銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ふたりのマエストロ

映画日誌’23-37:ふたりのマエストロ

 

introduction:

オーケストラ指揮者の父子がある手違いをきっかけに、確執を乗り越えて向かい合う様を描いヒューマンドラマ。監督は俳優としても活躍するブリュノ・シッシュ。『エール!』『コーダ あいのうた』のフィリップ・ルスレらが製作に参加。『ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール』で実生活でも夫婦であるシャルロットと共演・監督を果たしたイヴァン・アタルが主演を務め、ピエール・アルディティやミュウ=ミュウなどフランスを代表する名優たちが脇を固める。(2022年 フランス)

 

story:

パリの華やかなクラシック界でそれぞれ指揮者として活躍する父と息子。息子のドニはフランス最高峰の音楽賞であるヴィクトワール賞を受賞し、今や飛ぶ鳥を落とす勢い。ある日、父フランソワのもとに一本の電話がかかってくる。それはなんと世界最高峰のミラノ・スカラ座音楽監督就任の依頼だった。父の成功を素直に喜べないドニだったが、翌日スカラ座の総長に呼び出され、父への依頼は誤りで、自分への依頼だったことを告げられる。

 

review:

主演のイヴァン・アタルって聞き覚えがあったんだが、あ、シャルロット・ゲンスブールの夫の人ね。夫婦共演した『ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール』ではいい青年のイメージだったアタルさん、あれから20年。すっかりくたびれたおじさんになり、若い恋人にじじい呼ばわりされる始末。

 

さて本作、予告編とタイトルでストーリー展開が読めるので、この親子関係をどうやって着地させるんだろうと思いながら観ていたし、そこがキモなんじゃないかと思うんだが。なんとその部分がすっぽりと抜け落ちてラストシーンそしてエンディングなのである。え、ご自由にご想像ください系?それとも文脈を読めとか・・・?ていうかラストシーンのデュマール親子、動きがドリフのコントみたいで笑っちゃったしね・・・。

 

父と息子の確執が起きたそもそもの理由はともかく、確執が深くなっていった過程や父フランソワの息子ドニに対する本当の心情が描かれないので納得感ゼロ。おとぼけた表情の3代目の孫息子(主人公からすると息子)マチューがなかなかいいキャラで、作品にとってもこの家族にとっても彼の存在が救いなんだけど、だったらもうちょっとキーパーソンにすればよかったのでは。

 

ついでにドニの恋人ヴィルジニが難聴のバイオリニストっていう設定も必然性が分からない。イスラエル映画のリメイクらしいので、そこから引きずってきてるのかも。小澤征爾って本当に世界のマエストロなんだなってのはわかったが、スクリーンを彩るクラシック音楽の選曲もベタ。なんとなくドラマとしていい感じにまとまっているので退屈はしないけど、なんのひねりもない凡庸。マチューがかわいいのだけが救い。

 

trailer: