銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】アバウト・レイ 16歳の決断

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-12
『アバウト・レイ 16歳の決断』(2015年 アメリカ)
 

うんちく

16歳のトランスジェンダーのレイと、レイを見守る家族の姿を追ったヒューマンドラマ。監督は女優としても活躍してきたゲイビー・デラル。『20センチュリー・ウーマン』などのエル・ファニング、『21グラム』『インポッシブル』でアカデミー賞にノミネートされたナオミ・ワッツ、『デッドマン・ウォーキング』などの名優スーザン・サランドンら実力派が共演する。全米公開は2015年9月18日を予定されていたが公開延期となり、日本での劇場公開も中止となった経緯がある。製作当初よりアメリカ国内でのトランスジェンダーに関する認識が急激に変化し、時世に合わせて修正を加えていたためとも言われているが、真偽は不明である。

あらすじ

16歳になったトランスジェンダーのレイは、身も心も男性として生きていくことを決断し、ホルモン治療を希望する。医者から治療に関する資料を手渡された母親のマギーは、子供の性認知に理解を示しながらも動揺を隠せず、困惑する。一方、レズビアンであることをカミングアウトし、パートナーと暮らしている祖母のドリーですら、男性になろうとするレイのことをイマイチ理解できない。身体を鍛え、少しずつ“本当の自分”に近付こうと努力するレイの姿を見て意を決したマギーは、ホルモン治療の同意書にサインをもらうため、何年も没交渉だった元夫に会いに行くが...
 

かんそう

たしかにレイ16歳の決断をめぐる物語であるが、主題は母親マギーの葛藤である。性指向マイノリティの親と、性自認マイノリティの子供に挟まれ、とても複雑な立場にある彼女が主人公なのだ。原題は”3 GENERATION(三世代)”なのに、ちょっと的外れな邦題とプロモーションがミスリードを促してこの作品の本質を分からなくさせている。本来マギーにフォーカスして観るべきところを、レイを物語の中心に据えてしまうので、ピンボケが生じてしまい消化不良となる。配給会社、罪深い・・・!!が、映画そのものがやや表現不足である。母親マギーの過去にまつわるドラマをもう少し描いたほうがよかった。どこか言葉足らずなので、母親を筆頭に周りの大人が身勝手でいただけない、と思ってしまう。まだ16歳に後戻りのできない決断をさせでもよいのかという葛藤と、その重責に苦しむマギーの痛みに寄り添いたかった。それにしても、ナオミ・ワッツは素敵だなぁ。エル・ファニングも素晴らしかったけど、ナオミ・ワッツはいくつになってもかわいいのであった。