銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】少女ファニーと運命の旅

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’17-44
『少女ファニーと運命の旅』(2016年 フランス,ベルギー)
 

うんちく

実在のユダヤ人女性ファニー・ベン=アミが、第二次世界大戦中に子供たちだけでフランスからスイスへ逃げたという実体験を綴った自伝をもとに描かれるヒューマンドラマ。監督は名匠ジャック・ドワイヨン監督の娘で新進気鋭のローラ・ドワイヨン。これが演技初体験となるレオニー・スーショーをはじめ、フランスとベルギーで開催されたオーディションで1000人近くの子供たちのなかから9人が選ばれた。『ヒア アフター』などのセシル・ドゥ・フランスらが出演。
 

あらすじ

1943年、ナチスドイツの支配下にあったフランス。13歳のユダヤ人少女ファニーは幼い二人の妹とともに、支援者たちが密かに運営する児童施設に匿われていたが、心無い密告者の通報により別の施設に移ることを余儀なくされる。やがてそこにもナチスの影が迫り、ファニーたちはスイスへ逃れようと列車を乗り継いで国境を目指すが、厳しい取り締まりのなか引率者とはぐれてしまう。ファニーは取り残された9人の子供たちのリーダーとなるが...
 

かんそう

コマーシャルだと思うけど、「少女」とか「運命」とかつけちゃうとファンタジー臭するからやめなさいって。と、とても残念な邦題をつけられてしまったファニーの旅。ナチスの魔の手から逃れるためスイス国境を目指す、という実にシンプルなストーリーではあるが、死と隣り合わせたスリリングな展開と、子どもたちの素晴らしい演技にぐっと引き付けられた。無垢な子どもを触媒にして描かれる、さまざまな大人たちの姿。戦争と日常のはざま。美しい田園風景のなか無邪気に遊ぶ姿と、彼らが置かれている過酷な現実とのコントラストが一層悲しみを深くする。忌まわしい戦争の記憶として、観るべき映画。このような状況下にあって、迫害される子どもたちの命を護ろうとレジスタンスの活動に身を投じた人々に敬意を表する。