銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ローズメイカー 奇跡のバラ

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映画日誌’21-21:ローズメイカー 奇跡のバラ
 

introduction:

『大統領の料理人』『偉大なるマルグリット』などの大女優カトリーヌ・フロ主演のドラマ。倒産寸前のバラ園を営む女性が、素人集団と一緒に世界最高峰のバラ・コンクールに挑む姿を描く。監督・脚本は、短編映画“Les Miettes”がカンヌ国際映画祭批評家週間に出品され、セザール賞短編映画賞を始め数々の栄えある賞を受賞したピエール・ピノー。これが2作目の長編監督作品となる。インディーズ系ラッパーのメラン・オメルタ、『パリの家族たち』などのオリヴィア・コート、『パリ・エキスプレス』などのファツァー・ブヤメッドらが出演。(2020年 フランス)
 

story:

フランス郊外で父が遺した小さなバラ園を経営するエヴ。優秀なバラ育種家として活躍し数々の賞を獲得してきた彼女だったが、数年前から巨大企業のラマルゼル社に賞も顧客も奪われ、バラ園は倒産寸前だった。何とか立て直そうとしている助手のヴェラが、職業訓練所から格安で前科者のフレッド、定職に就けないサミール、異様に内気なナデージュを雇うが、バラの知識など皆無の3人は足手まといに。そんな中、新種のバラの交配を思いついたエヴは、バガテル新品種国際バラ・コンクールに挑むことを決心するが……
 

review:

フランスの大御所カトリーヌ・フロ演じる、才能あるバラ育種家エヴが父から譲り受けた小さなバラ園は、倒産寸前。そこに、社会からちょっとはみ出してしまった3人が職業訓練所からやってくる物語だ。色、かたち、香り、種としての強さ、バラの究極の美に情熱を傾けるプロフェッショナルの仕事を映し出しながら、格差社会育児放棄などによって世間から見放されそうになっている人々が人生を再起させようと奮闘する様子を、ユーモラスに描く。
 
フランスの超一流ローズブランドであるドリュ社、メイアン社のスペシャリストが完全監修しているとあって、エヴのような小さなバラ園から大企業のバラ工場の実態、世界にひとつだけの新しいバラが誕生するまでの交配と栽培の過程、パリのバガテル公園で開催される世界最高峰のコンクールが忠実に再現されており、それだけでも見応えがある。バラの新種って、あんな風に作られているんだなぁ。職人さんの世界が覗けそうな映画は、つい観てしまう。
 
序盤で、まさかのクライムサスペンス!?というような展開があったりするのもご愛敬。前科者のフレッドとエヴが、少しずつ心を通わせていくさまも心温まる。が、どうせなら、他の二人や助手のヴェラ、一人一人の背景をもう少し掘り下げてほしかったなぁ。エヴと巨大企業ラマルゼル社にも深い因縁がありそうだし、そのあたりを描写してくれたら、もっと奥行きが出て楽しめたような気がする。とは言えバラ園の日々は美しく、そこで働く人々の心の交流がとても素敵な作品であった。バラが好きな人にはおすすめ。
 

trailer: