銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ハクソー・リッジ

f:id:sal0329:20170702203325p:plain

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’17-34
ハクソー・リッジ』(2016年 オーストラリア,アメリカ)
 

うんちく

第2次世界大戦の激戦地〈ハクソー・リッジ〉で一切の武器を持たずに戦場を駆け回り、たった一人で75人もの命を救い、良心的兵役拒否者としてはアメリカ史上初めての名誉勲章が授与された衛生兵の実話を映画化。監督は『マッドマックス』の主演でその名を知られ、監督2作目となる『ブレイブハート』がアカデミー賞作品賞、監督賞をはじめとする5部門に輝いたメル・ギブソン。『アメイジングスパイダーマン』シリーズ、『沈黙-サイレンス-』のアンドリュー・ガーフィールドが主演を務め、『聖杯たちの騎士』のテリーサ・パーマー、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのヒューゴ・ウィーヴィング、『タイタンの戦い』のサム・ワーシントン、『Mr.&Mrs.スミス』のヴィンス・ヴォーンら実力派俳優が顔を揃えた。第89回アカデミー賞にて、監督賞を含む6部門にノミネートされ、音響賞および編集賞を受賞。
 

あらすじ

ヴァージニア州の豊かな緑に囲まれた町に暮らすデズモンド・ドスは、第一次世界大戦で心に傷を負い、酒に溺れる父親トムと母バーサの喧嘩が絶えない家庭で成長する。青年となり、看護師のドロシー・シュッテと恋に落ちるが、第2次世界大戦が日に日に激化し、デズモンドの弟も周りの友人たちも次々と出征する。子供時代の苦い経験から、「汝、殺すことなかれ」という教えを大切にしてきたデズモンドは、「衛生兵であれば自分も国に尽くすことができる」と陸軍に志願する。だが、訓練初日から、デズモンドのある“主張”が部隊を揺るがす。衛生兵として人を救いたいと願うデズモンドは、「生涯、武器には触らない」と固く心に誓っていたのだ...
 

かんそう

ハクソー・リッジとは、第2次世界大戦の激戦地・沖縄の前田高地のことで、多くの死者を出した壮絶な戦いの場として知られている。ハクソーとはのこぎりで、リッジとは崖の意味。この映画の舞台が沖縄であることにプロモーションでは一切触れていないことや、芸人を起用した的外れなイベントが物議を醸したらしい。配給会社の言い分も読んだけど、分からなくもないけど、でもなぁ。少なくともメル・ギブソンは、デズモンドの信条を触媒として「戦争の是非」を問いつつも、おそらくリスペクトを持って「日本人」の姿を描いていたよ。この作品のメッセージを汲み取って世の中に人に理解してもらおうという哲学や信念はないのか。と、そんなことを少々残念に思いつつ、観た。本当に恐かった。人間が肉片に成り果てる凄惨な瞬間が、目を覆いたくなるほどリアルな臨場感をもって描かれ、人と人が殺し合う戦争のおぞましさ、真の恐怖を突きつけられる。永遠に終わらない悪夢を観ているよう。スクリーン越しのフェイクな映像だって下手すればトラウマになるだろうに、帰還兵がPTSDになるのは当たり前だ。衝撃的な戦闘シーンばかりが取り沙汰されてしまうことや、映画の質という点で序盤のぬるさは否めないが、それでも、いい映画だった。