銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ヴィクトリア女王 最期の秘密

 劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’19-06
ヴィクトリア女王 最期の秘密』(2017年 イギリス,アメリカ)
 

うんちく

名優ジュディ・デンチが、1997年の『Queen Victoria 至上の恋』に続き2度目のヴィクトリア女王を演じ、63年にわたり君臨した女王が晩年育んだインド人青年との交流を描いた伝記ドラマ。『クィーン』などのスティーヴン・フリアーズが監督を務め、脚本を『リトル・ダンサー』のリー・ホールが手掛けた。『きっと、うまくいく』などのアリ・ファザルが共演。デンチは本作により第75回 ゴールデングローブ賞の主演女優賞にノミネートされた。

 

あらすじ

1887年、ヴィクトリア女王即位50周年記念式典で記念金貨の献上役に選ばれた若者アブドゥルは、英領インドからイギリスへとやってくる。最愛の夫と従僕を亡くした孤独から長年心を閉ざしていた女王だったが、王室のしきたりに臆することなく、まっすぐに微笑みかけてくるアブドゥルに対して心を許していくようになる。二人の間には身分や年齢を超えた深い絆が芽生えていくが、それを快く思わない周囲の人々による猛反対により、やがて英国王室を揺るが騒動へと発展してしまう。
 

かんそう

ヴィクトリアといえば、わずか18歳で即位し、その後64年間に渡って君臨したイギリスの女王、初代インド女帝である。ヴィクトリア期は大英帝国全盛期であり、イギリスが最も輝かしかった時代。いわばヴィクトリア女王は世界一の権力者だったのである。数百人ものエキストラによって再現された壮観の王宮儀式、細部にまでこだわった華やかな衣装や装飾品に彩られ、ヴィクトリア女王が過ごした当時の生活が映し出されるなか、ヴィクトリア女王とインド人青年の交流と絆が、軽やかなタッチでユーモラスに描かれる。息子エドワード7世の手により歴史から消されたとされ、21世紀に入ってから発見されたアブドゥル・カリーム本人の記録に基づいている物語は、史実であったとしても多少美化されているものだろう。実際のアブドゥル・カリームはパタリロを彷彿とさせる下ぶくれだが、本作では女王の心を一瞬で掴む美青年として登場する。女王を献身的に支えながら時折野心家の表情もちらつかせるこのイケメン、ボリウッド映画の名作『きっと、うまくいく』のジョイ・ロボである。進級をかけてドローンの開発研究をしていたが、悲しい結末を迎えてしまったジョイ・ロボだ。が、全く記憶にない。2回観たのに印象にない。なぜだ。とは言え、この作品はジュディー・デンチの演技がすべて。女王の孤独や葛藤、心のひだに宿る細やかな感情をつぶさに表現し、その存在感は見事。余談だが、ヴィクトリア女王に無能呼ばわりされ放蕩息子として描かかれていたエドワード7世に興味が湧き、実際のところを調べてみた。本当に無能呼ばわりされていた放蕩息子であった・・・。ただ、人付き合いが上手く外交に長けたピースメーカーだったこと、作中にあらわされているような人種差別主義者ではなかったということを記しておきたい。