銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ライトハウス

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映画日誌’21-28:ライトハウス
 

introduction:

『ムーンライト』『ミッドサマー』などエッジの効いた作品を世に放ち続けるスタジオ「A24」が、『ウィッチ』などのロバート・エガース監督と組んだスリラー。名優ウィレム・デフォーと、クリストファー・ノーラン監督『TENET テネット』で注目を集めたロバート・パティンソンを主演に迎え、19世紀のアメリカ・ニューイングランドの“ 絶海の孤島”にやってきた灯台守の運命を美しいモノクロームの映像で描く。第92回アカデミー賞で撮影賞にノミネートされた。(2019年 アメリカ)
 

story:

1890年代、ニューイングランドの孤島。4週間に渡って灯台と島の管理をおこなうため、2人の灯台守がやってくる。威圧的で支配的なベテランのトーマス・ウェイクと未経験の若者イーフレイム・ウィンズローは、そりが合わず初日から衝突を繰り返していた。険悪な雰囲気のなか、嵐によって2人は島に閉じ込められてしまう。孤立状態となった彼らは、次第に狂気に囚われていき...
 

review:

A24が『ウィッチ』のロバート・エガース監督に撮らせたとあっては観る以外ないのだが、やはり、この上なく悪い夢を観ているような映画体験で呆気に取られた。絶海の孤島に2人の灯台守がやってくるが、彼らを迎える陰鬱な空、荒れ狂う海は不吉なムードを漂わせ、響き渡る不協和音が心をざわつかせる。35ミリ白黒フィルムで撮影され、正方形に近い画面サイズで映し出されるモノクロームの映像は、その深い闇をいっそう際立たせる。
 
年老いたベテランのウェイクと新米のウィンズローは最初からソリが合わず、衝突しがちな2人の間にはぎくしゃくした緊張感が漂う。そして威圧的で支配的なウェイクに理不尽な重労働を課せられ、過酷な生活のなかでウィンズローが狂気に囚われていく様子が描かれる。が、そもそも最初から妄想と狂気と虚言が入り混じり、何が現実で何が真実なのかまるで分からなくなっていくのだ。
 
一度観た後に、公式サイトを含めいろんな解説を読んでみた。解説されると一気に面白さが押し寄せてくるあたり、モダンアートのインスタレーションのようでもある。1801年にイギリス・ウェールズで実際に起きた事件をベースにしたそうだが、エガース兄弟はよくこんな脚本を書いたものだと思う。幾重にも織り込まれた神話や古典文学のモチーフやメタファーを理解した上でもう一度観るか迷っているが、あの狂気と地獄をおかわりするのかと思うと気が重い。
 
ただ、この世に2つとないロバート・エガースの傑作であることは間違いなく、ウィレム・デフォーロバート・パティンソンの怪演も相俟って、今後も映画史のなかで語り継がれていくだろう。もし観るのなら、その前か後になんらかの解説を読むことをお勧めする。1人で観るのは気が重いが、みんなでああでもない、こうでもないって分析しながら観たら面白いかもなぁ。
 

trailer: