銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】輝ける人生

 
劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-59
輝ける人生』(2017年 イギリス)
 

うんちく

ダイアン・キートン主演『ニューヨーク、眺めのいい部屋売ります』のリチャード・ロンクレイン監督が描く人生賛歌。長年連れ添った夫の浮気をきっかけに、ダンスを通して自分の人生を見つめ直す女性の姿を追う。『ヴェラ・ドレイク』で英国アカデミー賞主演女優賞を受賞したイメルダ・スタウントンが主演を務め、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』『否定と肯定』のティモシー・スポール、『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』のセリア・イムリーが脇を固める。ダンス教室の仲間には元プロダンサー20名が選ばれ、見事なダンスを披露。
 

あらすじ

イギリスのサリー州にある屋敷で暮らす専業主婦のサンドラは、35年寄り添った夫がナイトの称号を授与され、自身も“レディ”となって幸せの絶頂にいた。ところが夫と親友の浮気現場を目撃しまい、傷心で姉ビフが暮らしているロンドンの団地に転がり込む羽目に。金や名誉に関心がないビフは、気の置けない親友やダンス教室の仲間に囲まれ、自分の人生を謳歌していた。鬱ぎ込む妹を心配したビフは、サンドラを無理やりダンス教室に連れていく。かつてダンサーを目指したこともあるサンドラは、音楽とダンスに心を癒されていくが...
 

かんそう

この数年、往年の名優たちが出演するシニアが主役の作品が増えている気がする。人生100年時代だし、現役引退してからの年月も長いし、何なら死ぬまで現役だし。ということだろう。私も遺伝子上おそらく100歳ほどまで生きると思われ、まだ人生を折り返していないことにぞっとしたりする。だから観に行ったという訳ではないが、何故この作品を観ようと思ったかは忘れた。銀座シネスイッチに観に行ったところ、当たり前だがシニアに囲まれた。さて、本作の原題は『Finding Your Feet』であるが、環境に慣れる、自信がつくという意味だ。築き上げてきた人生の足元が揺らいだとき人はどうするか、という割合い凡庸なテーマであるが、よく練られたコミカルな脚本と名優たちの演技で、素敵な作品に仕上がっている。ダンスシーンは正直見どころではないが、次々に登場するダンスナンバーが楽しい。Nile Rodgers率いるChicの「Le Freak」が個人的最高潮。それぞれの人生を背負ってきた登場人物の描写も味わい深く、特に私はシスコンなので、姉妹の葛藤と絆に胸を締め付けられた。姉妹というのは歳を重ねれば重ねるほど、その存在がありがたく、良いものである。そして映画の中だけの話ではなく、人と言うのはいくつになっても恋愛するものであるらしいよ・・・。希望が持てるよね・・・。
 

【映画】判決、ふたつの希望

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-58
判決、ふたつの希望』(2017年 レバノン,フランス)

うんちく

クエンティン・タランティーノ監督のアシスタント・カメラマンという経歴を持つレバノン出身ジアド・ドゥエイリ監督が、自身の体験をもとに描いた社会派ドラマ。異なる背景を持つ二人の男の“ささいな口論”が、国家を揺るがす法廷劇にまで発展していくさまを描く。本国で爆発的な大ヒットを記録。各国の映画祭で絶賛され、レバノン映画史上初となる、第90回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートの快挙を果たした。主演のひとりカメル・エル・バシャは本作で第74回ベネチア国際映画祭最優秀男優賞を受賞。

あらすじ

レバノンの首都ベイルート。住宅の補修作業をしていたパレスチナ人の現場監督ヤーセルと、キリスト教徒のレバノン人男性トニーが、アパートの水漏れをめぐって口論となる。ヤーセルが漏らした言葉がトニーの猛烈な怒りを買い、ヤーセルもトニーが放った一言に深く尊厳を傷付けられ、二人の対立は法廷へと持ち込まれることに。この裁判をメディアが大々的に報じたことから政治問題に発展し、レバノン全土を揺るがす騒乱が引き起こされる事態となるが...

かんそう

トニーがヤーセルに向かって吐いた『お前らなんかシャロンに抹殺されればよかったんだ』というセリフは、ドゥエイリ監督自身が口論となった相手に言ってしまった言葉そうだ。すぐに謝り解決したそうだが、レバノンに暮らすパレスチナ人にとっては最大の侮辱である。1948年のイスラエル建国を受けて勃発した第一次中東戦争によって70万人以上のパレスチナ人が故郷と家を失い、ヨルダン川西岸地区、ガザ、ヨルダン、レバノンなど周辺諸国に逃れ、難民として困窮を極めた生活を強いられた。そしてレバノンにおいては、イスラエルレバノン侵攻とパレスチナ難民大量虐殺事件など、血で血を洗うような歴史が繰り返されてきた。1982年にイスラエルレバノン侵攻した当時の国防相シャロンだったのである。キリスト教レバノン人とイスラムレバノン人およびパレスチナ人の対立だったレバノン内戦は、シリアの介入やイスラエルの侵攻など外部勢力の影響で完全な混乱状態に陥り、今日のレバノンは主権が誰にあるのか分からないような様相を呈している。
本作では、人種、宗教が異なる二人の間におきた些細な諍いが負の連鎖を生み、様々な宗教的、政治的な思惑を取り込みながら肥大化し、本人たちを置き去りしてレバノン全土を騒乱へと巻き込んでいくさまが描かれる。それは長きに渡るレバノン内戦の縮図となっている。アラブ系キリスト教徒とパレスチナイスラム教徒、どちらにも肩入れしない絶妙で見事な脚本は、イスラム教家庭出身のジアド・ドゥエイリ監督と、キリスト教家庭出身の元妻ジョエル・トゥーマが、離婚手続きのさなかに共同執筆したそうだ。トニーとヤーセルどちらの妻も、頑なに自分の考えを貫き通そうとする夫に対して常に理性的である。法廷で熾烈な論戦を繰り広げる弁護士など、ドラマに組み込まれた人間模様も実に興味深い。主演を務めた二人の素晴らしい演技も相まって、社会派ドラマでありながら、強い求心力を持つエンターテイメント性も秀逸。中東の複雑な歴史を知らずとも、激しく心を揺さぶられることだろう。

 

【映画】タリーと私の秘密の時間

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-57
タリーと私の秘密の時間』(2017年 アメリカ)

うんちく

JUNO/ジュノ』『マイレージ、マイライフ』でアカデミー賞にノミネートされたジェイソン・ライトマンが、生活に追われ疲れ果ててしまった女性が、ベビーシッターとの交流を通して自分を取り戻していくさまを描いた人間ドラマ。徹底した役作りで知られ、『モンスター』でアカデミー賞を獲得したシャーリーズ・セロンが18キロ増量し、毎日に奮闘する女性を演じた。脚本は『ヤング≒アダルト』でもライトマン監督とタッグを組んだディアブロ・コディ。『ブレードランナー 2049』で鮮烈な印象を残したマッケンジー・デイヴィスが共演している。

あらすじ

もうじき3人目の子供が生まれるマーロは、大きなお腹を抱えながら、娘のサラと息子のジョナの世話や家事に追われる毎日を暮らしていた。息子のジョナは情緒が不安定で、マーロが校長に呼び出されることもしばしば。夫のドリューは優しいが、家のことは妻に任せきり。無事に女の子を出産したマーロだったが、もはや限界と心が折れてしまう。事業に成功して裕福な兄が、出産祝いにと手配してくれた夜間のベビーシッターを頼むことに。ところが22時半に現れたタリーは、年上のマーロにタメ口をきき、ファッションもメイクもイマドキの女の子。戸惑うマーロだったが、タリーの完璧な仕事振りによって、荒れ放題だった家はたちまち片付き、家族にも余裕が生まれていく。久しぶりに笑顔を取り戻したマーロはタリーに信頼を寄せ、二人は友情を育んでいくが…

かんそう

アトミック・ブロンド』で凄腕の女性諜報員としてサイボーグのような肉体美を披露していたシャーリーズ・セロン姉さんが、18キロも増量して産後の中年女性のたるんだ身体を創り上げ、子育てや家事に追われる日常を痛いほどリアルに怪演。と言っても、私は育児したことがないので想像の範疇だが、それでも気が滅入るほどリアルだった。もう、怪演としか言いようがない。夫のドリューは温厚で優しい男だけどワーカーホリックで家のことは妻に任せっぱなし、ときにデリカシーがないことを言ったりする。虚ろな瞳で、言い返す気力もないマーロ。そして出口のない海へと追い詰められていく。そこへタリーという若いナイトシッターがやってきて、マーロを絶望の海から救い出す物語だ。人に頼ることが出来ず、一人で頑張りすぎて憔悴していたマーロが、タリーの支えによって心身の余裕と、輝きを取り戻していく。マーロがタリーの存在に癒されているとき、ふと、観る者の心も癒されていることに気付く。シンディ・ローパーヴェルヴェット・アンダーグラウンドのナンバーが、ブルックリンへと走らせる車をタイムマシンに変え、不思議な浮遊感を味わう。そしてタリーがどこからやってきたのか判ったとき、散りばめられたパズルのピースが立体感を持って浮かび上がってくる演出と構成が、深い余韻を残すのだ。程良いさじ加減で余白を残し、それぞれがそれぞれの思いを抱けるようになっている。素敵な作品であった。ちなみに言い忘れそうだが、本件、ダサい邦題に物申す委員会の出動案件である。これはあかん。乳飲子抱えてる妻に、冷凍ピザか、ご馳走やな。って皮肉言う夫くらいあかん。
 

【映画】オーケストラ・クラス

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-56
オーケストラ・クラス』(2017年 フランス)

うんちく

フランスで2000人以上が体験し、マクロン仏大統領やメルケル独首相も現場に訪問するなど、大きな話題になった音楽教育プロジェクト「Démos(デモス)」。音楽に触れる機会の少ない子供たちに無料で楽器を贈呈し、プロの音楽家が音楽の技術と素晴しさを教えるこの情操教育プログラムに着想を得て描かれた人間ドラマ。挫折したバイオリニストが、初めて音楽に触れる子供達と演奏会を目指して交流するさまを活写する。『コーラス』など音楽映画の名作をプロデュースしてきたニコラ・モヴェルネが製作、これが長編2作目となるラシド・アミが監督を務めた。『マイ・ファミリー/遠い絆』などのカド・メラッド、『カミーユ、恋はふたたび』などのサミール・ゲスミらが出演している。

あらすじ

パリ19区。音楽教育プログラムの講師として小学校にやってきたバイオリニストのシモンは、楽器に触れたこともない6年生の生徒たちにバイオリンを指導することになる。音楽家として行き詰まりを感じているだけでなく、気難しく子供が苦手な彼は、やんちゃな子供たちに手を焼き自信喪失してしまう。しかし、クラスの中でひとり、バイオリンの才能と音楽への興味を持っているアーノルドとの出会いによって、シモンの心境に変化が起き始める。そして、アーノルドに影響された子供たちは次第に音楽の魅力に気付き始め、演奏することに夢中になっていくが...

かんそう

シモンが派遣された小学校がある19区について調べてみた。旅行者は特別な用事がない限り避けるべきだと書いてあった。中国系移民出身者と北アフリカ系移民出身者コミュニティ間の抗争があり、また不良集団のシマ争いも激しいそうだ。暴走族の動画を見たが、ハコ乗りするのは日本と一緒なのね。と、そのように治安の良くない地域の子どもたちである。やんちゃにも程がある、というくらい手に負えない悪ガキ揃いで思わずシモンに同情するのだが、ちょっとぽっちゃりアーノルドがかわいい。オーケストラ・クラスが気になって、窓の外に張り付いている様子に心を鷲掴みにされた・・・。もうちょっと丁寧に作り込んだほうが良かったのではと思うディティールやエピソードもあり、飛び石のような展開で駆け足感が否めない。そんなに上達するもんかいなとツッコミを入れたくなるアテレコにムムムとなったりもする。が、そもそも子どもが苦手で、個人的な問題を抱えているシモンが、それぞれの背景を持つ様々な人種の子どもたちと音楽を通じて交流するうちに、少しずつ自分を変化させ、心を解放していく。愛に溢れ、美しいパリの夕暮れが印象的に残る、素敵な映画であった。アーノルドに好意を寄せているらしいヤエルが素敵な女の子なんだけど、私も「君のことが好きだから」って軽やかに言える女の子に生まれたかった・・・。来世はそのように生まれてこよう・・・。

【映画】2重螺旋の恋人

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-55
2重螺旋の恋人』(2017年 フランス)

うんちく

『危険なプロット』『17歳』などで知られ、フランスを代表する鬼才フランソワ・オゾンが、4年の構想期間を経て放つ心理サスペンス。双子の精神分析医のポールとルイという、2人の男性と禁断の関係に溺れていく女性が迎える、驚くべき結末をスリリングに描き出す。主演は『17歳』で鮮烈な印象を残したマリーヌ・ヴァクト。同じくオゾン監督作品『クリミナル・ラヴァーズ』『しあわせの雨傘』に出演したジェレミー・レニエが双子の精神分析医を演じる。ほか、ジャクリーン・ビセットらが共演。

あらすじ

原因不明の腹痛に悩まされるクロエは、精神分析医ポールのカウンセリングを受けることによって痛みから解放される。やがて2人は恋に落ち、一緒に暮らし始めるが、そんなある日、クロエは街でポールそっくりの男を見かける。彼はポールの双子の兄で精神分析医のルイだった。ポールからルイの存在を聞かされていなかったクロエは疑惑にかられ、真相を確かめるため偽名を使ってルイのクリニックに通い始る。診察を受けるうちに、優しいポールとは違って傲慢で挑発的なルイに惹きつけられていくが...

かんそう

「『2重螺旋の恋人』は本質的には精神的な物語を描いていますが、演出は建築的な構成で、シンメトリー、 反映、幾何学的なものを作用させ、美術も脳が考えを作り上げるように、何かが作り上げられて行く印象を与えるようにしています。」オゾン監督かく語りき。原因不明の腹痛、双子の精神分析医、螺旋階段、鏡、どこか怪しげな隣人、猫のモチーフ、恋人の過去、クロエが勤める美術館のインスタレーションが彼女の不安定な心象を表したようにグロテスクに変化していくさま。幻想的で美しい映像、巧みな演出と構成。それらが絡み合い、極上のサスペンスを生み出していく。最後まで強く惹きつけられて目が離せない。妄想と現実の境目が分からないまま、散りばめられた謎が謎を呼び、すべてが曖昧なまま迷宮に置き去りにされてしまう。観る者を手玉に取りながら幻惑の袋小路に追い立てるべく、ほくそ笑みながら作ったんだろうなぁ。ああ、なんだか悔しい。まんまとフランソワおじさんの罠に嵌ってしまった。もう一度見直して、謎解きしたい。近年のオゾン作品の中でも卓越した傑作ではないだろうか。作家性と娯楽性を両立させる鬼才の手腕に酔い痴れた。そしてなんと言っても、オゾンの世界を体現してみせた主演のマリーヌ・ヴァクトが実に美しく、素晴らしかった。で、ジェレミー・レニエ扮するポールとルイ、メガネ男子フェチとしてはポール派。(どうでもいい

【映画】追想

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-54
追想』(2018年 イギリス)
 

うんちく

『ブルックリン』『レディ・バード』などで活躍するシアーシャ・ローナンを主演に迎え、新婚初夜を迎えた若い夫婦の結末を描く。シアーシャ出演作『つぐない』の原作者であり、ブッカー賞作家イアン・マキューアンの「初夜」を原作に、イアン自らが脚本を手掛けた。監督を務めたのは『ホロウ・クラウン』シリーズなどのドミニク・クック。『ベロニカとの記憶』『ダンケルク』などのビリー・ハウル、『奇跡の海』などのエミリー・ワトソンアンヌ=マリー・ダフサミュエル・ウェストといった実力派俳優たちが脇を固めた。
 

あらすじ

1962年、夏のロンドン。美しく野心的なバイオリニストのフローレンスは、歴史学者志望の若者エドワードと偶然出会い、一目で恋に落ちる。階級の格差や家庭の問題など、さまざまな困難を乗り越えて深い愛情で結ばれた2人は、やがて結婚を決意する。無事に結婚式を終え、新婚旅行先の風光明媚なドーセット州チェジル・ビーチで、幸せに満ち溢れた時間を過ごすはずだった。ところが、初夜を迎える興奮と緊張でぎこちない2人は、次第に気まずい雰囲気に包まれ、ついには激しい口論となってしまう...

 

かんそう

この映画の良かった点を挙げてみたいと思う。フィルムで撮影されたざらざらした質感の映像、特に2人が語り合う海岸の風景が軒並み美しかった。不器用な初恋の瑞々しい描写が微笑ましい。・・・。・・・。なんでこの映画作ったんや・・・。なんでこれを映画せなあかんかったんや・・・。言わんとしていることは分かるが、作品を構成しているピースのひとつひとつがうまく噛み合っておらず、肝心なことが伝わってこないため、いまいち説得力に欠ける。ドミニク監督が考える主なテーマは「1つは、自分にそぐわない時代に生まれること。もう1つは人生を決める致命的な決断のこと。イアンは常に、そういう遠い未来までにも影響を与える瞬間、人生を形作る出来事を作品のテーマにしている。自分がいつ生まれたかという偶然があり、それが人生をどう形作るかを語るからこそ、物語は面白くなる。フローレンスとエドワードも、ほんの数年後に生まれていたら、人生は一変していただろう」ってことなんだが、いや全然わかんねっす。と言いたくなるくらい、テーマが浮き彫りになっていないし、想像も掻き立てられない。という映画であった。わかる人にはわかるのだろうか。映像は美しかったので、女優が否応無しに美しかったら成立していたかもしれない。あ、女優が苦手だから感情移入しないのか。
 

【映画】オーシャンズ8

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-53
オーシャンズ8』(2018年 アメリカ)
 

うんちく

主演のジョージ・クルーニーほか豪華キャストの共演で大ヒットしたスティーブン・ソダーバーグ監督『オーシャンズ』シリーズを、オール女性キャストでリブートしたクライムエンタテインメント。ニューヨークで開催される世界最大のファッションイベントを舞台に強奪計画が繰り広げられる。監督は『ハンガー・ゲーム』のゲイリー・ロス。ソダーバーグはプロデューサーを務めている。『しあわせの隠れ場所』『ゼロ・グラビティ』などのサンドラ・ブロック、『ブルージャスミン』などのケイト・ブランシェット、『レ・ミゼラブル』などのアン・ハサウェイ、『アリス・イン・ワンダーランド』などのヘレナ・ボナム・カーター、歌手のリアーナ、ミンディ・カリング、サラ・ポールソン、アウクワフィナらが共演。

 

あらすじ

史上最強の犯罪チーム”オーシャンズ”を率いたダニー・オーシャンの妹、デビー・オーシャン。5年の刑期を終え、晴れて仮出所を果たした彼女は、刑務所の中で考え抜いた犯罪計画を実行に移すべく右腕のルーとともに動き出す。凄腕のハッカー、スリ師、盗品ディーラー、ファッションデザイナー、宝飾デザイナーたちに声を掛け、”オーシャンズ”を再結成。彼らが狙うのは、NYメトロポリタン美術館で開催される世界最大のファッションの祭典”メットガラ”でハリウッド女優が身につける1億5000万ドルの宝石。厳重なセキュリティの網をくぐり抜け、リアルタイムで全世界に配信される祭典のさなかに宝石を盗み出すことが出来るのか…?
 

かんそう

スティーブン・ソダーバーグが『オーシャンズ13』の公開直後に「ジョージ・クルーニーがダニー・オーシャン役を卒業したいと言っているので、『オーシャンズ14』が製作されることはないだろう」という発言をしている。その後、3作全てに出演したバーニー・マックの死を理由に続編の可能性を完全に否定した。という訳で、これまでの『オーシャンズ』シリーズと比べたくなる気持ちも分からなくもないが、監督もキャストも異なる本作は全くの別物であり、比べる対象でもない。だってソダーバーグじゃない。ゲイリー・ロスも素晴らしい監督だけど、ソダーバーグじゃない。これはオーシャンズだけどオーシャンズじゃない。華やかなるジョージ・クルーニーとブラピにいじられるマット・デイモンは出てこないし、何ならカメオ出演シーンすら全カットされたし、うまくいきすぎとかトリックやギミックが物足りないとか言わないの!復讐する相手はいたけど倒すべき敵役が不在で物足りないとか言わないの!目眩くような非日常の世界が、エレガントでゴージャスで痛快だったから、いいじゃない。スタイリッシュな映像でテンポよく鮮やかに女性の活躍(犯罪だけど)が描かれる爽快感は、私が同性だからそう感じるのだろうか?いずれにしても、エンターテイメントとして楽しんで観た。その事実だけで充分である。VOGUE編集長アナ・ウィンターのそっくりさん、すげーそっくりやん!と思ったら本人であった・・・。