銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】パティ・ケイク$

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-31
パティ・ケイク$』(2017年 アメリカ)
 

うんちく

サンダンス映画祭を皮切りに、各国の映画祭で絶賛された音楽青春ドラマ。ラップで成功しスターになることを夢見る女性が、困難な状況を抜け出そうと奮闘する姿を描く。『シークレット・デイ』のダニエル・マクドナルドが主演を務め、『レイジング・ブル』のキャシー・モリアーティ、コメディアンで女優のブリジット・エヴァレットらが共演。本作が初長編監督作となる新鋭ジェレミー・ジャスパーが脚本のほか、すべての劇中音楽を手掛けた。
 

あらすじ

元ロック歌手で酒浸りの母親、難病を抱え車椅子の祖母と3人で暮らす23歳のパティ。いつかは憧れのラッパーO-Zのように名声を手に入れ、掃き溜めのような地元ニュージャージーから抜け出すことを夢見ているが、金も仕事もなく、太めの体を嘲笑される毎日だった。そんなある日、駐車場で行われていたフリースタイルのラップバトルで因縁の相手を渾身のライムで打ち負かす。諦めかけていた夢に再び挑戦する勇気を手に入れたパティのもとに、正式なオーディションに出場するチャンスが舞い込み...
 

かんそう

パティの家族は、いわゆるホワイト・トラッシュ(あるいはプア・ホワイト、白人の低所得者層)の典型だ。学歴も教養もなく、ハイカロリーなジャンクフードをビールやコーラで流し込むので、肥満も多い。しばしば彼らは映画の題材となるが、もし、映画に出てくるトレーラーハウスがかっこいいと思っている人がいるとしたら、アメリカでは低所得者が”止むを得ず”選んでいるだけだ。日本のテレビなどでその存在が報道されることは少ない。もちろん「ホワイト・トラッシュ(白人のクズ)」なんて蔑称だし、日本で言うと「マイルドヤンキー」以下の「DQN」なので、メディアでそのように呼ばれることはないが、ドナルド・トランプの支持層である彼らの実態をもう少し知る機会があってもいい。と、話が逸れたが、なんらかの才能を武器に貧困から抜け出そうとする若者の青春は、これまでに散々使い古されたテーマである。この作品も定番のプロットをお行儀よく踏襲しているだけだし、その手段がラップとなると女版「8mile」でしかない。そして美しいものをこよなく愛する私は、冒頭、ダブダブに太った品のない母娘を2時間近く眺めることに不安を覚えた。が、いつの間にかひたむき頑張るパティを応援していたし、黒い王子様とのロマンスに胸キュンしたし、終始自分もクラブにいるような没入感でビートに身を委ねていた・・・。正直に自己申告すると、クライマックスでまんまと泣きました。ええ、泣きましたとも。PBNJ最高。ピーナッツバター食べたい。