銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】28年後…

映画日誌’25-30:28年後…

introduction:

人間を凶暴化させるウイルスの流出によって発生したパンデミックの恐怖を描くサバイバルスリラー。『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイルと、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』のアレックス・ガーランドが再タッグを組む。スマッシュヒットを記録した第1作『28日後...』、第2作『28週後…』に続くシリーズ第3作となる。『クレイヴン・ザ・ハンター』のアーロン・テイラー=ジョンソン、『教皇選挙』のレイフ・ファインズ、『最後の決闘裁判』のジョディ・カマーらが出演。『28日後…』で主人公を演じた俳優のキリアン・マーフィも製作総指揮として参加している。(2025年 イギリス・アメリカ合作)

story:

人間を凶暴化させるウイルスがロンドンで流出し、多くの死者を出した恐怖のパンデミックから28年後。感染を逃れたわずかな“人間たち”は、本土から離れ、小さな孤島に身を潜めている。対岸の本土にいる感染者から身を守るため、島の人々は見張り台を建て、武器を備え、コミュニティの厳しいルールに従って“安全に”生活していた。ある日、島で暮らすジェイミーと12歳の息子スパイクは、ある目的のため島を出て本土に向かう。

review:

人間を凶暴化させるウイルスが蔓延した世界的パンデミックから“28年後”の世界が描かれる。2002年に一作目である『28日後…』が公開された後、現実に世界的パンデミックを体験した我々にとって、それは絵空事ではなくなってしまった。『28日後…』は観た覚えがあるが、『28週後…』はどうだったか記憶にない。そんな私が思うに、前日譚となるこの2作を観ていなくても、うろ覚えでも、2002年に人間を凶暴化させるウイルスが蔓延した、ということさえ理解しておけば問題ない。

さすがのダニー・ボイルなので、相変わらず映像と音楽が無駄にスタイリッシュである(褒めてる)。冒頭で、イギリスの作家ラドヤード・キプリング1903年に発表した詩「ブーツ」を、アメリカの俳優テイラー・ホームズが1915年に朗読したという不穏な音声が延々と流される。「兵士に休息はない」と何度も繰り返し、戦時下の兵士たちの単調さと疲労を表した陰鬱なリズムのループは、我々を狂気の世界に誘う。これがもう、トラウマレベルで鬱。

とは言えゾンビがワラワラ出てくると笑っちゃうタイプの人間なのでニヤニヤしながら観てたら、中盤から生死観を問う高尚なメッセージを前面に押し出したシークエンスが続く。荘厳で幻想的な映像美も相俟って、あれワシ何観てたんだっけ・・・ゾンビ(正しくは感染者)どこ・・・という気持ちになったりした。『教皇選挙』で苦悩してたレイフ・ファインズが登場するけど、ローレンス枢機卿、ヨードまみれで誰か分からんねん。

そして物語は起承転結ではなく、起承転転で終わる。しかも急に転調してヒャッハー!なノリになるので面食らう。後から公式サイトを確認して知ったことには、ボイル監督は本作を「続編ではなく、新たな始まり」と名言しており、三部作の一作目となるらしい。何にしろいろいろ盛り込みすぎてとっ散らかってた気もするけど、ダニー・ボイルアレックス・ガーランドだからいいやないの。イギリス本土の自然風景がやたらとキレイだったし。

公式サイトによるとアーロン・テイラー=ジョンソン演じるジェイミーが主人公らしいが、今のところ一ミリも共感できないし何なら死んでも惜しくない。『最後の決闘裁判』でも男に振り回されたジョディ・カマーが不憫。息子スパイクのほうが余程大人である。それぞれの価値観や生き方を通して「人間らしさとは何か」を問う物語であり、否応なしに大人への階段を登らされた少年の残酷な成長譚でもあった。そういう意味では、二作目以降にジェイミーがどう変化していくのかが楽しみである。

trailer: