銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】未来を乗り換えた男

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’19-03
『未来を乗り換えた男』(2018年 ドイツ,フランス)
 

うんちく

ドイツの作家アンナ・ゼーガースが1942年に亡命先のマルセイユで執筆した小説「Transit」の舞台を現代に移し、『東ベルリンから来た女』などのクリスティアン・ペッツォルト監督が映画化。ユダヤ人がナチスの理不尽な迫害を受けた戦時中の悲劇と、祖国を追われた難民をめぐる問題が深刻化する現代の状況を重ね合わせ、そのはざまで彷徨う男女の姿を映し出したドラマ。主演は『ハッピーエンド』などのフランツ・ロゴフスキー、『婚約者の友人』などのパウラ・ベーアラが共演。第68回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品作品。
 

あらすじ

現代のフランス。祖国ドイツで吹き荒れるファシズムを逃れてきた青年ゲオルクは、ドイツ軍に占領されようとしているパリを脱出し、南部の港町マルセイユにたどり着く。偶然の成り行きで、パリのホテルで自殺した亡命作家のヴァイデルに成りすますことになったゲオルクは、船でメキシコに向かうことを思い立つ。そんなとき、必死に人探しをしている黒いコートの女性と出会い、ミステリアスな彼女に心を奪われてしまう。しかしその女性は、ゲオルクが成りすましている小説家ヴァイデルの妻だった...
 

かんそう

ファム・ファタールとは、男にとっての「運命の女」、あるいは男を破滅させる魔性の女のことを言う。ときに、『ララランド』が面白い面白くない論争があるが、私は面白さがわからないシンパである。駆け出しの頃からライアン・ゴズリングを応援してきたが、それでも魅力を感じることができなかった。そして私は先日ついに、自分のなかでひとつの答えを導き出したのである。それは、主演のエマ・ストーンに「ファム・ファタール」の素質がない、ということだ。よって、もともと薄っぺらいストーリーの、あの結末に説得力が生まれないのである・・・!(※個人の感想です)さて、突然なんの話かって、この作品でも同じことが起きたのである。本作を紹介するサイトには軒並み、ミステリアスな雰囲気の美女に心惹かれ・・・みたいなことが書いてあるが、登場するヒロインに主人公の運命を狂わす「ファム・ファタール感」がない。なんなら最初に登場した時「通行人A」と思ったくらいに存在感がなかった。そして主人公のゲオルクも心惹かれているようには見えない。役者の素質以外に、演出やカメラワークに問題があるだろう。そしてストーリー展開はどこまでもシュールだが、上滑りしてしまって何が言いたいのか分からない。1940年代ではなく、いまヨーロッパでナショナリズムが再び台頭している悪夢を描きたいんだろうな、と寛容な心で忖度しつつ、こちとらシュールな不条理映画はまあまあ好物だし耐性もあるわい、と理解に努めたが、最後まで分かり合えなかった・・・。こういうのを世間では意欲作とか言うのかねぇ←無責任