銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ウィスキーと2人の花嫁

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-16
『ウィスキーと2人の花嫁』(2016年 イギリス)
 

うんちく

英国人作家コンプトン・マッケンジーが1947年に発表した小説「Whisky Galore」を原作に、第二次世界大戦中に実際に起こった貨物船SSポリティシャン号の座礁事件にまつわる騒動を描いた人間ドラマ。1949年に初映画化されており、少年時代からオリジナル版のリメイクを夢見ていた1人のプロデューサーの熱意により10年の歳月をかけて本作が製作された。メガホンを取ったのは、ベルリン国際映画祭をはじめ世界の国際映画祭で多くの受賞歴を誇る名監督ギリーズ・マッキノン。出演は『ラブ・アクチュアリー』の名優グレゴール・フィッシャー、『ランズエンド -闇の孤島-』のナオミ・バトリック、『17歳の肖像』のエリー・ケンドリック、『ハリー・ポッター』シリーズのショーン・ビガースタッフ、『ダンケルク』のケヴィン・ガスリー。
 

あらすじ

ナチスによるロンドン空爆が激しさを増す第二次世界大戦中のスコットランドのトディー島。戦況の悪化によって、人々にとって”命の水”であるウイスキーの配給が止まり、皆無気力に暮らしていた。島の郵便局長ジョセフの2人の娘はそれぞれ恋人との結婚を望んでいたが、周囲から「ウィスキー無しでは結婚式はできない」と猛反対されてしまう。そんなある日、島の近くでNY行きの貨物船が座礁。沈没寸前の船内に5万ケース、約26万本のウイスキーが積まれていることを知った島民たちは、密かに”神様からの贈り物”を救出しようと試みるが......
 

かんそう

第二次世界大戦中の1941年2月、輸出向けのウイスキーを積んでイギリスのリバプールからアメリカに向けて航行していたSSポリティシャン号が、スコットランドのエリスケイ島の北にある狭い海峡で濃霧のため座礁。沈没寸前の貨物船を目にした島民たちは、船長と乗組員の救助の後、可能なかぎりのウイスキーを船から陸へ持ち出した。やがて、ウイスキーを押収するべく関税消費庁が島へやって来ることが分かった島民たちは、慌てて島の色々なところにウイスキーを隠した。そのため現在でも当時のボトルが発見されることがあるという。という、なんともほっこりするエピドードがこの物語の原点であるが、船内には2千万ポンドに当たるジャマイカポンドが積まれおり、この金額は当時のジャマイカにおける流通額を超えていたという。万が一、ヒトラーが英国に侵攻してきたら王室をジャマイカへ避難させる計画があったらしいのだ。そんな時代背景を透かしつつ、17世紀当時の面影を残す歴史的建造物や島の豊かな自然など、スコットランドの美しい風景を舞台に繰り広げられるユーモラスな人間模様に心が温まる。かわいい娘を手放したくないジョセフ、民間人ながら島を守る英雄気取りのワゲット大尉、なにがあろうと安息日を頑なに守る純朴な島民たち。個性豊かな面々と、美しいスコットランド音楽に彩られ、ウィスキーにまつわる物語が紡がれていく。美味しいウィスキー飲みたい!とただただ強く思った、なんとも幸福な、素敵な映画であった・・・。