銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】汚れたミルク/あるセールスマンの告発

f:id:sal0329:20170507224132p:plain

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’17-14
『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』(2014年 インド,フランス,イギリス)

うんちく

アカデミー賞外国語映画賞など数々の賞を受賞した『ノー・マンズ・ランド』で衝撃のデビューを飾り、『鉄くず拾いの物語』でベルリン国際映画祭三冠に輝いた名匠ダニス・タノヴィッチ監督がメガホンを取り、パキスタンで実際に起きた事件をテーマに描いた社会派ドラマ。グローバル企業が粉ミルクを強引に販売したことによって、不衛生な水で溶かした粉ミルクを飲んだ子供たちの命が奪われるという不条理に立ち向かったセールスマンの姿を追う。主演はボリウッド映画スター イムラン・ハシュミ、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』『マダム・イン・ニューヨーク』のアディル・フセインが共演。

あらすじ

パキスタンの国産製薬会社で働いていたアヤンは、妻の勧めで多国籍企業の募集を知り、大手グローバル企業に営業職として採用される。「世界最高の」粉ミルクを病院に売り歩き、いつしかトップセールスマンとなったアヤンだったが、ある日、自分が販売した商品が子供たちの命を奪っている現実を聞かされる。下水道設備が整っていないパキスタンで強引に粉ミルクを販売したことによって、貧困層の親が不衛生な水で溶かした粉ミルクを飲んだ乳幼児が死亡する事件が起きていたのだ。責任を感じたアヤンは会社を辞め、たった1人で世界最大企業を訴えようと立ち上がるが...

かんそう

2014年に完成したのちいくつかの国際映画祭で上映されたものの、劇場公開は日本が世界初なのだそうだ。巨大なグローバル企業の闇を暴いた内容に、世界中の配給会社が難色を示すなかで配給を決断したビターズ・エンドの男気。それだけで、観るに値するというものじゃないか。本作は、映画製作を企画するチームが、告発者であるアヤンにスカイプでインタビューするところから始まる。告発者が事件の顛末を語り、それをドラマとして再現しながら、ドキュメンタリー映画の製作プロセスを同時並行の入れ子構造で描くことで、客観的な視点と緊張感を生み出している。そして内部告発の厳しい実情と、巨大企業を敵に回して映画を製作する難しさを見事に映し出しているのだ。最初に一度だけ実際の企業名が出るが、弁護士が「実名を出すのはまずい、とりあえず仮名にしておこう」と言い出して以降は架空の社名になるくだりが痛快。配慮してる体だけど、もう出てますからー。全体に淡々とした印象でやや求心力に欠けるが、構成が秀逸。みんな観よう。ネスレの闇。