銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】モリコーネ 映画が恋した音楽家

映画日誌’23-04:モリコーネ 映画が恋した音楽家
 

introduction:

ニュー・シネマ・パラダイス』『荒野の用心棒』『アンタッチャブル』など、生涯に渡って数多くの映画音楽を手掛けてきたエンニオ・モリコーネが、自らの半生を回想する音楽ドキュメンタリー。モリコーネの弟子であり親友でもある、『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督が5年以上にわたる密着取材を敢行し、マエストロの葛藤と栄光に迫る。(2022年 イタリア)
 

story:

1961年のデビュー以来、数多くの映画やテレビ作品の音楽を手掛け、2020年7月に逝去したエンニオ・モリコーネモリコーネ自身がカメラの前で自らの半生を振り返り、映画音楽の地位が低かった当時の苦悩や葛藤を明かす。その一方でクエンティン・タランティーノクリント・イーストウッドベルナルド・ベルトルッチオリヴァー・ストーンブルース・スプリングスティーンクインシー・ジョーンズら映画界、音楽界の錚々たる顔ぶれがモリコーネの偉業を語っていく。
 

review:

あまりにも偉大な映画音楽の巨匠である。エンニオ・モリコーネと聞けば『ニュー・シネマ・パラダイス』のあのメロディを思い出す人も多いだろう。ちなみにずっと「エンリオ」だと思い込んでいたけど「エンニオ」だったんですね、マエストロ。彼は2020年に91歳で亡くなるが、生涯で500作品以上という驚異的な数の映画やテレビ作品の音楽を手掛け、アカデミー賞には6度もノミネートされている。2006年には名誉賞、2015年にはタランティーノ監督の『ヘイトフル・エイト』で悲願の音楽賞を獲得した。
 
輝かしい功績を遺したモリコーネだが、実は人知れず苦悩を抱えていたことが本人の口から明かされる。生活のためにトランペットを演奏しなければならかった屈辱、恩師に隠れて商業音楽を手掛けクラシック音楽の道を外れてしまった葛藤、映画音楽の芸術的価値が認められなかった時代への嘆き。それらのことを乗り越え音楽家としての矜持を守ったモリコーネの半生が、彼が手掛けた傑作たちの名場面、観客を熱狂させたワールドコンサートツアーの映像などをおり混ぜながら紡がれていく。
 
「ジュゼッペ以外はダメだ」とモリコーネ本人からの指名で、弟子であり親友でもあるジュゼッペ・トルナトーレ監督が5年にわたる密着取材をおこない、天才の人間像を立体的に映し出すことに挑んでいる。テンポもよく、さすがジュゼッペ・・・と言いたいところだが、何せずっと同じ手法で描かれるので3時間の長尺では単調で中弛みしてしまう。ときどき、背後から睡魔きたね・・・。危なかったね・・・。
 
が、モリコーネの人生がすべて、圧倒的努力と圧倒的才能に裏付けされた芸術そのもの。真摯に音楽と向き合い、飽くなき探究心で常に新しく革新的なスコアを生み出してきた創作の秘密を目の当たりにし、そのことに心動かされずにはいられない。初公開だというプライベートな映像もいとおしく、稀代の天才はなんとチャーミングな人物であろうかと微笑んでしまう。愛に満ちた、美しいドキュメンタリーであった。
 

trailer: