銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ブルーム・オブ・イエスタディ

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’17-58
 

うんちく

4分間のピアニスト』のクリス・クラウス監督が、ホロコーストの加害者と被害者の孫世代が織り成す心の交流を描いた恋愛映画。監督自身が家族にダークな過去があると知り、大変なショックを受けて丹念にホロコーストの調査を重ねるうちに、映画のアイデアが浮かび制作を決意した。出演は『パーソナル・ショッパー』などのラース・アイディンガー、『午後8時の訪問者』などのアデル・エネルら。第29回東京国際映画祭コンペティション部門で東京グランプリを受賞。
 

あらすじ

ホロコースト研究所に勤めるトトは、ナチス親衛隊の大佐だった祖父を持ち、一族の罪に向き合うためホロコーストの研究に人生を捧げている。真剣に向き合う余り情緒不安定で、2年を費やし企画した“アウシュヴィッツ会議”のリーダーから外されてしまう。そんな折、フランスからやってきたインターンのザジの面倒を見ることになってしまうが、彼女の祖母はホロコーストで命を奪われたナチスの犠牲者であった。トトは破天荒で分裂気味のザジに手を焼き、互いに反発し合うが、行動を共にするうちに衝撃的な事実が明らかとなり...
 

かんそう

ホロコーストの加害者と被害者の孫が、ホロコースト研究を通じて知り合い、その心の苦しみを乗り越えて惹かれ合う。終戦後の西ドイツにおいて、ナチズムそしてホロコーストはしばしば、性の抑圧と解放になぞらえて語られてきた(らしい)。本作でも終始、メタファーとして「性」に関する描写が出現する。その題材と手法は斬新で興味深いが、私はいまいち好きになれなかった。映画の作り方がやや雑、というのもあるが、一番の理由はパグ犬「ガンジー」のこと。ザジによる、ガンジーへの衝動的な仕打ちがあまりにも酷いもので笑えないのだ。エログロやナンセンスに耐性があり許容範囲は広いほうだが、そんな私でもまったく受け入れ難い。ブラックジョークにも超えてはいけないボーダーラインはある。ガンジーが可愛らしければ可愛らしいほど、もやっとしたものが心に残ってしまい、映画そのものが許し難いものになってしまう。その点、とても残念であった。