銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ラストナイト・イン・ソーホー

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映画日誌’21-53:ラストナイト・イン・ソーホー
 

introduction:

ベイビー・ドライバー』のエドガー・ライト監督によるタイムリープ・サイコホラー。ロンドン・ソーホー地区の異なる時代を生きる二人の女性の人生がシンクロし、不思議な出来事が起こり始める。主演は『ジョジョ・ラビット』『オールド』などのトーマシン・マッケンジーNetflixドラマ「クイーンズ・ギャンビット」などのアニャ・テイラー=ジョイの他、『コレクター』などのテレンス・スタンプ、『女王陛下の007』などのダイアナ・リグらイギリスを代表する俳優たちが共演する。(2021年 イギリス)
 

story:

ファッションデザイナーを夢見るエロイーズは、ロンドン・ソーホー地区にあるデザイン学校に入学する。しかし同級生たちとの寮生活に馴染めず、一人暮らしを始めることに。新居で眠りにつくと、夢の中で1960年代のソーホーで歌手を夢見る魅惑的なサンディと出会い、次第に肉体も感覚も彼女とシンクロするようになってしまう。やがてそれは現実世界にも影響を与えるようになり、充実した毎日を送れるようになったエロイーズだったが、ある夜、夢の中でサンディが殺されるところを目撃してしまう。その日を境に謎の亡霊が現れ始め、エロイーズは徐々に精神を蝕まれていくが...
 
review:
スウィンギング・ロンドン。1960年代に一世を風靡した、ファッション、音楽、映画、建築などにおけるロンドン発のストリートカルチャーのことである。ミニスカートやサイケデリック・アート、カーナビー・ストリート、ビートルズ、ツィギー、ヴィダル・サスーン、マリー・クワント。イギリス若者文化の黄金時代、そしてロンドンが活気に溢れていた時代。間違いなく、世界のポップカルチャーの中心だったのだ。
 
イギリス・ロンドンのシティ・オブ・ウェストミンスターに位置するソーホー地区は、「スウィンギング・ロンドン」の中心地であり、輝かしいショービズ界の中心でもあり、ストリップクラブや売春宿などが軒を連ねる歓楽街でもあった。20世紀初頭には移民が安価な飲食店を出すようになり、1930年代から1960年代初期にかけては、ソーホーのパブは毎晩、酔っ払いの作家や詩人、芸術家であふれていたという。裏通りには娼婦やペテン師など怪しい人々が集い、ありとあらゆる不道徳が蔓延る  ”悪の巣窟” だった。
 
エドガー・ライト監督は、1960年代のソーホーと現代をリンクさせ、”輝かしい”時代への憧れとともに、その裏で虐げられてきた女性たちの存在を炙り出した。スポットライトを浴びたければ男性好みの曲を歌わされ、慰みものにされ、屈辱に晒される。男は全部爆発したらいいよね的な、闇に葬り去られてきた女性たちの怨念が謳われている。全然怖くないので無意識だったけど、一応ホラー。サイコスリラーみたいな雰囲気もある。面白さもあったし悪くもないが、身も蓋もないこと言うと、別に観なくても良かったなぁ・・・。
 
設定とテーマはともかく、ホラーとしてはイマイチだし、ファンタジーとしても人間ドラマとしてもどこか中途半端だし、映像が抜群にスタイリッシュな訳でもないし、ラストの展開は凡庸で陳腐だし、ていうか、ママがそこに存在し続ける意味は何なんだ。ああ、『ベイビー・ドライバー』で期待度上げすぎた。ライトくん、君何でこの映画作ったんや。何が言いたかったんや。って小一時間くらい詰め寄りたい。スウィンギング・ロンドンのおしゃれ感だとか、『ベイビー・ドライバー』のグルーヴ感に誘われて観ちゃった人、もげるほど首を捻ったに違いない。
 

trailer: