銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ヴァチカンのエクソシスト

映画日誌’23-32:ヴァチカンのエクソシスト
 

introduction:

カトリック教会の総本山バチカンローマ教皇に仕えた実在のエクソシスト、ガブリエーレ・アモルト神父の著書「エクソシストは語る」を映画化したホラー。『グラディエーター』などのオスカー俳優ラッセル・クロウがアモルト神父を演じる。監督は『ガンズ&ゴールド』などのジュリアス・エイヴァリー。『レディ・バード』などのダニエル・ゾバット、『セーラ 少女のめざめ』などのアレックス・エッソー、『続・荒野の用心棒』などのフランコ・ネロらが出演。(2023年 アメリカ・イギリス・スペイン)
 

story:

1987年7月、サン・セバスチャン修道院。アモルト神父はローマ教皇から依頼され、憑依されたある少年の悪魔祓いに向かう。変わり果てた少年の姿を見たアモルト神父は悪魔の仕業と確信し、若き相棒トーマス神父とともに本格的な調査に乗り出す。やがて彼らは、中世ヨーロッパでカトリック教会が異端者の摘発と処罰のために行っていた宗教裁判の記録と、修道院の地下に眠る邪悪な存在に辿り着く。
 

review:

世界屈指の美食の街、スペインのサン・セバスチャン修道院ラッセル・クロウが悪魔とプロレスするホラー映画なんだが、実在した神父の悪魔祓いを描いている。カトリック教会の総本山ヴァチカンのローマ教皇に仕え、生涯で数万回の悪魔祓いをおこなった実在のチーフ・エクソシスト、ガブリエーレ・アモルト神父が、人類に対する悪魔の脅威について探究した回顧録エクソシストは語る」が原作だ。
 
モルト神父は第二次世界大戦中にファシストナチスを相手に戦うパルチザンとなった後、幼い頃に受けた天啓に従い、1951年に司祭に叙階。1986年、当時ヴァチカンのチーフ・エクソシストを務めていたカンディド・アマンティーニ神父の補佐役に任じられ、その4年後には国際エクソシスト協会を設立。1992年にアマンティーニ神父が逝去すると、チーフ・エクソシストとなり、2016年に91歳で逝去している。
 
教会で言う「悪魔」とは、神に逆らった天使のこと。ちなみにそもそも「エクソシスト」とは洗礼の儀式の際に悪魔祓いをおこなうためだけの役職だったらしく、時代とともにやがて形骸化し、1960年代には完全に廃止されている。ところが1973年に映画『エクソシスト』が公開されると悪魔祓いの依頼が教会に寄せられるようになり、司祭がことにあたるようになったらしい。なお本作はヴァチカン内部の描写が多く、その点は非常に興味深く観た。
 
ただ、背景となるスペイン異端審問の忌わしい歴史をもう少し掘り下げてくれていたら、人間に内在する残虐性を通して「人間の自由意志に働きかける悪魔の存在」を感じられたのではと少々残念に思う。が、それを差し引いてもまあまあ面白かった。何せ今回のアモルト神父はラッセル・クロウなので悪魔も物理でねじ伏せそうなんだが、ラスト10分で急にファンタジーになっちゃうから、おじさんちょっと笑っちゃったじゃない・・・。
 

trailer: