銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】モースト・ビューティフル・アイランド

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’19-02
『モースト・ビューティフル・アイランド』(2017年 アメリカ)
 

うんちく

ニューヨークのマンハッタンを舞台に、不法移民の女性が体験するおぞましいアンダーグラウンドの世界を描いたスリラー。スペイン出身の女優、アナ・アセンシオが自身の経験を元に製作。サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)の映画祭で審査員大賞を受賞した。出演はアナのほか、ナターシャ・ロマノヴァ、ニコラス・トゥッチ、ラリー・フェセンデン、アミ・シェス、デビッド・リトルら。
 

あらすじ

マンハッタンの古アパートで暮らす移民女性のルシアナは、反抗的で生意気な子供のベビーシッティングや客引きなどで日銭を稼ぐ極貧生活に疲れきっていた。そんなある日、友人のロシア女性から、セクシーなドレスを着てパーティーに参加するだけで高額な報酬がもらえるバイトを紹介される。指定された地下室を訪れると、彼女のような外国人美女ばかりが集められており、威圧感のあるマダムが一人ずつ奥の部屋に呼び込んでいた。不安と恐怖に襲われるルシアナだったが...
 

かんそう

オウ,コックローチ…!!と心で絶叫したことを先にお伝えしておきたい。画角いっぱい大写しにされる無数のG。それは、煌びやかな大都市のアンダーグランドに蠢くおぞましき何もかもを凌駕する。って、絵面の破壊力強すぎやろ!それしか覚えてへんやん!この映画の感想は以上です って言いたくなるやんけ!サウス・バイ・サウスウエストがなんぼのもんじゃい!という強烈なボディブローをくらっての、臨場感溢れるカメラワークで映し出される、ある移民女性の1日。描写はあくまでも淡々としているが、ヒリヒリとした緊張感が漂い、スリリングな展開にぐっと引き込まれる。ラストの呆気なさに拍子抜けするかもしれないが、日常における「ある1日」を切り取ったものと考えると、その非日常性が際立つので良い塩梅と言えよう。世の中には、一部の特権階級のみが足を踏み入れることができる秘密クラブがあって、そこでは拷問や殺人までもが娯楽として存在するという話を、映画や小説で目にすることがある。ニューヨークではそのような地下室の多くが、ハドソン川の近くにあるらしい。金持ちの享楽のために使い捨てられた人間の亡骸は、ハドソン川に棄てられるのだそうだ。大都市の闇に飲み込まれ、そこに生きていた証すら失っていく者たち。嘘か真かはともかく、東京のアンダーグランドに存在する下劣で悪趣味な遊びについて聞いたことがある。自分自身、いまはまだ陽の当たる場所で比較的安全に暮らしているようで、それが紙一重であることを思わずにいられない。