銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】マイ・ニューヨーク・ダイアリー

映画日誌’22-18:マイ・ニューヨーク・ダイアリー
 

introduction:

ジョアンナ・ラコフの回想録「サリンジャーと過ごした日々」を原作に描くヒューマンドラマ。「ライ麦畑でつかまえて」などで知られるアメリカの小説家J・D・サリンジャーを担当する出版エージェントのもとで働く新人アシスタントの知られざる実話を描く。監督は『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』などのフィリップ・ファラルドー。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』などのマーガレット・クアリー、『エイリアン』シリーズなどのシガーニー・ウィーヴァーらが出演する。(2020年 アイルランド/カナダ)
 

story:

1990年代のニューヨーク。作家志望のジョアンナは、老舗出版エージェンシーでJ.D.サリンジャー担当の女上司マーガレットの編集アシスタントとして働き始める。日々の仕事は、世界中から毎日大量に届くサリンジャーへの熱烈なファンレターを処理すること。しかし、心揺さぶられる手紙を読むにつれ、簡単な定型文で返信することに気が進まなくなり、ふとした思いつきで個人的に書いた手紙を返し始める。そんなある日、サリンジャー本人からの電話を受けるが...
 

review:

出版業界の裏側が覗けるのかしらと前情報無しで深く考えずに観に行ったら、サリンジャーの映画かーい・・・。タイトルに巨匠の名前を出していないのは、ここ数年サリンジャーをテーマにした映画が多くて食傷気味だったから敢えてなのか、配給会社の担当者がサリンジャーを読んだことがないか、どっちだろう。サリンジャーと言えば20世紀の超絶ベストセラー小説『ライ麦畑でつかまえ』の作者であり、アメリカ文学の金字塔である。
 
原作のジョアンナ・ラコフの自叙伝「サリンジャーと過ごした日々」は、1990年代のニューヨーク、古き時代の名残をとどめる老舗出版エージェンシーの新米アシスタントが、本が生まれる現場の日々を印象的に綴った回想録。ほんのり作家志望のくせに(!?)サリンジャーを読んだことがなかった著者が、サリンジャーに届く熱烈なファンレターを読むことで自分自身を見つめ直し、変化していく成長譚だ。
 
おそらく原作は面白いのではないかと推察する。が、映像化はうまくいかなかった模様。出版業界版「プラダを着た悪魔」を謳い文句にしてるけど、プラダみたいなエモさもないし、何だかテンポも悪いし、脚本にひねりがなくてエピソードを切り貼りしたような出来栄え。全体的に心理描写が雑だし、登場人物の書き込みが甘くてキャラクターが立ってないから、誰にも感情移入しない。シガニー・ウィーバーの無駄遣い。
 
公式サイトに「《共感度100%》“大人の”自分探しムービーの新たなる傑作」って書いてあるけど、何より主人公に1ミリも共感できない。優しい彼氏を地元に放ったらかして突然ニューヨークで暮らし始めるのはヨシとして、そこで出会った作家志望のダメ男とさっさと同棲始めるのも百歩譲ってヨシとして、地元の彼氏にケジメつけんかい。題材は面白いのに、いささか残念であった。今回の気付きは、映画が面白くないと重力に負けてお尻が痛くなるってことだな。
 

trailer: