銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ハウス・オブ・グッチ

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映画日誌’22-02:ハウス・オブ・グッチ
 

introduction:

巨匠リドリー・スコット監督が、イタリアの老舗メゾン「GUCCI(グッチ)」の創業者一族にまつわる衝撃の実話をもとに、一族の崩壊を描いたサスペンス。サラ・ゲイ・フォーデンのノンフィクション小説「ハウス・オブ・グッチ」を原作に、グッチ一族の確執と3代目社長マウリツィオ・グッチ暗殺事件を描き出す。主演は『アリー/スター誕生』のレディー・ガガ。『スター・ウォーズ』シリーズなどのアダム・ドライヴァーのほか、アル・パチーノジャレッド・レトージェレミー・アイアンズなど豪華な顔ぶれが脇を固める。(2021年 アメリカ)
 

story:

貧しい家庭で生まれ育つが、母の再婚により社交界に出入りできるようになった野心的なパトリツィア・レッジャーニ。ある日彼女は、イタリアで最も裕福で格式高いグッチ家の後継者の一人であるマウリツィオ・グッチと出会う。パトリツィアに魅了されたマウリツィオは父の反対を押し切って結婚してしまう。贅沢な暮らしを満喫していたパトリツィアは、グッチ家での自分の地位を高めるため一族の確執をあおり、ブランドを支配しようと画策し始める。そんなパトリツィアに嫌気が刺したマウリツィオが離婚を決意したことで、彼女は破滅の道を歩み始める...
 

review:

1995年3月27日、GUCCI創業者グッチオ・グッチの孫にあたる3代目社長マウリツィオが、ミラノの街で暗殺された。1995年なら物心つきまくりのお年頃なのでニュースを覚えていそうだが、いや全然記憶にない・・・。誰もが知る世界的ブランド「GUCCI」の裏側で、こんなスキャンダラスな事件があったとは。GUCCIと言えば、1990年代にそれまでの古臭いイメージを払拭し、バンブーが流行ったのを覚えている。現在まで続く、その後の華やかなる展開は言うまでもない。
 
2時間37分という長尺だったが、華麗なる一族の悲劇たる悲劇を「面白おかしく」描く娯楽作、楽しんだ。史実ではない部分もありそうだし、グッチ関係者は苦言を呈しているようだが、リドリー・スコット大先生、さすがである。大先生の前作『最後の決闘裁判』の構成と演出が凝っていて面白すぎたため、ストレートな時系列でストレートに分かりやすく描かれていることにやや拍子抜けしたものの、財と権力、愛、欲望、殺人と要素てんこ盛りのドラマに引き込まれた。
 
マウリツィオ、パトリツィア夫妻の写真を見たけど、演じた2人がそっくりで驚いた。マーゴット・ロビーらも候補にあがったようだが、本物のパトリツィアも小柄だったらしいのでガガ様が適役。教養と品性がない、小柄で派手な悪女をガガ様が見事に体現していたよ。実はガガ様が苦手だったんだけど、一周回って好きになってきた・・・。今更だけど天才なんだな。なお、本物のパトリツィアさん、自分を演じるくせにあいさつがないってガガ様におかんむりらしい。そしてアダム・ドライバーの世間知らずなおぼっちゃま感すごい。そこから変化していく様もすごい。
 
それ以上にジャレット・レトの禿げ上がったパオロおじさん、イケメンの跡形無し。特殊メイクなんだそうだ。アル・パチーノ演じるアルド父さんとの掛け合いがコミカルで、作品にユーモアをもたらしている。無能の人として描かれるパオロ、調べてみると評価している記事もあり、功績がないわけではなさそう。一体どっちなのだろうと思うのだが、老舗メゾンGUCCIの品位を貶めたことは間違いなく、なんとアルド父さん、史実では「パオロをけっして一族の墓に入れてはいけない」と遺言したらしい。とは言え、ジャレット・レトやりすぎ。
 
占い師のピーナさんはどこかで観たと思ったら『フリーダ』のサルマ・ハエック。しかも彼女、LVMH、リシュモンと並ぶファッション業界の大手コングロマリットで、現在グッチが所属している「Kering」の会長フランソワ=アンリ・ピノーの妻らしい。なんというクレイジーなキャスティング。代々のグッチ経営者に寄り添う執事みたいな存在感だったドメニコさん、彼のその後についても調べてみると興味深い。ああ、テキサスから来たアメリカ野郎はトム・フォードだったか・・・。見終わって思うことは、何もかも滑稽で、狂気の沙汰だと言うことだ。
 
私は最近、"ハウス・オブ・グッチ”という2時間37分の映画の上映を生き延びた。——トム・フォード
I recently survived a screening of the two-hour-and-37-minute film that is House of Gucci.——Tom Ford

 

trailer: