、本作が長編作品3作目となるルドヴィク・バーナードが監督を務める。主演はフランス映画界のサラブレッド、ジュール・ベンシェトリ。『神々と男たち』などのランベール・ウィルソン、『イングリッシュ・ペイシェント』などのクリスティン・スコット・トーマスが脇を固める。
 

あらすじ

パリの主要ターミナル、北駅に置かれた一台のピアノ。そのピアノを弾くことが、マチューの密かな楽しみだった。決して裕福とは言えない家庭で育ったマチューは、幼い頃にふとしたきっかけでピアノと出会い、誰にも内緒で練習していたのだ。ある日、パリの名門音楽学コンセルヴァトワールパリ国立高等音楽院)でディレクターを務めるピエールが偶然そこを通りかかり、マチューの才能に強く惹かれた彼は、ピアニストとして育てたいと声を掛ける。乗り気ではないマチューだったが、その後仲間と一緒に盗みに入ったことで逮捕されてしまい、実刑を免れるためコンセルヴァトワールで公益奉仕をすることに。そしてピエールの強い勧めによって、“女伯爵”と呼ばれるピアノ教師エリザベスのレッスンを受けることになるが...
 

かんそう

貧しい母子家庭で育ち、仲間と盗みを繰り返して何度も警察の厄介になっている不良少年が、パリの名門音楽学コンセルヴァトワールのディレクターに見出され、紆余曲折しながらピアニストとして成長していく物語である。「EMINEM WORLD TOUR」って部屋に貼ってるけど本当はピアノが大好きな不良少年マチュー、フランスを代表する大女優イザベル・ユペールが主演している『アスファルト』という群像劇で、イザベル・ユペールの向かいに住んでいた美少年だ。イケてない角刈りで気付かなかったよ。『アスファルト』はとても素敵な映画だよ。さて、観ているときはそれなりに面白く観たような気がするのだが、冷静に振り返ってみると、ストーリーは凡庸の極みで奥行きがなく、そのうえ予定調和にも程がある。たいへんツッコミどころが多い作品で、教師には全身全霊で反抗するのに、気になる女の子には「ありがと(俺がんばる)♡」って、キャラクターがブレすぎである。んでもって一応ピアニストなのに遊び方が危険ーーー!女子のほう、君もコンセルヴァトワールの学生やろ!国際ピアノコンクール前に怪我させる気か。そして極め付けは、コンクール当日までフルオーケストラと練習したことない子がぶっつけ本番で(閉口)。ああそうか、これはもしかしてファンタジーなのかしらと思ったら、穏やかな気持ちで大好きなラフマニノフ「ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調」を聴くことができた。感動のクライマックス、私の心が震えたのはドラマチックでロマンチックなラフマニノフ「ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調」の圧倒的な美しさによるものだったと気付いたのは、エンドロールが終わり、劇場の灯りが点いたときである。結論、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調」は偉大。気持ちが昂ぶってラフマニノフ「ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調」って3回も書いてしまった。あー死ぬまでに生のオーケストラ演奏で聴きたい。ラフマニノフが第二番を作曲したときのエピソードがストーリーに絡まっていくところが素敵。あと、子どもの頃のマチューにピアノを教えてくれた老先生、晩年のシーモアバーンスタインを彷彿とさせる雰囲気でよかったな。