銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】CLOSE/クロース

映画日誌’23-33:CLOSE/クロース

 

introduction:

『Girl/ガール』で第71回カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を受賞したルーカス・ドンが、13歳の少年2人に起こる関係の変化を描いた長編第2作。本作が俳優デビューとなるエデン・ダンブリンとグスタフ・ドゥ・ワエルが出演する。第75回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、第80回ゴールデングローブ賞外国語映画賞、第95回アカデミー賞でも国際長編映画賞にノミネートされ、各国の映画祭で高く評価された。配給スタジオ「A24」が北米配給権を獲得したことでも話題となった。(2022年 ベルギー・フランス・オランダ)

 

story:

花き農家の息子のレオと幼馴染のレミは、学校でも放課後でも一緒に時間を過ごす大親友。13歳になった2人は同じ中学校に入学すると、親密すぎる間柄をクラスメイトにからかわれてしまう。むきになって否定したレオだったが、レミへの接し方に戸惑い、次第にそっけない態度をとってしまう。気まずい雰囲気のなか、些細なことで2人は大喧嘩に。仲直りすることができず時間だけが過ぎていったある日、レミとの突然の別れが訪れる。

 

review:

ベルギーの自然豊かな土地を舞台に、幼馴染の少年2人に起こる悲劇と再生が描かれる。無邪気な子どものままのレミと、周囲の視線によって自意識が芽生え、思春期の葛藤を抱え始めたレオ。押し付けられる「世間」の「普通」によって二人の間に生じた溝は埋まることなく、分かり合えないまま仲違いしていく。きっと誰もが味わったことがあるような、少年時代の苦い思い。レミはいつかのあなたであり、レオはいつかの私だ。その逆も然り。

 

自分の気持ちを持て余したレオが、レミから逃れるようにマッチョなホモソーシャルに身を投じていくのが皮肉だ。世の中とは、なんと残酷にできているものか。なぜ、友達を避けたり、避けられたりしなければいけなかったのか。なぜ、いつまでも無邪気な子どものまま戯れていることが許されなかったのか。いつかの自分に思いを馳せながら、子どもたちを見守る大人たちの視線にシンクロする。

 

寡黙ながら、揺れ動く複雑な感情をつぶさに映し出す心情描写に見入ってしまうし、子役たちの演技も素晴らしかった。が、ところが、これが、なぜかあまり刺さらなかったのである・・・。レミの選択が極端すぎることもあるが、筋書きがベタすぎる。映像も美しいけれどどこか既視感があり、狙いが透けて見えるようでほんの少し鼻白んでしまう。しかし世の中的には、泣いた感動したという感想も多いので、私が人の心をどこかに置き忘れてきたんだと思われる。

trailer: