銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!

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映画日誌’20-02:ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!
 

introduction:

北欧のメタル大国フィンランドを舞台に、フィンランドで最も知られていないヘヴィメタルバンドが巨大フェスを目指して奮闘するコメディ。2018年のSXSWで上映され一躍話題となった。監督は本作品が長編デビューとなるユーソ・ラーティオ、ユッカ・ヴィドゥグレン。フィンランドを代表するヘヴィ・メタルバンド、ストラトヴァリウスでも活躍するラウリ・ポラーが音楽を手掛けた。『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』などのヨハンネス・ホロパイネン、『サマー・フレンズ』などのミンカ・クーストネンらが出演。(2018年 フィンランド,ノルウェー)
 

story:

フィンランド北部、何もない田舎の村。退屈な毎日を送る25歳のトゥロは、“終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル”というジャンルの4人組ヘヴィ・メタルバンドのボーカルを務める。しかし彼らは結成から12年、一度もステージに立ったことがないコピーバンドだった。ある日、遂に自分たちのオリジナル曲を作る決意をした彼らは、試行錯誤の末にとんでもないキラーチューンを完成させてしまう。そんな折、ひょんなことからノルウェーの巨大メタルフェスの主催者と知り合い、バンドに千載一遇のチャンスが舞い降りるが...
 

review:

いやもう、お願いだから観て。久し振りに劇場で声出して笑ってしもうたやないか。え?メタルを聴かない?大丈夫だ、私も一切聴かない。メタルの知識はもちろん、免疫も耐性も要らない。北欧の美しい森、雄大フィヨルドに響き渡る“終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル”は、あなたの心を鷲掴みにするはずだ。いろんな意味で。IKEAの国、フィンランドは人口10万人あたり53.2のメタルバンドが存在し、人口比率で世界で最も多くのメタルバンドがいるメタル超大国である。そんなフィンランドでコメディ映画史上最大規模の巨費が投入された本作。監督のインタビューによると、この映画を撮りたいと思った2つ目の理由が「フィンランドに腹を抱えて笑える映画がほとんどなかったから」だそうで、思惑通り腹を抱えて笑ったよ・・・。全体に漂う間抜け感と哀愁、その隙間にこれでもかと詰め込まれたバカバカしい笑いのバランスが絶妙。バンドメンバーひとりひとりの背景と個性が強烈で、イケメンなのに童貞臭を漂わせ、サラサラの長髪を不器用に書き上げる仕草すら笑える。バンド初のオリジナル曲が完成する経緯は動物愛護団体が激怒しそうな光景だし、バンド名は“インペイルド・レクタム"(※直訳すると直腸陥没)、アー写はハイウェイの自動速度取締機で撮影。ノルウェー国境で彼らの前に立ちはだかる“デルタ部隊”、まさかのバイキング登場。こんなん、笑いますやん・・・。しかし何より、この破天荒な作品の素敵なところは、極度のあがり症で自分に自信が持てなかったトゥロの成長譚としてストーリーが成立している点。そして、ヘヴィ・メタルを少々自虐的に扱いながらも、音楽への敬意を忘れず、観客を最高のステージに連れていってくれるところが素晴らしいのである。あーおかわりしたい。
 

trailer: