銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

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映画日誌’20-34:ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー
 

introduction:

『リチャード・ジュエル』『トロン:レガシー』などの女優オリヴィア・ワイルドが長編初監督に挑んだ青春コメディ。優等生の女子高生二人が高校最後の一夜に大冒険を繰り広げる騒動を描く。『俺たち』シリーズ、『バイス』などのウィル・フェレルとアダム・マッケイが製作総指揮を務める。人気俳優ジョナ・ヒルの妹としても知られる『レディ・バード』などのビーニー・フェルドスタインと、『ショート・ターム』『デトロイト』などのケイトリン・デヴァーが主演を務める。ビーニーは本作で第77回ゴールデン・グローブ賞の女優賞(コメディー/ミュージカル)にノミネートを果たした。(2019年 アメリカ)
 

story:

女子高生モリーとその親友エイミーは、高校生活の全てを勉学に費やし輝かしい進路を勝ち取っていたが、卒業式前日になってパーティー三昧だったクラスメイトたちも同じくハイレベルな進路が決まっていることを知り、衝撃を受ける。勉強のために青春を犠牲にしてきたことを後悔し、失った時間を取り戻すべく、卒業パーティーに乗り込むことを決意する二人だったが…
 

review:

Book Smart(ブックスマート)とはいわゆるガリ勉、本を読んで賢くなった人、つまり学識はあるが常識がない人のことを指すらしい。ちなみに対義語はStreet Smart(ストリートスマート)、実践で賢くなった人なんだそうだ。人権運動家マララ・ユスフザイ女史、86歳のアメリ最高裁判事RBGことルース・ベイダー・ギンズバーグ女史に憧れ、サクセス街道を突き進むべく、名門大学を目指して勉強一筋の高校生活を送ってきた優等生のモリーとエイミー。
 
ところが、「遊び呆けていたあいつらは高校生活が人生のピークだ」とバカにしていたパリピのクラスメイトも、ハーバードやスタンフォードなど名門大学への進学やGAFAに就職が決まっていることが判明する。青春を犠牲にしてまで勝ち組になったのだ、という優越感がもろくも崩れ去り、愕然とするモリー。あいつらの4年間を一晩で取り返してやる!!と、呼ばれてもいないパーティーに繰り出す女子高生二人組の物語だ。
 
とにかく笑える。女子高生版『ハングオーバー!』と言ったところだが、監督のオリヴィア・ワイルドが『リーサル・ウェポン』や『ビバリーヒルズ・コップ』を参考にしたのとのことで、バディムービーとしても楽しめる。脚本がよく出来ており、モリーとエイミーの掛け合いが楽しい。謎のロボットダンスで会話したかと思えば、無駄にお互いを褒め称え合い、ときに励まし合い、きわどい下ネタで盛り上がったりするのが微笑ましい。
 
優等生の立ち位置から周囲を見下しているモリーはクラスメイトに陰口を言われたりもするけれど、だからと言って周囲とコミュニケーションが断絶しているわけではない。脚本家陣が見かけや趣向のステレオタイプを排除して多面的なキャラクターを創り出しているため、青春学園モノにありがちなスクールカーストやモブキャラが登場しないのが特徴だ。クラスメイトはもちろん、教師やエイミーの両親など、登場するキャラクターがみな個性にあふれ、実に魅力的。アフリカ系、アジア系、メキシコ系など多様なルーツ、多様なセクシャリティが混在し、お互いを受け入れている様子がごく自然に描かれている。
 
場面のひとつひとつが丹念につくり込まれていて、何とも賑やかで騒々しい高校生活の様子、ジェットコースターのように目まぐるしく展開していく青春の疾走感と痛々しさ、周囲を受け入れ、受け入れられて自分の殻を破っていくモリーとエイミーの成長譚が心地好い。二人の青春と友情を彩るプレイリストも素晴らしかった。生きているのが辛くなったら、また観ようかな。みんなも観たらいいよ。
 

trailer: