銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】バーフバリ 王の凱旋

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-13
『バーフバリ 王の凱旋』(2017年 インド)
 

うんちく

インド映画史上歴代最高興収を達成、日本でも限定公開ながら異例のロングラン・ヒットを記録した『バーフバリ 伝説誕生』の続編にして完結編。古代インドの神話的叙事詩マハーバーラタ」をベースに、数奇な運命に導かれた伝説の英雄バーフバリの祖父・父・息子の三代にわたる愛と裏切りと復讐の壮大な物語を描く。監督・脚本のS・S・ラージャマウリや撮影のK・K・センティル・クマール、音楽のM・M・キーラヴァーニ、主演のプラバースをはじめ、ラーナー・ダッグバーティ、アヌシュカ・シェッティ、タマンナー、ナーサルなど、前作のスタッフやキャストが再結集した。
 

あらすじ

遥か遠い昔、インドに栄えたマヒシュマティ王国。蛮族カーラケーヤとの戦争に勝利を収め、国母シヴァガミから王位継承を託されたアマレンドラ・バーフバリ。自ら治めることになる国を視察する旅でクンタラ王国の姫デーヴァセーナと恋に落ちる。しかし王位継承争いに破れた従兄弟バラーラデーヴァは、バーフバリから王座を奪うべく策略を巡らせ、デーヴァセーナとの仲を裂き、バーフバリと生まれたばかりの息子の命まで奪おうとする。自らが伝説の王バーフバリの息子であることを知った若者シヴドゥは、マヘンドラ・バーフバリと名乗り、暴君バラーラデーヴァに戦いを挑む。
 

かんそう

空前絶後!常識破壊!人類史上最大の映画叙事詩!」という過剰な謳い文句も、「体調が良くなった」「肌の調子が良くなった」「観る薬膳」「観るスキンケア」「健康と引き換えに語彙力が下がる」「日本は実質インド」「バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!」というSNSでの評価も、すべて真実であった。正直最初はあまり興味を持っていなかったのだけど、周りのいい大人が揃いも揃ってバーフバリ中毒になっているのを眺めているうちに、もしかしたらこれを劇場で観ないことは人生における大いなる損失なのではないかと思うに至り、意を決して王を称えに行った。あれはバレンタインデーの夜であった。なるほど絶対的王者とはこのことか。宇宙を舞台にしている作品ですら、このスケール感を出せないであろう、自然の摂理や物理などもはや意味を持たない壮大なるケレン味。心身が浄化された。例えて言うなら、真言密教護摩焚きで読経を聞かされて邪気が祓われるような感覚である。これは劇場で体験しないと絶対に分からない。お願いだから出来るだけ大きいスクリーンの劇場で観てくださぁい!
 
 

【映画】アバウト・レイ 16歳の決断

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-12
『アバウト・レイ 16歳の決断』(2015年 アメリカ)
 

うんちく

16歳のトランスジェンダーのレイと、レイを見守る家族の姿を追ったヒューマンドラマ。監督は女優としても活躍してきたゲイビー・デラル。『20センチュリー・ウーマン』などのエル・ファニング、『21グラム』『インポッシブル』でアカデミー賞にノミネートされたナオミ・ワッツ、『デッドマン・ウォーキング』などの名優スーザン・サランドンら実力派が共演する。全米公開は2015年9月18日を予定されていたが公開延期となり、日本での劇場公開も中止となった経緯がある。製作当初よりアメリカ国内でのトランスジェンダーに関する認識が急激に変化し、時世に合わせて修正を加えていたためとも言われているが、真偽は不明である。

あらすじ

16歳になったトランスジェンダーのレイは、身も心も男性として生きていくことを決断し、ホルモン治療を希望する。医者から治療に関する資料を手渡された母親のマギーは、子供の性認知に理解を示しながらも動揺を隠せず、困惑する。一方、レズビアンであることをカミングアウトし、パートナーと暮らしている祖母のドリーですら、男性になろうとするレイのことをイマイチ理解できない。身体を鍛え、少しずつ“本当の自分”に近付こうと努力するレイの姿を見て意を決したマギーは、ホルモン治療の同意書にサインをもらうため、何年も没交渉だった元夫に会いに行くが...
 

かんそう

たしかにレイ16歳の決断をめぐる物語であるが、主題は母親マギーの葛藤である。性指向マイノリティの親と、性自認マイノリティの子供に挟まれ、とても複雑な立場にある彼女が主人公なのだ。原題は”3 GENERATION(三世代)”なのに、ちょっと的外れな邦題とプロモーションがミスリードを促してこの作品の本質を分からなくさせている。本来マギーにフォーカスして観るべきところを、レイを物語の中心に据えてしまうので、ピンボケが生じてしまい消化不良となる。配給会社、罪深い・・・!!が、映画そのものがやや表現不足である。母親マギーの過去にまつわるドラマをもう少し描いたほうがよかった。どこか言葉足らずなので、母親を筆頭に周りの大人が身勝手でいただけない、と思ってしまう。まだ16歳に後戻りのできない決断をさせでもよいのかという葛藤と、その重責に苦しむマギーの痛みに寄り添いたかった。それにしても、ナオミ・ワッツは素敵だなぁ。エル・ファニングも素晴らしかったけど、ナオミ・ワッツはいくつになってもかわいいのであった。
 

【映画】ローズの秘密の頁

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-11
 

うんちく

英国とアイルランドの文学を対象としたコスタ賞で「BOOK OF THE YEAR」に輝いたセバスチャン・バリーの同名小説を、『マイ・レフトフット』や『父の祈りを』で知られる巨匠ジム・シェリダンが映画化。40年にわたり精神病院に収容されていた老女の知られざる過去が明かされるヒューマン・ドラマ。『キャロル』『ドラゴン・タトゥーの女』などのルーニー・マーラ、イギリスを代表する大女優ヴァネッサ・レッドグレーヴのほか、『シング・ストリート 未来へのうた』などのジャック・レイナー、『きみがぼくを見つけた日』などのエリック・バナなど次世代の注目株が出演している。
 

あらすじ

アイルランド西部。精神科医のスティーヴン・グリーンは、取り壊しが決まった聖マラキ病院から転院する患者たちの再診に訪れる。自分が産んだ赤ん坊を殺した精神障害犯罪者として、40年ものあいだ収容されているローズ・F・クリアを診ることになるが、彼女は自分の名が「ローズ・マクナリティ」であると訴え、赤ん坊殺しの罪を否認し続けていた。大切にしている聖書のなかに何十年にもわたって密かに日記を書き綴っていたローズは、グリーン医師に半世紀前からの自分の人生を語り始め……
 

かんそう

アイルランドには英国による支配に抗ってきた長い長い歴史があり、英国からの独立派(カトリック)と共存派(プロテスタント)の対立の構図がある。ということに加え、カトリック(神父)とプロテスタント(牧師)の違いや教会が持つ絶対的権力などの宗教的背景、かつての精神病院が孕んできた問題などさまざまな予備知識がないと、この物語が腑に落ちないと思われる。歴史と宗教の闇、精神病院の悪しき慣習に翻弄され、その隙間に堕ちてしまった女性の半生だからだ。なので「アイルランド 歴史」ってググってから観に行くといいよ。と言っておいて何だが、映画として脇が甘すぎてもう、どこからツッコミを入れたらいいのか分からない。ルーニー・マーラヴァネッサ・レッドグレーヴになる違和感より、ご都合主義にも程があるだろうという短絡さである。が、アイルランドの美しい自然、美しいピアノの旋律を背景にして、ひとつの愛を貫くルーニー・マーラの美しさを堪能しているうちに、物申したい気持ちが相殺される驚くべき作品だ。その瞳に吸い寄せられた男たちが恋に狂ってしまうのも仕方のないことであるし、そりゃ都合よく落下傘で降りてくるし、40年間閉じ込めたのちに贖罪するよね。ルーニー・マーラ恐るべし。(そうじゃない
 

【映画】ゆれる人魚

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-10
 

うんちく

2016年サンダンス映画祭、ワールドシネマコンペティションドラマ部門審査員特別賞をはじめ世界各国の映画祭で数々の受賞を果たしたホラー・ファンタジー。アンデルセンの『人魚姫』をベースに、人間を捕食する人魚姉妹が少女から大人へと成長していくさまを描く。ポーランドの新鋭女性監督アグニェシュカ・スモチンスカ監督の長編デビュー作となる。出演は『アンナと過ごした4日間』『ソハの地下水道』のキンガ・プレイスのほか、『夜明けの祈り』などのマルタ・マズレク、『ワルシャワ、二つの顔を持つ男』などのミハリーナ・オルシャンスカら。
 

あらすじ

1980年代のポーランドワルシャワ。海から現れた美しい人魚の姉妹は、ストリップや音楽を楽しむナイトクラブにたどり着く。得意な歌やダンスを披露した姉妹は一躍スターとなるが、そんなある日、姉のシルバーがベーシストの青年と恋に落ちてしまう。初めての恋に浮かれるシルバーだったが、人魚にとって人間の男は“餌”でしかなく、妹のゴールデンは複雑な眼差しで姉を眺めていた。やがて2人は限界に達し、残虐で血なまぐさい行為へと駆り立てられていくが……
 

かんそう

共産主義下にあった1980年代のポーランドを舞台にした「大人のおとぎばなし」である。不安定な社会情勢を背景に退廃的なムードが漂っていた当時のポーランドでは、酒と音楽と踊りを愉しむ大人の社交場「ダンシング・レストラン」が盛んだったそうだ。ナイトクラブのバックヤードで育ったスモチンスカ監督は、同じような境遇のヴロンスキ姉妹(ポーランドのインディー・ミュージックシーンに君臨する)の人生からこの作品を着想しており、物語を彩るどこか懐かしいサウンドはヴロンスキ姉妹の手によるものだ。奇妙奇天烈、摩訶不思議なミュージカル調に最後まで気持ちがついていけるのか不安だったが、杞憂であった。彼らが子供時代に体験した旧東欧文化への深い郷愁が込められており、キッチェでシュールな音楽、衣装、演出のすべてがロマンチックに昇華している。何かを喪いながら少女から大人へと成長し、恋の幸福感に包まれて浮かべる甘美の表情が、切なく胸に迫る。しかし人魚は東西を問わず、不吉の象徴だ。アンデルセンの人魚姫でもどの言い伝えでも、幸福な結末は迎えない。ああ、恋とはこういうものであったかと、海に還っていく人魚の姉妹を見送ったのであった・・・。
 

【映画】RAW~少女のめざめ~

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-09
『RAW~少女のめざめ~』(2016年 フランス,ベルギー)
 

うんちく

2016年のカンヌ国際映画祭批評家週間でワールドプレミア上映され、その後各国の映画祭で話題となったカニバル映画。人が人を喰らう人類史上最大のタブー「カニバリズム」をテーマに、ベジタリアンの少女が偶然肉を食べたことで隠された自分の本性に目覚めるさまを描く。メガホンを取ったのはフランスの新鋭ジュリア・デュクルノー。これが長編監督デビュー作となる。デュクルノー監督の短編映画にも出演したギャランス・マリリエが主演を務める。
 

あらすじ

厳格なべジタリアンの家庭に育った16歳のジュスティーヌ。両親や姉と同じ獣医科大学に入学するが、初日から上級生による新入生歓迎のハードコアな儀式としごきが始まる。地獄のような日々が続いていたある日、新入生の通過儀礼として全身に血を浴びせかけられ、さらにうさぎの生の腎臓を強制的に食べさせられたジュスティーヌは、体に異変を感じるようになる。その日を境に、自分の変化に戸惑うジャスティーヌだったが、次第に自分の内に秘めた恐ろしい本性と秘密が露わになり...
 

かんそう

ううむ。何故観に行ったと聞かれると返答に困るが、話題になるからには何かしらの魅力があるのだろうと。この目で確かめに行っただけである。もっと官能的で叙情詩的な作品なのかと思いきや、主演の女の子が子供っぽくて中学生みたい。なので、肉食への目覚めと性の目覚めを掛け合わされても、絵面にエロスを感じないのでイマイチ説得力に欠ける。なかなかグロテスクな作品だが、そのカニバリズムに美学や哲学が存在しないので、ただグロテスクなだけである。エキセントリックと言えば、エキセントリックな映像であるが、それも若干食傷気味である。と、そう思わせるほど、すべてを無に帰すまさかのオチが、陳腐でお粗末なのだ・・・。いいところもあったけど、もう思い出せない。楽しい思い出がいっぱいあったはずなのに、最後の最後で裏切られてひどい別れ方をした男のようだ。
 

【映画】スリービルボード

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-08
『スリービルボード』(2017年 イギリス,アメリカ)
 

うんちく

何者かに娘を殺された主婦が、犯人を逮捕できない警察への抗議のため広告看板を設置したことで予期せぬ事態が起こっていくクライム・サスペンス。監督・脚本は、劇作家としてその才能を知られ、映画界でもアカデミー賞短編賞を獲得しているイギリス出身のマーティン・マクドナー。『ファーゴ』で主演女優賞を獲得したフランシス・マクドーマンドが主演を務め、『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』のウディ・ハレルソン、『コンフェッション』でベルリン国際映画祭男優賞を受賞したサム・ロックウェル、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のルーカス・ヘッジズが脇を固める。ヴェネチア国際映画祭脚本賞トロント国際映画祭観客賞、ゴールデン・グローブでは作品賞ほか4部門に輝き、アカデミー賞でも受賞が期待されている。
 

あらすじ

アメリカ・ミズーリ州の田舎町エビング。さびれた道路に立ち並ぶ3枚の広告看板に、ある日突然、地元警察を批判するメッセージが現れる。広告主は、7カ月前に何者かに娘を殺されたミルドレッド・ヘイズ。一向に進展しない捜査状況に腹を立て、エビング広告社のレッド・ウェルビーと一年間の契約を交わして出した広告だった。町の人々に敬愛されているウィロビー署長を批判したことで、様々な嫌がらせや脅しに曝されるミルドレッドだったが、圧力に屈することなく逆襲に出る。そして事態は思わぬ方向に転がり始め……
 

かんそう

心の整理が追いつかない。あまりにもたくさんの思いが押し寄せてきて、心の奥をぎゅっと掴まれたままだ。「義人なし、一人だになし」という聖句の通り、完璧な善人は一人も出てこない。皆どこかが欠けていて、不完全で粗暴だったりする。誰にも共感しないのに、感情移入するから不思議だ。フランシス・マクドーマンドを筆頭に、その複雑な人間性を演じきった俳優陣が素晴らしい。巧みな構成ながら、無駄に煽ることをしない抑圧気味の演出で淡々と描かれる。脚本が非常によく練られており、シンプルなようで、何本もの糸が緻密に編み込まれた予測不能のストーリーに面食らう。”偶然”が何層にも重なって物語を紡ぎ出し、怒りと憎しみの果て、後悔と絶望を乗り越えた向こうに、救済と愛を見つける。ヒリヒリとした緊張感のなかにシニカルな笑いを織り込み、生きることの悲哀と可笑しみを、同時に映し出す。名匠カーター・バーウェルによるスコアと素晴らしい音楽、どこかやわらかな手触りの映像も美しい。愛おしい。あまりも愛おしい。きっと私は生涯、この映画のことを思い出すだろう。
 

【映画】デトロイト

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 劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-07

デトロイト』(2017年 アメリカ)

 

うんちく

女性初のアカデミー賞監督賞を受賞した『ハート・ロッカー』や『ゼロ・ダーク・サーティ』で知られるキャスリン・ビグロー監督が、米史上最大級の暴動「デトロイト暴動」の最中に起こった“戦慄の一夜”を描く社会派サスペンス。出演は『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』、『パシフィック・リム:アップライジング』などのジョン・ボイエガ。『レヴェナント:蘇えりし者』などのウィル・ポールター、『アベンジャーズ』シリーズのアンソニー・マッキー、『トランスフォーマー/ロストエイジ』ジャック・レイナーら共演している。脚本は『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』も手がけたマーク・ボール
 

あらすじ

1967年7月、アメリカ・ミシガン州デトロイトヴェトナム戦争からの帰還を祝っていた酒場を摘発した警察への反発をきっかけに大規模な暴動が発生し、街が騒乱状態となる。暴動発生から3日目の夜、若い黒人客たちで賑わうアルジェ・モーテルから銃声が鳴り響き、捜査のためにデトロイト警察、ミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元警備隊がモーテルの別館に殺到。そして数人の白人警官が捜査手順を無視し、偶然モーテルに居合わせた若者たちに対して、自白を強要する暴力的な尋問を開始し……
 

かんそう

つらかった。絶対に観るべき作品であることは間違いないが、こんなにしんどい映画は久しぶりかもしれない。デトロイト暴動のカオスを臨場感を持って描き、理不尽な差別と暴力に曝される黒人たちの、怒り、悲しみ、恐怖を、あまりにも強烈に、生々しく体感する。演じるほうも、非常にしんどい仕事だったのではないかと察するほどだ。レイシストの警官役にアメリカ生まれではない俳優が多いのは、そういう理由だからかもしれないと、勝手に憶測する。白人俳優がファニーフェイス揃いだったのに比べて、黒人俳優がやたらとハンサム揃いだった。そんななかでも、ジョン・ボイエガの存在感が作品に重厚感をもたらしており、と思ったら主演の扱いかよ!と驚くくらいには主演としての存在感が薄かった。興行的に主演に据えたってことか。感想がどんどんどうでもいい方向に向かっていくが、1960年代のアメリカと言えば、アフリカ系アメリカ人による公民権運が最も盛んだった時期だ。1964年に公民権法が制定されるも、一部の白人による有色人種への人種差別感情は収まることなく、本作で描かれている「アルジェ・モーテル殺人事件」は1967年の出来事だ。そして、白人警察官が丸腰の黒人を射殺するような事件は現代でも発生しており、その悪夢はいまなお続いている。やりきれない思いで満たされるが、絶望のなかに残るほんの少しの救済と、教会に響き渡るラリーの歌声に心を助けられる。モータウンレコードを産んだデトロイトの、闘いの歴史。映画史に残る傑作。