銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

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映画日誌’20-18:ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
 

introduction:

ルイザ・メイ・オルコットの自伝的小説「若草物語」を、『レディ・バード』などのグレタ・ガーウィグがメガホンを取り映画化。19世紀後半のアメリカを舞台に、個性豊かなマーチ家の四人姉妹を描く。『つぐない』『レディ・バード』のシアーシャ・ローナン、『ハリー・ポッター』シリーズのエマ・ワトソン、『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメ、『ミッドサマー』のフローレンス・ピューのほか、ローラ・ダーンメリル・ストリープクリス・クーパーなど豪華なキャストが集結。第92回アカデミー賞では作品賞、監督賞を含む6部門にノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞した。(2019年 アメリカ)
 

story:

南北戦争時代下のアメリカ、マサチューセッツ州のマーチ家。女優志望の美しい長女メグ、作家志望で自立心旺盛な次女ジョー、音楽の才能に恵まれるが病弱な三女ベス、絵の才能があり社交的だが頑固な四女エイミーの4姉妹は、愛情深い母とともに、北軍の従軍牧師として出征している父の留守を守って慎ましく暮らしている。父の帰還から7年の月日が経ち、隣家の幼馴染みローリーのプロポーズを拒んだジョーは、作家になる夢を追い掛けてニューヨークにいた。自分にとっての幸せを追い求めて、姉妹はそれぞれの道を歩んでいたが...
 

review:

邦題のストーリー・オブ・マイライフってどこから持ってきたんや。原題が”LITTLE WOMEN”なんだから、そのまんまでええやんけ・・。ちなみに”LITTLE WOMEN”は、著者のルイーザ・メイ・オルコットの父親が、実際に娘たちをそう呼んでいたことに由来するそうだ。幼い娘たちを少女扱いすることなく、一人の立派な女性であるという意味合いで用いられていたそうだ。ますます”LITTLE WOMEN”でよくない!?
 
さて、「若草物語」といえば、少女のバイブルである。美しい長女メグ、ボーイッシュな次女ジョー、愛情深い三女ベス、おしゃまな四女エイミーの、何気ない日々の暮らしを幾度となく読み返し、異なる国の違う時代を生きた4姉妹に想いを馳せたものだ。この物語は今作以前も繰り返し映像化されているが、いかに長い間、読み継がれてきたものか分かる。1世紀半前、南北戦争を背景に書かれたとは思えないほど、リベラルな内容だからだろう。自立した女性を目指すジョー、そんなジョーを愛するローリー。黒人奴隷解放のため北軍の従軍牧師として出征しているマーチ家の父。貧しい隣人に尽くす母。
 
原作は「若草物語」「続 若草物語」「第三若草物語」「第四若草物語」まで出版されているが、今作では「続 若草物語」で実家を離れた4姉妹にフォーカスし、それぞれが過去を振り返るかたちで「若草物語」が挿入されている。そのため、続編を読んでいなければ新しい展開を楽しみつつ、かつて胸をときめかせた「若草物語」のエピソードたちの再現VTRを堪能することができる。おなじみの場面、セリフのひとつひとつやディティールがそれなりに忠実に描かれており、何とも嬉しい気持ちになる。成長し、現実に直面して苦悩する様子と、みずみずしく輝く少女時代の鮮やかなコントラストが、作品に奥行きを出す。さすがグレタ・ガーウィグ、いい仕事するなぁ。物語に引き込まれる脚本と構成が見事。
 
サラ・ポーリーが監督に起用される話もあったらしい。それはそれで観てみたいけど、グレタ・ガーウィグ若草物語は素晴らしかった。ずっとシアーシャ・ローナンの顔面が苦手だったけど、初めて好きになれる気がしたよ。メグ役もエマ・ストーンじゃなくてエマ・ワトソンで本当によかった。エマ違いとかじゃなくて、最初はストーンが配役されていたらしい。いやいくらなんでも10代の少女役は無理でしょうよ。そして、三女エミリーを演じた『ミッドサマー 』のフローレンス・ピューも良かった。鼻ぺちゃは設定通りだとして、ガタイの良さとドスの効いた声は意外だっだけど、4姉妹の美人担当はメグだから適役とも言える。ベス役のエリザ・スカンレン、ミセス・マーチ役のローラ・ダーンの聖女ぶりも尊い。ローリーがティモシー・シャラメなのは世相だから仕方ない。総じて素敵な映画体験であった。
 

trailer: