銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】キーパー ある兵士の奇跡

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 映画日誌’20-42:キーパー ある兵士の奇跡

introduction:

第2次世界大戦で捕虜となり、終戦後のイギリスでゴールキーパーとして活躍して国民的英雄となったナチス兵バート・トラウトマンの実話に基づく人間ドラマ。監督は、ドイツのマルクス・H・ローゼンミュラー。『愛を読むひと』などのデヴィッド・クロスが主演を務め、『サンシャイン/歌声が響く街』などのフレイア・メイヴァー、『天使の分け前』などのジョン・ヘンショウらが共演する。2019年にドイツのバイエルン映画祭で最優秀作品賞に輝き、各国の映画祭で数々の観客賞を受賞した。(2018年 イギリス,ドイツ)

story:

1945年、戦地で捕虜となったナチス兵のトラウトマンは、イギリスの収容所内でサッカーをしていた様子が地元チーム監督の目に留まり、ゴールキーパーとしてスカウトされる。やがて彼は監督の娘マーガレットと結婚し、名門サッカークラブ「マンチェスター・シティFC」に入団。しかしユダヤ人が多く暮らす街で、元ナチス兵という経歴から想像を絶する罵詈雑言を浴び続けることに。それでもトラウマンはゴールを守り抜き、やがて世界で最も歴史ある大会でチームの優勝に貢献、トラウトマンは国民的英雄となる。だが、彼には誰にも打ち明けれない秘密の過去があった...。

review:

敵国イギリスの戦争捕虜となったナチス兵バート・トラウトマンが、終戦後もイギリスに留まりサッカーチームで活躍し、名門マンチェスター・シティFCの守護神として国民的英雄となる物語である。映画の中ではサッカーチームのためにイギリスに残ったことになっているが、Wikipediaによると「捕虜収容所の閉鎖が差し迫ると、トラウトマンはドイツ送還の申し出を辞退し、イングランドに留まる決定をした。ミルソープの農場で働き、続いてハイトンで爆弾廃棄の作業にあたった。1948年8月、リヴァプールカウンティ協会リーグ(ノンリーグ)のセント・ヘレンズ・タウンAFCに加入し、後に結婚することになるクラブ役員の娘、マーガレット・フライアーと出会った。」とのこと。
 
バート・トラウトマンがなぜ、祖国に戻らずイングランドで農作業をしながら爆弾廃棄の作業をしたのか。そこの動機は重要なんじゃないんかい・・・と思ったりする。第二次世界大戦中、ナチスドイツはイギリスに対して夜な夜な空爆を行い、多くの被害を与えている。イギリス人の敵国ドイツに対する憎しみは言わずもがな、バート・トラウトマンが所属したマンチェスター・シティの地元はユダヤ人社会で、彼はチームの内外から想像を絶する誹謗中傷を浴びせられた。この映画のテーマのひとつが「贖罪」あるいは「生き方を選べなかった兵士の戦争責任を問えるか」だとすると、そこは史実のまま描いたほうが深みが出たのでは。
 
数奇な運命に翻弄されながらも、苦境に立ち向かうトラウトマンの姿、彼を支えた妻の愛、戦争の痛みを乗り越え、彼を受け入れていくイギリスの人々。ドラマチックなストーリーがテンポよく展開していくので、中弛みすることなく観ていられる。主演のデヴィッド・クロスの誠実な佇まい、味わい深いジョン・ヘンショウなど、キャスティングもよい。ヒロインの妹がかわいい。テーマやメッセージも明確で、脚本や構成もしっかり練られており、よくできた作品という印象。マンチェスター・シティFCのファンでもなければ、サッカーファンですらないが、無難に感動した。しかし残念なことには、レビュー書くのが遅過ぎて劇場公開が軒並み終わっているようなのである。ああん、ごめんなさいごめんなさい。

trailer: