銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-36
 

うんちく

ラースと、その彼女』のクレイグ・ギレスビー監督が、「ナンシー・ケリガン襲撃事件」などのスキャンダルを起こしたフィギュアスケータートーニャ・ハーディングの半生を、独自の切り口で描く。『スーサイド・スクワッド』などのマーゴット・ロビーが4ヶ月に渡るスケート特訓を経てトーニャを演じ、本作のプロデューサーも務めている。母ラヴォナ役には、エミー賞を7度受賞している演技派のアリソン・ジャネイが挑み、第90回アカデミー賞助演女優賞および第75回ゴールデン・グローブ助演女優賞に輝いている。『キャプテン・アメリカ』シリーズのセバスチャン・スタン、『gifted/ギフテッド』のマッケナ・グレイスらが共演。アカデミー賞編集、ゴールデン・グローブ賞作品賞など数々の賞にノミネートされた。
 

あらすじ

貧しい家庭で、母親による暴力的な支配のもとで育てられたトーニャ・ハーディングフィギュアスケートの才能に恵まれた彼女は、努力を重ねアメリカ人初のトリプルアクセルを成功させ、1992年のアルベールビル、1994年のリレハンメルオリンピックの代表選手となる。しかし、元夫のジェフ・ギルーリーの友人がトーニャのライバルだったナンシー・ケリガンを襲撃したことで、彼女のスケート人生は一変。転落が始まるが……
 

かんそう

ここ最近、ホワイト・トラッシュ(アメリカ合衆国における白人の低所得者層を指す)が登場する映画を立て続けに観ている。史上最もスキャンダラスな事件を起こしたフィギュアスケータートーニャ・ハーディングも、被害者であるナンシー・ケリガンも、貧困から逃れる手段としてスケートに賭けていた。事件当時、ニュースで繰り返し流された”Why!?”と叫び続けるケリガンの映像を覚えている。子供ながらに、とても馬鹿げていて不思議な出来事だと思っていた。貧困家庭で暴力と罵詈雑言にまみれて育ち、無知蒙昧で品性の欠片もないトーニャは、公式試合でトリプルアクセルを成功させた史上2人目の女子選手でありがながら、エレガントさや芸術的な要素に欠けるため評価されない。劇中の台詞にも出てくるが、本当に実話がベースなのだろうかと疑いたくなるほどバカとクズしか出てこない。クレイグ・ギレスピー監督と脚本のスティーヴン・ロジャースが映画の冒頭で、この映画はハーディングと関係者の証言を元に(嘘か誠かはさておき)作ったもので、まるで馬鹿げているが彼らがそう言っているのだ、と言い添えている。まんまと、こんな馬鹿げたことがあるものかと呆気に取られた。モキュメンタリーの手法で物語が展開するが、躍動感ある魅力的な音楽と映像、ブラックユーモアに彩られ、マーゴット・ロビーアリソン・ジャネイの怪演も相俟って、ひとときも目が離せない。兎に角も秀逸である。