銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】おとなの事情

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’17-17
『おとなの事情』(2016年 イタリア)

うんちく

友人の家に集まった男女7人が、それぞれの携帯電話にかかって来た電話やメールを公開し合うというゲームを始めたことによって繰り広げられる人間模様を描いたシチュエーションドラマ。監督はCM界出身の遅咲きパオロ・ジェノヴェーゼ。俳優陣は『ある海辺の詩人 -小さなヴェニスで-』などのジュゼッペ・バッティストン、『夏をゆく人々』のアルバ・ロルヴァケル、『天使が消えた街』のヴァレリオ・マスタンドレア、『カプチーノはお熱いうちに』のカシア・スムトゥニアクなど、イタリアを代表する実力派が顔を揃えた。イタリアのアカデミー賞にあたるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で作品賞および脚本賞を獲得。世界中の映画祭で脚本賞・観客賞など16冠の栄誉に輝いた。

あらすじ

ある夜、幼馴染の仲間がパートナーを連れて、ディナーの席に集まった。新婚のコジモとビアンカ、倦怠期の夫婦レレとカルロッタ、思春期の娘との確執を抱えているエヴァとそんな妻と娘の間に板挟みに合って悩むロッコ、そして、最近できた「彼女」を連れてくるはずが、一人でやってきたバツイチのペッペ。秘密なんてない、と豪語する気心の知れた7人は、それぞれのスマートフォンに電話がかかってきたらスピーカーにして全員の前で話し、メールが届いたら皆の前で開いて読み上げる、というゲームを始めるが...

かんそう

あかん、あかんて。スマホと財布の中は覗いたらあかん。本人ですら気付いていないかもしれない秘密がつまった、現代のパンドラの箱。そんなん絶対開けたらあかんですやん・・・。あああああ、と思っているうちに、電話が鳴り、メールが届き始め、ひとつずつ秘密が暴かれていく。浮気はおろか、ひた隠してきた性癖や豊胸手術の予定まで。斜め上をいくウィットに富んだ会話とスリリングな展開に引き込まれてしまう。登場人物のキャラクターがきちんと立っていて、それぞれの背景をいつとはなしに把握できる脚本と構成が素晴らしい。人生には、知らなくていいことがあるのだ。そのほうが幸せなことがあるのだ。そんなことを改めて思いつつ、どこか滑稽な人間の可笑しみを象徴したようなラストシーンがとても良かった。