銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】光をくれた人

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’17-29
『光をくれた人』(2016年 アメリカ,オーストラリア,ニュージーランド)
 

うんちく

傑作『ブルー・バレンタイン』の監督デレク・シアンフランスが、世界40か国以上でセンセーションを巻き起こしたオーストラリアの作家M・L・ステッドマンのベストセラー「海を照らす光」を映画化。二つの大洋がぶつかる大海の孤島というロケーションで共同生活を送りながら撮影された。主演は『それでも夜は明ける』『スティーブ・ジョブズ』でアカデミー賞に2度ノミネートされているマイケル・ファスベンダーと『リリーのすべて』でアカデミー賞助演女優賞に輝いたアリシア・ヴィキャンデル。『ナイロビの蜂』でオスカーを手にした名女優レイチェル・ワイズが共演。
 

あらすじ

1918年、トム・シェアボーンは戦争の英雄として帰国したが、心に深い傷を負い、人生のすべてを拒むかのようにオーストラリア西部バルタジョウズ岬から160キロも離れた絶海に浮かぶ孤島、ヤヌス島の灯台守の仕事につく。その後、正式契約を結ぶためバルタジョウズの町へと戻ったトムは、その土地の名士の娘イザベルと出会う。美しく、眩しいほどの生命力に輝いているイザベルとの出会いが、自分の人生に光を取り戻させてくれたことに気付いたトムは、彼女に感謝の手紙を送る。やがて彼らは結ばれ、孤島で新婚生活を始めるが...
 

かんそう

邦題がさぁ、イマイチあざといのだよ。その手に乗るか!と思いつつ、マイケル・ファズベンダーに乗せられて観に行った。この邦題だと、あ、そっち系の映画ね〜って思われがちで勿体無い。確かに夫婦の愛についても描かれているが、この作品のキモはそこじゃない。今ある幸せと抱き合わせの罪悪感と葛藤し、良心の呵責に苦しむ人間の姿と、そのエゴイズムの末路である。何が素晴らしいかと言うと、アリシア・ヴィキャンデルら俳優の演技。っていうか、この共演をきっかけに恋に落ちたらしいので、二人の間に流れる微笑ましい空気も納得。さすがリアリティを追い求めるシアンフランス監督と思ってたけど、リアルじゃねぇか。しかしそれだけに、イザベルが気付きを得てから終盤の駆け足感がちょっと残念。俊足過ぎて、何がなんやらと思っているうちに時間がワープする。いやそこもうちょっと丁寧に描こうよって思うくらいには、全体の構成においてバランスに欠ける。とは言え、この物語を巡るそれぞれの幸福と苦悩、喜びと哀しみが丁寧に描かれていて、切なく胸が締め付けられる。良作。