銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ドリーム

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’17-59
『ドリーム』(2016年 アメリカ)
 

うんちく

1960年代初頭、アメリカが大国の威信をかけて推進していた有人宇宙飛行を目指す“マーキュリー計画”において、キャサリン・G・ジョンソン、ドロシー・ヴォーン、メアリー・ジャクソンという実在の黒人女性数学者たちが多大な貢献を成し遂げた史実を描き出す。主演は『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』などのタラジ・P・ヘンソン、『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』などのオクタヴィア・スペンサー、『ムーンライト』などのジャネール・モネイケビン・コスナーマハーシャラ・アリキルスティン・ダンストらが脇を固める。『ヴィンセントが教えてくれたこと』などのセオドア・メルフィが監督を務め、ファレル・ウィリアムスが製作と音楽を担当した。公開後、全米興収チャート1位に輝き、11週連続トップテン入りのロングラン・ヒットを達成。アカデミー賞では作品賞、脚色賞、助演女優賞の3部門ノミネートされた。
 

あらすじ

東西冷戦下、アメリカとソ連が熾烈な宇宙開発競争を繰り広げている1961年。ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所には、ロケットの打ち上げに必要不可欠な計算や解析に取り組む、優秀な頭脳を持つ黒人女性たちのグループがあった。そのうちのひとり、キャサリンは数学の天才的な実力を認められ、黒人女性として初めて宇宙特別研究本部に配属されるが、白人男性しかいない職場で冷遇される。同僚のドロシーとメアリーも、それぞれ理不尽な理由でキャリアアップを阻まれていた。それでも3人は、仕事と家庭を両立させながらひたむきに夢を追い続け、やがて国家の威信をかけたNASAの歴史的な偉業に携わっていく。
 

かんそう

残念な邦題とサブタイトルで炎上するという残念な理由で、公開前に認知度がうなぎのぼりだった本作。マーキュリー計画なのにアポロ計画とは、作り手にも観客にも極めて失礼だ。原題は"Hidden figures”「隠された人物」、”Figures”が持つ「数字」「人物」という2つの意味をかけたものである。それが『ドリーム』とはこれいかにと思いつつ公開を楽しみに待ち、そしてついに観た。素直に感動した。東西冷戦下、アフリカ系アメリカ人公民権運動全盛期の1960年代。人種分離政策がまかり通り、有色人種への根強い差別が当たり前にあった世相の描写も鮮明である。加えて女性であることが今よりもずっとハンディキャップであった不遇の時代にあって、逆境に屈せず、誇り高く、力強く運命を切り開いていく彼女たちの姿はエキサイティングで痛快。そしてその上、共に描かれる家族愛、友情、ロマンスにいちいち泣かされるのだ。テンポ良く、ドラマチックに展開していくストーリーと演出構成が秀逸で、ひとつひとつのセリフが精彩を放つ脚本も素晴らしい。非常によく出来たエンターテイメント作品であり、観る者の胸を打つ清々しい感動作であった。