銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】運命は踊る

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-64
運命は踊る』(2017年 イスラエル,ドイツ,フランス,スイス)

うんちく

自身の戦争体験を基に作り上げたデビュー作『レバノン』でヴェネチア国際映画祭グランプリ(金獅子賞)を受賞したイスラエルサミュエル・マオズ監督が、自らの実体験をベースに運命の不条理や人生のうありせなさを描いたドラマ。『オオカミは嘘をつく』などのリオル・アシュケナージ、『ジェリーフィッシュ』などのサラ・アドラーらが出演。アカデミー賞外国語映画賞イスラエル代表に選ばれ、ヴェネチア国際映画祭審査員グランプリ(銀獅子賞)を受賞した。

あらすじ

テルアビブのアパートで暮らすミハエルとダフナ夫妻は、自宅に訪ねてきた軍の役人から、息子ヨナタンの戦死を知らされる。ダフナは悲しみと衝撃で気を失い、ミハエルは平静を装いながらも役人の対応に苛立ちを募らせる。やがて戦死の報が誤りであったことが判明し、ダフナは安堵で胸を撫で下ろすも、ミハエルは怒りを爆発させて息子を帰宅させるよう役人に詰め寄る。その頃、ラクダがのんびりと横切っていく前哨基地の検問所にいたヨナタンは、戦場でありながらどこか間延びした時間を仲間の兵士たちとともに過ごしていたが...

かんそう

文化や宗教の違いだろうか、残念ながら、私にはこの作品の良さが理解できなかった。運命の不条理を描いているが、その深いテーマを語るには、いささか説得力が足りない。象徴のように何度も登場する、1910年代初頭にアメリカで流行した「FOXTROT(フォックストロット)」のステップは、「前前右、後後左」という足捌きで最初と同じ場所に戻ってくる。巡る運命の輪から逃れることは出来ないのだ、と言いたいのか、そうか・・・。そんなもんわかってやるかと言う気持ちになりつつ、何が一番アレルギーかって、構図やカメラワークや演出が、ほら芸術的でしょ、って押し付けがましくてあざといのである・・・。このはりぼて感は何だろう。真に芸術性が高い巨匠との違いって何だろうなぁ。と、暫し考えて、はたと気がついた。映画への愛より、自分の芸術性らしきものや哲学らしきもの、知性のようなものを映し出したい、という監督の自己顕示欲が勝っているのだと思う。だからどこか俗物的で、それは芸術に昇華されず、押しつけがましいのだ。ただ、才能を測る物差しはいくつもあるはずなので、今回たまたま私との相性が悪かったということで・・・。