銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ワンダー 君は太陽

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-41
 

うんちく

世界各国で翻訳され、800万部を超える売り上げを記録したR・J・パラシオの児童小説「ワンダー」を、『ウォールフラワー』などのスティーヴン・チョボスキーが映画化。遺伝子の疾患で、人とは異なる容姿を持つ少年の成長を描く。『ルーム』などの天才子役ジェイコブ・トレンブレイが、第90回アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされたスタッフによる特殊メイクで主演を務める。『エリン・ブロコビッチ』などのジュリア・ロバーツ、『ミッドナイト・イン・パリ』などのオーウェン・ウィルソンらが共演。
 

あらすじ

遺伝子の疾患で、人とは違う顔で生まれてきたオギー。幼い頃から27回もの手術を受け「少しマシ」になったが、宇宙飛行士のヘルメットでいつも顔を隠し、学校へは通わずずっと自宅学習を続けてきた。両親は10歳になった息子を外の世界へ送り出そうと決意し、5年生の初日から学校に通うことになる。クラスメイトと仲良くしたいと願うオギーだったが、いじめや裏切りなどの困難に遭い、幾度もくじけそうになってしまう。しかし、家族の愛情に支えられ、自分の弱さに負けずに学校に通い続ける彼の姿が、周囲を少しずつ変えていき...。
 

かんそう

遺伝子の突然変異によって、頬骨の欠如等の顎顔面形態の不調和が特徴的な症状として見られるトリーチャー・コリンズ症候群。日本では50000人に1人の割合で発症するそうだ。最近は当事者がメディア取材を受け話題になるなど、知っている人も増えているだろう。この疾患を抱えて生まれついた男の子の物語である。さあ泣きなさいと言わんばかりのエピソードが満載だが、お涙頂戴のあざとい演出が少ない、好感の持てる爽やかな映画の作り方で、心置き無く最初から最後まで泣きながら観た。オギーが可愛くていじらしくて微笑ましくて、泣くわ、こんなん。オギーの喜怒哀楽や心のひだをつぶさに描き、その小さな体で闘う姿に寄り添うように同調してしまい、がんばれと心の底から応援してしまう。そして、オギーを取り巻く登場人物のひとりひとりにスポットをあてる構成も良い。お姉ちゃんであるヴィアの物語がとても好きだった。弟を中心に回っている家庭でそれなりに葛藤を抱えているが、両親から“世界一手のかからない子”と言われ、いつしか自分の感情を抑え込むようになってしまう。本当はまだ自分が甘えたいのに、それでも、健気に弟を支えようとする姿に胸を打たれる。既視感のあるストーリーで展開も読めるけど、そんなことはどうでもいい。それ以上に、深い愛と大きなやさしさに溢れているこの作品のすべてが愛おしくなる。きっと現実はもっと過酷で、世界はもっと残酷だろう。でも、この作品でオギーに出会った人々が、”正しいこととやさしいことの間で迷ったら、やさしさを選ぶ”ようになれば、少しだけ明日が変わるかもしれない。