銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ブリット=マリーの幸せなひとりだち

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映画日誌’20-27:ブリット=マリーの幸せなひとりだち
 

introduction:

映画版が2016年に公開されて大ヒットした「幸せなひとりぼっち」の 原作者フレドリック・バックマンによる小説 「ブリット=マリーはここにいた」を映画化。笑顔を忘れた主婦業一筋の女性が、新天地で第二の人生を見つけようと奮闘する姿が描かれている。監督は『ボルグ⁄マッケンロー 氷の男と炎の男』 の女優、ツヴァ・ノヴォトニー。『スター・ウォーズ』エピソード1、2でアナキンの母を演じたスウェーデンの国民的女優、 ペルニラ・アウグストが主演を務め、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』などのペーター・ハーバーらが共演する。(2019年 スウェーデン)
 

story:

スウェーデンに住む専業主婦ブリット=マリーは、結婚して40年。多忙な夫のために毎日食事を作り、 家の中を綺麗に整えておくことが自分の役割だと信じて疑わなかったが、ある日、出張先で夫が倒れたという知らせを受け病院へ駆けつけてみると、夫に付き添っていた長年の愛人と鉢合わせてしまう。これまでの人生を見直すべく、ブリット・マリーはスーツケースひとつで家を出る。しかし働いた経験がほとんどない63歳にまともな職はなく、職業安定所で紹介された仕事は、都会から離れた小さな村ボリのユースセンターの管理人兼、 地域の子供たちの弱小サッカーチームのコーチだった。
 

review:

スウェーデンといえばイケア、ノーベル賞ABBAボルボH&M、リサ・ラーソン・・・北欧の福祉大国。理想国家。みたいなイメージを持っている人もいると思うが、バイキングの国だからな!?
 
バイキングとは西暦800~1000年頃にかけてスカンジナビア半島を拠点に西ヨーロッパ沿岸部の広大な国土を侵略、征服した海賊である。まだキリスト教が伝わっていなかった時代、彼らが信じる神はオーディン。勇敢に戦って死ねばワルキューレという美女の導きでオーディンがいる輝かしい「ヴァルハラ」に行けると信じており、死を恐れるどころか死に急ぐように闘い、殺戮と略奪を繰り返してヨーロッパを恐怖に陥れたという・・・。
 
というわけで、海賊と北欧神話(世界中の中二病男子の憧れ)の国スウェーデンでつくられる映画は個性派揃い。この数年で観た、スウェーデンが舞台の作品を振り返ると『ミッドサマー』『ボーダー 二つの世界』『スイス・アーミーマン』『サーミの血』と、なかなかの強者揃い。押し並べて、北欧の大地に血生臭く土着した生命力みたいなものを、これでもかと見せつけてくる。実にエゲツない。
 
夫に裏切られた主婦が、新天地で再出発。って、型で押したようなプロットだとしても、よくありすぎて食傷気味のテーマだとしても、舞台がスウェーデンなら観てみようかという気になるし、スウェーデンじゃなかったら観に行かなかっただろう。という長い長い前置きで察していただきたいが、ぼ、凡庸〜!!!面白くないとは言わないが、もうちょっと脚本と構成、がんばれたんちゃう・・・?
 
笑顔を失ってしまった女性が、今の夫と結婚した必然性とかさ。登場人物のキャラクターや背景をもう少し際立たせるとかさ。何かが欠けていて、イマイチ共感に欠ける。お涙頂戴のわざとらしいドラマに仕立て上げない分、さすがリアリティを重視するお国柄で好感が持てたものの、ご想像にお任せしますという観客に丸投げのエンディングで、個人的にはもう少しカタルシス欲しかったなぁ。
 
とは言え、消極的な書き方になってしまうが面白くないことはなく、作品全体の雰囲気は素敵だった。また、登場する街の人たちの(いわゆる)人種が多様で、スウェーデンが移民大国であることが分かって興味深い。スウェーデンの人々の暮らしを垣間見ることができるので、興味がある人にはおすすめかもしれない。と、どこまでも消極的。

trailer: