銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】だれもが愛しいチャンピオン

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’19-63
『だれもが愛しいチャンピオン』(2018年 スペイン)
 

うんちく

プロバスケットボールの元コーチと、ハンディキャップを持つ選手たちのバスケットボールチームの出会いを絆を描き、スペインのアカデミー賞たるゴヤ賞で作品賞を含む三部門を制したドラマ。脚本・監督は『モルタデロとフィレモン』などのハビエル・フェセル。『オリーブの樹は呼んでいる』などのハビエル・グティエレスが主演を務め、実際に障がいを持つ600人の中からオーディションで選ばれた10名が共演した。
 

あらすじ

プロバスケットボールチームでコーチを務めるマルコは、負けん気が強い性格が災いして問題を起こし、解雇されてしまう。その上、飲酒運転事故を起こし、判事から社会奉仕活動として、知的障がい者たちのバスケットボール・チーム“アミーゴス”を指導するよう命じられてしまう。選手たちの自由奔放な言動に翻弄され、困惑するマルコだったが、彼らの純粋さや情熱、豊かなユーモアに触れて一念発起するが…
 

かんそう

大人になりきれない、短気で少々身勝手な性格が災いして無職・免停・別居中という、こじらせ中年が主人公だ。いわゆるステレオタイプのキャラクターだが、こういう子供おじさんは万国共通なんだなと妙に感心する。彼の名はマルコ。初めて接する知的障がい者たちに戸惑う姿は、普通(という思い込み)と異なる個性を持った人に対して身構える、いつかの私だ。マルコが”アミーゴス”のメンバーに育まれ、人間として成長していく姿が微笑ましい。程よくユーモアが散りばめれれた脚本は、オーディションで選ばれた10人に合わせ、既に完成していた台本を当て書きして全面改稿されたものとのこと。それは一人一人の個性を魅力的に映し出しており、ややもすればヒューマニズムに偏り感動ポルノと揶揄されそうな題材とストーリーを、誰もがメッセージを享受できる普遍的な物語に昇華させている。人生が愛おしくなる、清々しいラストも秀逸。ちなみに本作が2019年最後の映画となった。本当は社会派の巨匠ケン・ローチの新作を観るつもりだったけど、一年の締めくくりにするにはちょっと重すぎるんだよなぁ。と、何となくチョイスした作品だったが、期待値より素敵な作品だったのでご満悦。素敵な映画納めであった。2019年は例年より少なかったから、2020年はたくさん映画観たい。もっと観たい。